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【映画】『ゴジラvsコング』『モータルコンバット』

同じ日に2本続けて観てきたので、ネタバレを極力避けてざっくりした感想文を書いておきます。

まず映画館が久しぶりで、去年9月の『TENET』以来! このご時世なので極力外出は控えているんだけど、どうしてもこの2作だけは映画館で観ておきたくて、おなじみ立川シネマシティまで行ってきました。立川、多摩モノレール沿いの再開発がかなり進んでおり、昔ヤギを放牧していたあたりに美術館だの複合商業施設だのがバンバン建っていて、随分賑やかになっていた。

『ゴジラvsコング』

公開4日目、シネマツーAスタジオの「極上爆音上映」で。良かった! Twitterタイムラインとかで先に観てきた方の反応が良かったので間違いないとは思っていましたが、前作(KotM)とは全然違うベクトルの面白さに振り切っていた。

一応断っておくとわたしはまったく東宝のゴジラシリーズに馴染みがない、ギャレス・エドワーズ監督のゴジラからのにわかファンで、基本的にレジェンダリーのモンスターバース(というか元を辿れば『パシフィック・リム』)のリッチなCGIのわちゃわちゃ感が大好きなので、そういう目線です。ただただシンプルに、映画館のスケールで信じられないくらいデカいものが大暴れするみたいな、現実で見たことない映像が見たい。

その意味で、シリーズ4作目となる『vsコング』は今回も期待値を大幅に上回ってくる作品になっていました。タイトル通り、ゴジラとコングが戦うまでは分かるんだけど、それはわりとトレイラーでも見せている通り序盤で実現してしまって、その先「え! そんなとこまで行くの!?」みたいなところへぐいぐい連れて行ってくれるアトラクション。重要なモチーフのひとつになっている陰謀論(conspiracy theory)を、異常な高解像度で立て続けに見せられるので、ものすごい加速度で脳が酩酊状態になる。それでいて、ところどころアバウトな設定は明確に笑いどころとしてコミカルに見せていて、シリアスなSFとしてではなく、あくまで娯楽作品として楽しんでねという意図を感じました。

それにつけてもOne Will Fallというキャッチコピーが秀逸! まったくもって偽りなし。これは同じニュアンスのまま日本語訳するのが難しい。私は予告トレイラーでこれを見て、完全にゴジラとコングどっちが勝つのか答えが出るんだなと思って、勝敗を見届けるつもりで臨み、事実コピーの通りになったので大興奮しました。

シネマシティの極上爆音上映で観る本作、天井吊りのラインアレイスピーカーと巨大ウーファーが発する地鳴りのようなサウンドは視聴を超えた「体験」の一種で、やはり圧倒的に良かったです。WBとレジェンダリーのロゴが出た直後の「ズン!」みたいなキック一発で優勝!って感じだった。あとでWikipediaを読んでいたら、ジャンキーXLは本作のために地球で一番デカいバスドラが欲しいと言って直径10フィート(3メートル)のものを特注しようとしたら、「そのデカさの牛(の皮)はない」と8フィートで妥協したみたいな話が書いてあって笑っちゃった。

ほとんど宗教映画のようであった前作KotMに対して、今作は惜しみない怪獣プロレスを見せてくれた。プロレスと表現するのが妥当かは分からないけれど、肉体を一番かっこよく表現する術を知っているというか…実際にあのスケールの動物の筋肉が躍動し、ぶつかり合い、それによって周囲のオブジェクトに物理崩壊が起こるというのを異常な予算感で実現している。どれだけお金をかけたらこんな映像が作れるの、みたいなカットの連続。

一方で前作と共通しているのは、怪獣と怪獣とバトルを妙に引きで捉えた俯瞰視点で見ているなというところ。人間サイドにも甚大な被害が出ているんだけど、例えば日本の『シン・ゴジラ』で感じた悲壮感やウェットな視点はまったくなく、オタクがフィギュアでブンドドしているアッパーなテンションのまま最後まで突き進んでいく。それが集束するのがめちゃくちゃ熱いラストバトルのシーンで、わたしは泣きながら爆笑して観ていた。ハリウッドのゴジラでこんな、キルラキルとかグレンラガンみたいな感情になると思わなかった。

本作においてゴジラとコングの最大の違いというのは、人間と心を通わせる余地を持っているかという点。ゴジラは前作で示されたように絶対的な王であり地球の守護者であるから、人間とかいうなんかちいさくてかわいいやつには全然頓着しないんだけど、コングと人間とはコミュニケーションが成立する(可能性がある)。その意味で、どれだけコングに殴られようとも前作で示された神にも等しいゴジラの威厳はスケールダウンされておらず、そこも良かったね。

これまでのところ、レジェンダリーのモンスターバース4作ともそれぞれに違った監督の作家性があり、よくできた二次創作アンソロのような趣がある。この次も期待したい。

『モータルコンバット』

続けて、公開3週目の『モータルコンバット』。客入りが芳しくなく、ぼちぼち終わる映画館もあるとのことで、どうにか早いうちに観ておきたかった。だって逆噴射聡一郎先生の熱いレビューを読んでしまったから…。

わたしは90年代のゲーム文化を体験してきた同じモーコン世代とはいえ、ゲームそのものはまったく通ってこなくて、前回の映画化も観ていないという素の状態からの鑑賞。他方、同時に『ニンジャスレイヤー』の激烈なファンであるので、エクストリームな西洋インディーオタクニンジャ作品にまずもって興味があり、いわゆるB級とされるようなニンジャ映画も(決して多くはないながらも)いくつかは観ています。

そのうえで、この作品なかなか均整のとれた、言ってしまえば正統派のファンタジー格闘映画としてすごくおもしろかった。ちゃんと手に汗握るアクションシーンが惜しみなくあり、修行、挫折、裏切り、覚醒みたいなエッセンスが散りばめられていて、初見でもしっかり楽しめた。いかにもゲームっぽいな…みたいな設定やデザインや演出は、あとで知ると正しく原作ゲームをなぞっており、知らなくても愛とリスペクトがあるんだろうなというようなことはすぐにわかる。

冒頭、真田広之演じるハサシ・ハンゾウの庵襲撃シーンは、時代劇さながらの静と動をもって美しく高密度に描かれ、そこからの字幕あらすじ説明からのシームレスな「魔界」なので有無を言わせぬものがある。魔界はなんだかいかにもな濃い面の連中がいかにもな会話をしており、そこから現世に移ったかと思えばごく普通の家族思いのパパであり格闘家のコール・ヤングが、にわかには信じがたい荒唐無稽な運命に巻き込まれる様をもって物語がドライブしていく。そして全編を彩るド派手な音楽と過剰暴力!

本作の何がいいってまず役者さんの顔…というか表情が良くて、クールなキャラはクールに、憎まれ役は憎まれ役として生き生きしているから、あんまり印象の薄いキャラがいない。テンプルでの修行や食事のシーンもいちいち楽しい。強いて言うなら、サブ・ゼロを除いては敵方のドラマがあまり描かれないので、原作ゲームのバックグラウンドを知らないとただ倒されるためにいるみたいな感じになるところかな。

にしても、スコーピオンとサブ・ゼロの因縁はちゃんと分かりやすく、しかもかっこいいアクションの応酬として決着がつくので、最後は気づいたらずっと拳を握りしめて観ていた。あそこはまさしく地獄から蘇ったニンジャスレイヤーとダークニンジャの戦いでしたよね。でもう、エンドロールでジュリアナ東京みたいなオケヒットバキバキのデステクノがかかった瞬間わたしとかは一気にブチ上がって「90年代じゃん!」となる。90年代なんだよ。

事前にYouTubeでみたゲーム版モータルコンバットの脊髄引っこ抜くフェイタリティが見れなかったのだけ残念でしたが、モーコンじゃないほうで観れると思わないじゃん。完全に小学生男子の脳になってしまった一日でした。

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