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教習所日記(6) 卒業まで

前回:教習所日記(5) 第2段階の後半|R-9|note

普通車AT教習所通い最終週、ラストスパートです。

危険予測・ディスカッション

技能教習の第2段階の後半パートはほぼほぼ内容が決まっていて、順繰りに受けるだけのコースメニューになっている。13時限めの危険予測は実車でなくシミュレーターを使った教習で、平たく言うと「人を轢いてみる体験」ができる。こればかりは路上では学べないので…。

専用のシミュレーターは、技能の初回のときと同じような実車を模した筐体に、3画面のディスプレイがついている。さっそく教官の指示通りに発進すると、あからさまに危ない場面が次から次へと出てくるんですね。対抗車線のトラックがパッシングで譲ってくれたから右折と思ったら、影から二輪が! 路駐を避けつつ後続の邪魔にならないよう加速しかけたら、ボールを追いかけて子供が! みたいな。漫画『パトレイバー』で出てくるイングラムのシミュレーターを思い出す。急ブレーキが間に合わないとPS2みたいな解像度のポリゴンの子供が盛大に飛んでいくので少し笑ってしまう。

でもこれ実際、どんなときにどこに注意しないと何が起きるのかがとても分かりやすかったです。理屈よりも経験で学ぶほうが身になるとのことで、それは確かにそうだろうと思う。リプレイを見ながら、どこでどの程度アクセルやブレーキを踏んでいたかも数値で確認できるので、自分の技術の何が足りていないかが客観的に分かるようになっている。ほかの教習生の走行の評価も、また違った視点でかなり参考になる。

続く14時限めのディスカッションは、学科の11番とセットで受講することになっていて、内容としては、路上をひとしきり走ったあと、教室で同乗者および教官がそれをレビューするというもの。しかし、あいにくわたしの時は予約の都合で同乗するはずの教習生がなく、普通に教官とマンツーマンになってしまいました。

ただ、この日は年齢も近い話しやすい教官だったこともあり、地元の話などをしながらリラックスした雰囲気で無難に走ることができた。ディスカッションのなかでは、進路変更のウインカーは早めに消したほうが戻る手順がバタつかなくて済むよとか、ミラーは右左折進路変更のときだけでなく、常にちらちら見ておいたほうがいいよとか、ちょっとした"勘所"のようなアドバイスをいただけて大変ためになりました。

卒検前効果測定

さて、ここまでで学科の26番までの全教習が終わったので、教習所内で受ける4つの学科試験のうち最後のテスト、卒検前効果測定を受けられるようになった。これは卒業後に各自治体の免許センターで受験する本免学科試験とほぼ同じ形式のもので、5つのイラスト問題を含む全95問、100点満点のうち90点で合格というもの。一日に一度しか受けられず、早めに合格しないと後のスケジュールにも影響してくるから、まずは受けてみる。

解答にはそこそこ自信があったものの、ポロポロ落として95点でした。でもまあ、一発合格には違いなく、学科担当の教官も我がことのように喜んでくれて嬉しかった。考えてみれば、教える方としてはただただ教習生がテストに受かるために教えているわけだから、教えたとおりに点を取ってパスしてくれること以上に仕事のモチベーションが上がることはないのだなあ。

学科の教官は、まるで予備校の教師のように教えてくれるんだけど、単にテストに出るポイントだけでなく、それが印象に残るように雑談や実例を交えてうまく教えてくれる方はいるもので、そこに創意工夫の余地がある。学科担当は4~5人の教官で回しているようで、26回の教習のうち何度も同じ人に当たるから、それなりに顔も覚えるし、親しみのある方もいたから、これが終わってしまったら今後特に関わることもないのだなあと思うと、それなりの感慨もある。お世話になりました。

印象的だった教官は、わたしと同年代で高1の息子さんがいるという方で、4年前に奥さんが車の免許を取りに来たほか、2年後には息子さんが教習所に来るという。働きぶりを家族に見られるサラリーマンというのもそう多くはないと思うので、考えてみるとなかなかおもしろい仕事だなと思います。

高速教習

技能の15・16時限めはいよいよ高速教習! いや~、仮免取って生まれて初めて路上に出て、その2週間後にはもう高速道路に乗るのだから恐ろしい。教習生2人と教官とで、往路はまず最寄りの入口から高速に乗り、上り方面にひとつ先の出口まで行ったら降りてUターン、インターチェンジ3つぶん走ってまた降りてUターン、上りへ入ってすぐのPAで運転交代。復路も同じルートの逆順で、という感じの2時間弱でした。わたしは往路を担当。

高速教習車は初めてのプリウスで、普段路上で乗るカローラと勝手が違い、戸惑った。エンジンかけても全然音がしないし、アクセル踏んでも手ごたえなくスーッといく怖さがある。肝心の合流は、教官が隣りで様子を見てくれるからタイミングで迷うところはなかった。文字通り手に汗握りつつ、それでもどうにか危なげなく走りきれました。緊張はした。

走行中は80km/hキープで、5km速くても遅くてもすぐに指摘が入る。普通に坂のアップダウンの影響も大きいし、車間距離にも気を配らないといけない。乗り心地に影響するから左右にフラフラしないよう気を付けるなど、意外にやることは多い。でも、歩行者や信号がない分、レースゲームに近い運転の楽しさもあって、次はもうちょっと長く乗ってみたいなという気分にもなりました。

復路はもう一人の教習生の女の子の運転。自分が運転するよりも、ほかの教習生の後部座席にいるほうが緊張感がある。高速上は特に問題なかったんだけど、降りたあと広い道の右折先で「3つある車両通行帯の一番右に入って」と言われて、対向車線にスーッと入って行きかけたのがめちゃめちゃ怖かった。

その後の17~19時限目は再び路上でマンツーマンの教習。うちの教習所の場合、路上は3コースあって、このいずれかが卒業検定のコースになるから、これらをラスト3回の教習で復習していく。

最後の教習がいわゆる「みきわめ」にあたり、ここでゴーサインが出ると卒業検定の受検資格が得られる。さすがに同じコースを何度も走っていると慣れて、いつも通りやれば卒検もうまくできそうだなという手ごたえ。無事に良判定になり、さっそく翌日に卒業検定の予約を入れました。

卒業検定

10月27日、ついに卒業検定。9月10日の初回の教習から数えて、教習所へ通った日数にして通算27日目、およそ2ヶ月弱の道のりでした。

これは本免許の取得に必要な技能・学科の2つの試験のうちの技能試験にあたるもので、あらかじめこの卒検を合格して自動車教習所を卒業しておくことで、免許センターでの技能試験を免除され、残る学科試験だけで免許を交付してもらえることになる。

検定の内容としては、事前に何度も練習した3つの検定コースをそれぞれ前半と後半に分けた計6コースのうちのどれかひとつを実際に走ったあと、所内に戻り、方向変換または縦列駐車のいずれかの課題に挑む。これらはランダムで、教習生ごとに当日発表される仕組みになっていました。

わたしは運良く、6つのなかでは比較的簡単なコースが当たった。運が悪いと、道が狭くて電柱も歩行者も対向車も多いコースだとか、制限速度ギリギリで飛ばしてる通行帯を気にしながらで路駐を避けての車線変更があるコースも全然あり得た。何が怖いって、そうしたリスクの高い道でイレギュラーな事態に出くわしたときに、咄嗟の判断を誤らずにできるかどうかという点なので。

ただ、いざ始まってみると仮免の技能試験(修了検定)よりも緊張せずに臨めました。修検よりもやることは少ないし、運転への慣れによるところも大きい。走行の途中で出される一時停車の課題も、駐停車禁止箇所を迷うような露骨に意地悪な判断は迫られず、だいたい検定員(教習所の教官だ)の指示した直後にそこで停めればいいことになっている。とにかく忘れないように気をつけるのは、ミラーと目視による細かすぎるくらいの確認!

所内コースに戻ってきて、縦列駐車の課題。これは、前日のみきわめ教習で改めて繰り返し練習させてもらえたから、間違わずにうまくできた。教習から時間が空いてしまうと、手順を忘れてしまったりはあるかも。バックでうっかり行き過ぎないように、ブレーキ踏んでゆっくりゆっくり順序よく。

この日の卒検の受検者は6名で、それぞれの番が終わったあと自分を含めて5名が教室に残り、この全員が合格と判定されました。やったね。

そのまま教室で待機していると、教官としても全然見覚えのない作業着姿のおじさんが入ってきて、何事かと思ったら、その方が自動車学校の管理者(校長先生)なのでした。ちょっとした安全運転についてのためになるお話があった。この教習所での卒検は毎日行われているそうだから、おそらくこの方はこれが日課なのですね。

続いて卒業証明書の交付、必要書類の発行などを経て、県の運転免許センターでの学科試験の受験案内などがあり、晴れて自動車学校は卒業!

自動車教習所へ行ってみての感想

そういうわけで、無事に当初の予定通り、自動車教習所を卒業することができました。振り返ってみれば、所内の試験は学科・技能ともにすべてストレートでパスできて、大きな躓きはなかったようでもあります。

しかし実際には、既に書いてきたように第1段階で追加の技能教習を3回やっているし、路上が始まってからも横断歩道で歩行者を見落として隣でブレーキ踏まれたこともあるし、黄信号に迷って交差点内で立ち止まっちゃったことも全然ある。生来のどんくささ、要領の悪さが出てしまい、教習でうまくできなかった場面はたくさんありました。

ただそれに年齢的な事情はおそらく関係ありませんでした。何歳からでも車の免許は取れるし、特に教習所で学ぶうえで支障に感じたこともなかった。教官・指導員もどの方も自然に接してくれたし、時間いっぱい言葉を尽くして教えてくれた。今どきのことなので、露骨に感じの悪い教官にも出会わなかった。苦情・配車拒否カードがあるので、ハラスメント的なことがあるとたぶんすぐに怒られる仕組みになっている。18、19の子なんて扱いにくい子もいるだろうに、むしろ教官サイドもよくやっているなと思います。

よくやっていると言えば感染症対策。若い人が集まる場所だけにマスク、消毒には気を使っていて、教習車に乗るときも必ず手指のアルコール消毒がある。ああいうところでいざクラスターになってしまうと、がっちり組まれたスケジュールがハチャメチャになり、大変なことになるだろうなと思います(実際、緊急事態宣言のころは営業ストップして超大変だったらしい)。おかげさまで、期間中ずっと体調良好のまま通いとおすことができました。

自動車教習所、特にわたしの通っていたところは施設が古いこともあってか、滲み出る旧態依然としたおじさん会社の微妙なところも、確かにある。指導員は全員男性、受け付けは全員若い女性みたいなのもなんだかなあだし、はんこベースのアナログなシステム、秒単位で区切られた教習スケジュールの融通の利かなさみたいな息苦しさもそうだし…でもまあ業界的にそんなに急には変われないものよねいう感じもある。実際、少子化にあっても地元教習生のニーズは多く、平日も常に活気があるようでした。

かかった日数は足掛け2ヶ月弱(7週間)。この間、スケジュールの都合で週に1度だけのときもあったし、週5でみっちり通った週もあった。多いときで1日に5時限入れていた日もあって、久しぶりに学生気分を味わいました。

そのぶん仕事の調整も大変で、夜間や土日に仕事したりもしていた。趣味の活動もやろうと思えばできたけど、そこまでの余力はなく、いろいろ犠牲にしてという感じにはなるから…頑張ったは頑張りました。合宿免許でも2週間はかかるというから、働きながら土日で通ったらやっぱり半年くらいはかかるのかな。教習が始まると、運転の間隔が空くほど不安になるものなので、短期で取れるならできるだけ短期で取ったほうがいいというのは、その通りだと思います。

かかった費用は合計で約35万円。内訳としては、基本の教習料金が税込308,000円、短期卒業を目指すスピードプランのオプションが税込44,000円、閑散期のキャンペーン適用で2万円のキャッシュバックがあって、追加の技能教習費用が税込4,950円×3回、あと仮免学科試験と高速教習などの諸費を併せてといったところ。入校時には、追加教習が規定回数無料になる保険のオプションも提示されたけれど、結果として3回だけで済んだので入らなくてよかったです。

県の運転免許センターでの学科試験はいまオンラインでの予約制になっていて、来週受けにいくことにしています。それが終われば、ようやく免許証の交付。このnoteも残り1回となりました。車乗れるようになったらどこに行きたいかな~みたいなことも、そろそろ考えています。今は達成感と解放感、そしてほんの少しの寂しさがある。


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