テクノ新譜試聴メモ:2023-03
90年代からBen LongとのタッグやBanduluなどとしてUKテクノを牽引してきたJamie Bissmireが、自身のレーベルGroundを率いてBandcampやTwitterで活動を再開したとの報せ。同時に20年以上ぶりのレーベル新作"The Old Stones"が発表されています。
わたしはソロ作もだけどSpace DJzのファンだったからシンプルにうれしい。確かにここ数年、名前を見かけないなとは思っていました。Groundレーベルからは今のところ過去作のデジタルリマスターのような動きはなさそうだけれども、Bandcampに各リリースの単体ページができているから今後に期待してしまいます。たぶんまだ聞いたことない曲が相当ある。
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SurgeonのTresorからの4年ぶりの新作テクノアルバム"Crash Recoil"を聴いた。よくデザインされているのは伝わってくるんだけど、いまいちパッションを感じないというか、彼のイマジネーションを、求められるままのいわゆるダーク・テクノのフォームファクターに窮屈に落とし込んだような作品に感じてしまった。職人だからもちろんこういうものも作れるんだろうけど、少し前のほうがもっと自由に作っていてよかったな。今となってはバーミンガムスタイルのテクノのフォロワーは他にもたくさんいて、なんならもっといい作品を出しているので。ただ、これがスタジオアルバムでなくライブパフォーマンスになると、また違う完成度のものとして受け止められるのかもしれません。
以下引き続き、3月の新譜から。
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Alexander Johansson & Mattias Fridell - Skrammel & Bank [Recorded Things]
長年精力的にリリースを重ねているスウェーデンのデュオによる12曲入りアルバム。一貫してシリアスな世界観のなかで、どの曲もナチュラルに歪んだパーカッションと覚醒系シンセのシーケンスが絡み合うアグレッシブなDJツール。掛け値なしに、今もっとも熱いハードミニマルのアルバムだと思います。3曲目"Hets"の手堅いビルドアップとブレイクに夢中になってしまう。超おすすめ。
Conceptual - Not An Easy One EP [PoleGroup]
今作も安定して全作かっこいいConceptualの新作。ノンビートの1曲目の導入に始まり、2曲目"Me Medesimo"でいつものズブズブの泥沼テクノに引きずり込んでくれる。金属の工具が出すような短いゲートのノイズが響きあう3曲目、4曲目の歯切れの良さも新鮮で良かった。にしてもPoleGroupは相変わらずジャケのアートワークがクール。
Conrad Van Orton - Lullaby For Wayfarers [Counterchange]
しばらくご無沙汰だったCVOの新作、ディープでエモーショナルなパッドの雰囲気はそのままに、流行に合わせて140bpmオーバーになって帰ってきた。これは最高。EPのほかの収録曲も全部ハードで、しばらくこの路線で行くのかな。
Fixeer - Kadok [CommonSense]
メキシコのCommonSense Recordsの新作コンピから。こういう信号機みたいなシグナル音が延々と繰り返される直線的な曲好きなんだ。他にPWCCA、Truncateなども参加。重心の低いツールトラックがたくさん。
Perfo - The nerve center [MindTrip]
ハードなヒプノ系テクノで他の追随を許さないMindTripレーベルから、新人のPerfo。ブリーピーなノイズのきらめきのなかからじわじわと姿を現す上昇音型の反復にハマる。
Reeko & Surgeon - Lemurian Blues [Mental Disorder]
この2人のコラボはこういう音になるのかという驚き。まず解き放たれたダビーなビートが自由で良く、モコモコとしたベースから立ち上がってくる煙たいローテンションなコードが何かを予感させる。他の曲もみんないい。これはかなりReekoの世界観が出ていると思うけど、Surgeon絶対これくらい好きにやっていたほうがかっこいいよ。
Stanislav Tolkachev - Spot The Pattern V1 [Consumed Music]
オランダのレーベルから。剝き出しのナイフのような鋭く危なっかしいアナログな質感は健在。ジャケットのひまわりに象徴される彼のアーティストとしての戦いかたに思いを馳せる。
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Spotifyのプレイリストも更新しておきました。
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