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2019年の10曲

今年発売された曲のなかで、ジャンルを問わず印象的だった曲をまとめておこうと思います。テクノが専門なので、DJで使うような曲をピックアップする記事は度々書いていますが、今年は特にそれ以外の分野で引っかかる作品が多かったので、そういったものも含めたセレクション。日頃さほど意識してアンテナを張っているという感じでもないから、こういうのは本当に偶然の出会いだなって思います。

各曲の動画リンクを貼っておくほか、記事の最後にSpotifyのプレイリストもつけました。好きな曲があったら買うかサブスクで聴くかしてみてね。

ザ・リーサルウェポンズ - サイボーグメカニンジャ

2019はザ・リーサルウェポンズ抜きでは語れない年になりました。衝撃のMVデビューにアルバムリリース、そして全国各地でのライブと猛スピードで駆け抜けていったアイキッドさんとサイボーグジョーさんの軌跡は、いくつかの記事で興奮気味にご紹介した通り。

サブスクでの個人的なアルバム再生回数を見たら全曲ともゆうに40回を超えていて、これに加えてYouTubeでもCDでも聴いていたから、短期間にこんなに繰り返して聴いたアルバムないってくらい。スルメです。でまた、聴くたびに思うのが、収録曲ラストの『サイボーグメカニンジャ』のかっこいいこと。どれも名曲だけど、結局はサイボーグメカニンジャだな! みたいな謎の納得があります。ポンズは来年、まだまだ行けるところまで行ってほしい。新曲楽しみにしてます…。

MOROHA - 上京タワー

深夜ラジオでのMOROHAとの出会いは、まさにガツンと殴られるような衝撃だった。虚飾のない等身大の言葉で綴られるアフロさんのラップは、自省的でありながら聴き手の心臓を掴むような近さで迫ってくる劇薬だ。

アルバム『MOROHA IV』に収録されている『上京タワー』もそうで、東京近郊住みの自分にとってはある種のファンタジーである「夢を追い全てを投げ打っての田舎からの上京」を、地理も世代の違いも問わない普遍的な決意のストーリーに翻訳してくれている。

ケンイシイ feat. Dosem - Blood Moon

ケンイシイさんの13年ぶりのフルアルバムの配信版ボーナストラックから。この曲はまったくイシイさんらしくないベースラインのセクシーなディープハウスで、それが全編潔いまでにエゴを貫いているアルバム本編と比べて、むしろ希少な輝きのように感じる。曲そのものよりも、ウワモノのシンセパッドに過剰にかかる変調とかの匙加減が、めっちゃイシイさんぽいのです。

例えるなら、個性的な料理ばかりをコースで出されるよりも、普通の料理に一品混ざっていたほうが、味がより引き立つというか…。ジェフ・ミルズとのコラボ曲は全然カッコよくなかったんだけど、Dosemとのコラボは気負いのなさがスマートに表れていて良かった。かなり好きな曲です。

London Elektricity - Build A Better World

この曲はあてどもなく散歩しながら聴いていると妙にハマる瞬間があって、寂しげな歌詞と優しいメロディーがより没入感を誘う。ドラムンベースも色々あるけれど、アッパーなのでもダウナーなのでもなく、日常に寄り添う曲を作っている人はそんなに多くはないと思います。London Elektricityの音楽は昔からそういうところがあって、パーソナルな心象風景を投影した今年のアルバムには特にそれが色濃く表れていました。

Ocktawian - YE666

DJで使うタイプの曲で好きだったのはこれ。めちゃくちゃシンプルな16ステップのシーケンスが、縦ノリの反復のなかでだんだん狂気を帯びてきて暴れだすあたり、ひたすら内側に向かっていくテクノの酩酊と恍惚に絶妙にシンクロする。10年前は逆にこういうオールドタイプのミニマルは影も形もなかったし、振り返ればこういう曲が再評価されるようになったのが2010年代という時代だったなと思います。

Schacke - It Was All A Dream

テクノのニューカマーで印象的だったのはSchacke。ダークで速い4つ打ちの上に、どこか陰鬱で不安定なメロディーが繰り返されるこの曲は、レイヴ回帰をバックグラウンドとした静かな退廃と熱狂を伝えてくる。

Homemade Weapons - Svalsat

ダークで硬いドラムンベースのなかでも旋律やリリックのような情緒を一切含まない、完全に研ぎ澄まされたビートのみのHomemade Weaponsのアルバムは、集中したいときの作業用BGMとしてもめちゃくちゃ良かった。この世界観本当にかっこいいというか、美しい。同じSamuraiレーベルから出たコンピ"Hannya"(般若)も超良かった。

Alessandro Cortini - LA STORIA

山奥、星空の中で聴いたAlessandro Cortiniのライブは忘れられない音楽体験のひとつになった。激しく揺らぎながら、刻々と形を変えていくシンセサイザーのハーモニーは、電子空間で生まれた弦楽協奏曲のようだ。悲しみを湛えた下降音型が宇宙的な瞑想に誘う。

ヨダタケシ - Gyosyo

アートイベントの環境音楽として多くの実験的要素を投入して制作されたこのアルバムの中でも、テルミン奏者ヨダさんの作風の根源にある詩情とノスタルジー、そしてダンスへの熱がストレートに表れているのがこの曲のように思います。サブスクでの配信が始まり、Spotifyなどでもアルバムを通して聴けるようになりました。

にじさんじ - Virtual to LIVE

「どうしようもなく今を生きてる」というのは、にじさんじプロジェクトを表すものとしてこれ以上ないくらいのフレーズだ。アニメなどの創作されたキャラクターと違い、2次元のCGキャラクターの向こうには生身の人間がいて、仕事へ行ったりご飯を食べたり風邪をひいたり遊んだりしている。それに携わる人たちも手探りなら、視聴者も手探りで、その生々しいまでのライブ感、同時代性のドラマを詰め込んだのがこの曲だなと思います。

◆ ◆ ◆

以下、プレイリストです(Spotifyになかった"Virtual to LIVE"を除く)。


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