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テクノ新譜試聴メモ:2020-08

8月の新譜チェックです。

Damon Vallero - Deep Drawl [Electracom]

淡々とリリースを重ねるDamon Valleroの孤高のレーベルElectracomが、珍しく旧作の掘り起こしでレア・トラックのコンピを出しているんだけど、20代のころ個人的にすごく好きで使い倒したこの曲が入っていて嬉しくなってしまった。オレンジのレコード、たしかDJ用と保存用で2枚買っていたんじゃなかったかな。

当時としても珍しい、変わった雰囲気のツールトラックで、厚みのあるパッドの浮遊感とチャカポコしたパーカッションのトライバルな空気が混ざり合っている。かといってOliver Hoほど乾いたサウンドでもなく、ハードでもディープでもない感じが好きだった。Damon Valleroも大ベテランだけど、今でもずっとこういうユニークな曲が多いよね。

The Extraverse - Process 1 (Marco Bruno Version) [Dystant]

Marco Brunoのかっこいいリミックスワーク。シリアスなウワモノがホラー感を際立たせる重めのハードミニマルで、シンプルな抜き差し展開と派手すぎないブレイクがアクセントになっている。

Inigo Kennedy - Chiral Thunder [Voltage]

多層的に展開する美しいシンセ音色使いが特徴的なInigo Kennedyらしいディープな作品。非4つ打ちながら、低音域の強いうねりが生み出すグルーヴに飲み込まれそうになる。時折浮き沈みする優しげなメロディーは、どこか90年代を想起させるノスタルジーもあって味わい深い。

Michel Lauriola - Sillage [Black Codes Experiments]

モコモコとしたヒプノ系の音像のなかで、妙にギラギラした金属的なフィードバック音色が異様に気持ちいいトラック。このぎゅわーんみたいなウワモノシンセだけで一発で気に入ってしまった。Cristian Varelaのこのレーベル、以前は旧作のリイシューが中心だったはずだけど、今年になってModdullarやPWCCAなどのダーク&ヒプノティック寄りの新作が相次いでおり、注目しています。

Crime as Service - Data Transfer [Dynamic Reflection]

スペインの謎めいたデュオCrime as Service。まださほど多くない彼らのリリースを聴いてみると、一貫したハードミニマルのモダン再解釈のようなスタイルが見て取れる。16分刻みのグリッドにぎっしり音が詰まっていて、分かりやすいウワモノや展開も少なく、あとはDJがミックスでいい感じにしてね、みたいなスタンスだ。この曲も覚醒的な持続音を使いながら、基本に忠実なビルドアップ構造になっていて気持ちいい。もっと聴きたい。

Mystic Letter K - Juxtaposition [Mystic Letter K]

Cari Lekebuschの数あるエイリアスのなかでも特にマニアックなエレクトロ名義、Mystic Letter Kが2017年に独立レーベルとしてリブートしての4番。この曲かっこいいな! 普通のエレクトロからさらに音を差し引いて、1拍めのキックだけ残して半分のグルーヴになるところを、スネアのディケイの上げ下げでテンションをキープさせている。シンプルの中に光る職人芸だ。いつもながらの硬い音選びとスペーシーなエフェクト、ジャケもキモかわいくて好き。

Divide - Termosfera [MindTrip]

Warm UpやポルトガルのHayesからもリリースしているイタリアのDavide Maioのソロ・プロジェクトDivide。オールドスクールなハードミニマル・スタイルを持ち味に、いろんなテイストを試せる器用さを持っているようだ。この曲はモロに90年代のGaetekやMarco Carolaを彷彿とさせるバキバキに硬い直線的なハードミニマルで、推せる。Bandcamp版のEPはエクスクルーシブで1曲多いみたい(Spotifyにもある)。

Spotifyプレイリストも更新しておきました。
興味のあるかたはプレイリストを追加してみてね。

「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。

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