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今からはじめる「にじさんじ」

去年の暮れ、飲みの席などで「にじさんじって何なの?」と話題になる機会がたびたびありました。2019年ドワンゴの「ネット流行語100」年間大賞に選ばれたりもしているし、詳しくは知らないまでも、言葉自体を耳にする機会は以前よりも増えたかもしれません。かく言うわたしも去年の夏に急にハマり、日ごろTwitterやnoteで言及することも多くなりました。

この記事は、半年くらい前…まださほど熱心に追っていなかったころの自分自身を想定読者に、にじさんじとは一体何でどういう点がおもしろいのか、どこからどう入ったら楽しめるのか、というようなことをざっくり説明する、スナック感覚の記事です。

言ってしまえばわたしもめちゃくちゃなにわかファンなので、間違っている点があるかもしれません。コメントで教えてね。

にじさんじって何なの?

ひとことで言うと、「いちから株式会社が運営するバーチャルライバーグループ」。必ずしもプラットフォームをYouTubeに限定しないことから、彼らは自らをバーチャルYouTuberではなく「バーチャルライバー」(もしくは単に「ライバー」)と呼んでいます。ひとつのユニットというよりも、概ね、タレント事務所のような理解で合っていると思います。

バーチャルYouTuberには大きく分けて企業が運営する企業勢と、個人で活動する個人勢がありますが、にじさんじは今や企業勢の筆頭格のひとつにあたり、所属しているライバーは2020年1月5日時点で95人います。多い!

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もともとiPhoneのフェイストラッキング機能を使って「誰でも2Dキャラクターになりきれるアプリ」として開発されたというにじさんじプロジェクトでしたが、途中で方向性をシフトして、アプリ自体はクローズドなものとして自社に所属するライバーをマネージメントすることに注力するという、まさしくタレント事務所的な役割を担うようになりました。そのため、現在もライバーは公募形式のオーディションでの採用とし、キャラクターと配信機材を所属ライバーにまるっと貸与? するようなかたちをとっています。

でまあ、上の一覧を見て分かる通り、基本的にキャラクターは2Dなんですね。一般にバーチャルYouTuberとしてイメージされるキズナアイや電脳少女シロのような、フルトラッキングによる3Dキャラクターの動画コンテンツではなく、Live2Dモデリングによる顔の表情と腕を除く上半身の動きのみによる簡易的な表現。これにより、ライバーはスタジオなどの大掛かりな配信機材を必要とせず、自宅から気軽にライブ配信できるような体制になっている。なので、タレント事務所のような括りでありながら、活動の時間帯や内容などの裁量は、所属ライバー個人に大きく委ねられているようです。

なお、チャンネル登録者数が10万人を超えるなどの人気のあるライバーには2Dデザインをベースにした3Dモデルが運営サイドから順次与えられる形になっており、そのためのハイエンドなモーションキャプチャ&ライブ配信システムもあるにはある。現状、平時の配信では3Dモデルが使用される機会はごく少ないものの、ステージ形式のリアルイベントや、他社との案件において制作される映像コンテンツなどで活用されています。

どんなことをやっているのか

基本はYouTubeでのライブ配信。にじさんじライバーは、一般のYouTuberのような編集された短時間の動画コンテンツは比較的少なく、公開されているものはほとんどが生放送とその録画アーカイブであることが多い。ライバーそれぞれがYouTubeチャンネルを持っており、各々好きな時間に配信を行っています。

番組の内容としては、雑談・ゲーム実況・歌、それに、複数のライバーを集めてのバラエティ番組的な企画。それは例えば、トーク番組だったり、クイズ番組だったり、お料理番組だったり…というようなもの。

企画にあたっては、例えば複数人がコラボレーションするような大型の企画であっても、企画の得意なライバーが声をかけて立ち上げるというDIY形式が重視されていて、事務所サイドは原則的に前に出てきません。つまり、コンテンツを盛り上げるも盛り下げるも、ライバーの自主性と企画・パフォーマンス力に任されている点が魅力です。

先日開催され、ライバー67名が参加した「マリカにじさんじ杯」も元は個人企画だというからすごい。生放送の同時接続数6万人を数えたにじさんじ公式チャンネルでの本放送に加えて、参加者それぞれが自分のチャンネルで配信するものだから、チャンネル登録状況によっては、画像のようなとんでもない数の画面を同時に追うという異次元の楽しみもあった。

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こうした日常的な配信に加え、大規模なリアルイベントも度々行われている。直近では、暮れに6,000人を集客した国技館での音楽イベント"Virtual to LIVE in 両国"。今年は早々に、全国Zeppツアーも予定されています。

どこがおもしろいのか

にじさんじは深夜ラジオ

わたしは勝手に、にじさんじはかつての深夜AMラジオに近い存在だなと感じています。自分が20年来の深夜ラジオの愛好者だというのもありますが、パーソナリティとリスナーとの距離感が、なんというか「タレント以上、友達未満」くらいの近さ。ライバーさんは「よく行く飲み屋にいつもいるおもろい常連客」という例えも好きですね。

YouTubeのライブ配信には、視聴者によるライブコメント(チャット)機能があることで、例えばニコニコ動画などと同じような「コメントがつくことで完成するコンテンツ」が成立する。深夜ラジオでのFAXやメールと介したやりとりが、より高速かつ高密度で生まれている感じ。

ライバーは生放送で視聴者コメントを拾って返したりなど当意即妙のインタラクティブなパフォーマンスをするわけですが、その熱量がそのままタイムシフトでライブを見ていなかった人にもシェアできるというのも、地味に欠かせないポイントのように思います。熱が冷めずに伝わる。

人間よりおもしろいコンテンツはない

バーチャルYouTuberに関しては、外見にあたるキャラクターとそれを演じるアクター、またそれらの関係性によってキャラ自体に宿る「魂」などが取り沙汰されますが、にじさんじにおいては、そもそも演者さん自身の人間としての魅力を、敢えて隠さない傾向が強いように思います。

仲のいいライバーさん同士はオフラインで遊んだことも配信で話すし、なんならオフラインでコラボ配信する企画も少なくない。それってつまりは、キャラクターを介さずに素の人間と人間で会っているわけだけど、そのことに対する違和感はリスナーとしては別に全然ない。

そしてまた、リスナーは何十時間何百時間と好きなライバーさんの配信を見ても、ライバーさんの顔を知ることはないし、たぶんこの先も一生知らないわけですよね。街ですれ違っても、電車で隣の席になっても気づかない。テレビタレントや映画スターとは本質的に異なる、覆面型ヒーロー/ヒロインの時代を体現しているのがにじさんじライバーだなと思います。

ありがちな疑問

Q. YouTuberやニコ生主とどう違うの?

A. そんなに違わないかも?

結局のところ、2Dのアバターを使ったニコ生主やゲーム実況者みたいなものじゃないですか。いわゆる、初期のバーチャルYouTuberで言われていたような、仮想空間に固有のまったく新しい第3の魂があるみたいな革新的な表現ではないかもしれないし、ガワを剥いでしまったら単におしゃべりが達者な若者たちかもしれない。その点で、概念が新しいとかでは別にないのかも。

でも、にじさんじのライバーさんにおいて、二次元キャラクターならではの魅力って確実にあるんですね。先ほどのライバー一覧を見ていただいて分かる通り、女子高生もいればおじさんもいるし、悪魔も、鬼も、犬もいる。キャラに寄せてロールプレイを楽しんでいる人もいれば、生活感丸出しで素をさらけ出している人もいる。それもこれも、中身の人格そのままではなく、2Dキャラのイメージとの「誤差」の妙なわけですよ。

そしてまた意外なことに、フェイストラッキングの精度から得られる情報量がなかなかどうして、バカにできない。声が見た目に合っているにしろ合ってないにしろ、キャラクターのプレゼンス=実在感は十分に感じられる。だからこそ、好きなライバーさんが初めて3Dになったときの"お披露目配信"に感激するみたいなところもある。ガワが2次元だろうが3次元だろうが、ライバーさんはアニメキャラのような架空の存在ではなくて、どこかで今まさに同じ時間を生きているのだ。

Q. きらきらしたアイドルみたいな子ばかりなんでしょう?

A. そう思っていた時期もありました……

まあ基本、アニメのヒロインみたいなデザインのキャラクターに声優の卵みたいな萌え声/イケボが付くのは鉄板ですよね。でも、にじさんじはアイドルグループのような売り方は特にしていないので、とにかくいろんな人がいて、いろんな声がある。なにしろ95名もいるのだから、多様性こそがにじさんじの強みだと言っていいのではないかと思います。

でも、もし仮ににじさんじライバーに傾向があるとするなら、突出してピーキーな個性がある…何かしらの面で、世の中的に奇人変人と言われるほどのポテンシャルを持っている人こそがにじさんじ的なのかもしれない。いまやあらゆるタイプ・性癖を網羅しており、現在も増え続けているので、配信を見ていく限りいずれはお気に入りのライバーさんに出会えるはずです。

Q. 今から見始めても追いつけなくない?

A. いやむしろ今しかない

ライブ配信が中心で、続き物のコンテンツは実はほとんどないにじさんじ。正直言って、2年後3年後にアーカイブを見て今と同じだけ楽しめるかというと分かりません。というのも、生放送にはライブ特有の緊張感、同時性のおもしろさが要素として多分にあるからです。なので、追いつくとか追いつかないとかではもはやなく、にじさんじに関して一番おもしろいのは今というのがわたしの意見です。

もちろん、過去配信を遡って、ライバーどうしの関係性やコンテクストを共有していればより楽しめるというのはある。それはどんなコンテンツでもそうで、例えばテレビ番組でも、出川さんがいじられリアクション芸人であるというお決まりの文脈を理解してこそ楽しめる、みたいなところもあるわけですね。

その理解の助けになりそうなのは、例えば非公式Wiki。

馴染みのないライバーさんが出てきたら、とりあえずここでチェックしてみるようにしています。ちなみにわたしのお気に入りは「にじさんじ語録集」。これは例えば、ふと気になったWikipediaを読みふけっちゃうとか、『ニンジャスレイヤー』にWikiの用語集からハマった人には特におすすめ。

Q. どれから見ていいか分からない

A. 基本は月ノ美兎

バーチャルYouTuber界の清楚系委員長(これ自体がフリなのですが)こと月ノ美兎(つきのみと)さんは、あらゆる面でにじさんじイズムを体現する存在なので、何をおいても観てください。いまインターネットで一番おもしろいコンテンツは『ニンジャスレイヤー』ですが、二番目がこの月ノ美兎です。上の動画のような体験系の雑談配信がまずおすすめです。

で、わたしの場合、長らくここで止まっていて…つまり委員長がおもしろいのは知っていたけど、それ以上にじさんじを深追いするつもりはなかったんですよね。

この先へ行くとしたら、いっそのこと、にじさんじ視聴専用のYouTubeアカウントを作ってしまうといいと思います。なぜなら、気になるライバーを次々にチャンネル登録していくと、あっという間に「登録チャンネル」タイムラインがにじさんじで埋まってしまうから…。また、ライブ配信のチャットに気軽にコメントするにあたっても、専用のアカウントからなら気兼ねなくできるというのもある。YouTubeの画面の隅っこのアカウントをクリックすると「アカウントを切り替える」というのがあるので、その先のメニューでアカウントを追加できます。

公式やWikiのライバー一覧から気になる人をチェックしてみるのもいいんだけど、もし何の予備知識もないところからにじさんじを追うなら、例えば「直近でデビューしたライバーさんを初回配信から順に観る」のはどうでしょう。ってのは、昨今にじさんじは毎月コンスタントに3人ずつ新規ライバーをデビューさせているからです。

新規ライバーは当然それより前の共有すべき文脈を持たないし、いわば彼ら彼女らと同じ目線でまっさらなところから楽しめるので、右も左もわからない緊張感だとか、コラボ企画などで徐々に広がっていく他のライバーとの関係性だとかも一緒になって楽しめるはず。ちなみに2019年12月末組のこの3人だと、今のところましろくんが相当ぶっ飛んだ人材ですね…。

Q. 多すぎて追えない

A. 全部追わなくていい死ぬぞ

「にじさんじは既に追うものではない。誰かしらがやっててくれるっていう安心感のもと楽しむジャンルだと我は思ってる」

…というのはフミさんの名言。もっともだと思います。別にライバー全員フォローしているわけでもない、にわかファンのわたしのタイムラインですら、夜間のピークタイムには10人近く同時に配信していることもざらにあるし、そのそれぞれが4時間とか5時間とか配信していることもある。ド深夜から朝方までやっていたりもする。全部追おうとするのは物理的に無理なのです…。

大抵の配信はアーカイブ(録画)が残るので、時間が空いたときにおもしろそうなものだけピックアップして観るのが健康的でいいと思います。というか自然とそうなる。

あるいは、「切り抜き」で追うという手もあります。にじさんじ関連の動画を試聴していれば自然とYouTubeのサジェストに出てくると思うんだけど、ファンが推しライバーの配信アーカイブから名場面、はたまた珍プレー好プレーだけを切り取ったいわゆる切り抜き動画というのがあって、公式からもファンによる二次創作活動の一種として事実上黙認されているようです。これらは大抵が数分程度に編集されたショートクリップなので、そのライバーがどんなキャラで、最近の配信でどんなことがあったかを把握するには最適。気に入った切り抜き職人さんは、ライバー同様、チャンネル登録していくといいんじゃないでしょうか。

以上、この記事では個人的な推しライバーさんについては敢えてあまり触れずに、How to的な内容に徹するようにしました。どちらさまも、お気に入りのにじさんじライバーとの素敵な出会いがありますよう!

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