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テクノ新譜試聴メモ:2022-09

ASC - Re-Zoning [Auxiliary Transmissions]

2014年の"Return Of The Emissary"のセルフリミックスシリーズの2作目。グレイエリアもいろいろあって、大抵は85bpmか127bpmのどちらか一方がメインのグルーヴになるわけだけど、この曲ではどっちも同じレイヤーに共存しているという職人芸をさらっとやっている。ビートの特異性もさることながら、唸るような低音の繊細な扱いを聴く限り、やっぱり根っこがベースミュージックなんだなと感じる。

Hemissi - Aztec [Blank Code]

宇宙的に響くSEが気持ちいい骨太なミニマル。最近ちらほら目にするアーティストだなと思ったら、去年Axisからまさしくジェフミルズ直系サウンドのデビューアルバムを出してちょっと話題になっていた人みたい。このEP全体的にハネたロウなグルーヴが良い。Edit SelectやSymbolismなどからも出ていて、今後の活動の広がりが楽しみ。

JUDAΣ - HOΣTILE [Artscore]

JUDAΣの新譜だ! 暗くざらざらした質感の上を、明滅するさまざまなノイズが這うように現れては消え、反復しながらもゆっくりと有機的に遷移していく。毎回全曲良いけど、今回はいかにもなギラギラしたシンセの下降フレーズが気持ちいい"V"がお気に入り。地味なようでいて、完全にピークタイムチューンですね。

Pfirter - An Emerging Force [Modularz]

硬派ヒプノハードミニマルの第一人者Pfirterの新作EPがModularzから。どれも使えるツールトラックで、ブリーピーかつ催眠的な"Ultraviolet"とノイジーでぐいぐい引っ張ってくれる展開が熱い"Arc"が特に良かった。レーベルのPure Technoという触れ込みに偽りなし。

.Vril & Rødhåd present: Out Of Place Artefacts - Out Of Place Artefacts II [WSNWG]

今月のおすすめ最高アルバム。2020年に実現したコラボレーションの2作目で、音響的な実験精神のなかにも強いビートへの指向性が伺える快作。1曲目の"PANGAEA"から幻想的な3連符のアルペジオで空間的な広がりを予感させつつも、後半で入ってくる攻めたリズムパターンがかっこいい。作品を通して終始この叙情性と幅広いスタイルのダンスミュージック…ダブテクノ、エレクトロ、ドラムンベースなどが結びついている。長く楽しめそうです。

Drop-E - Bushido [Edit Select]

武士道! やっていることはいつものDrop-E節だけど、若干レーベルカラーに合わせて内省的な仕上がりになっている。4曲目の"Tsuba"のズブズブのハマり具合がいい。いつもこういうB面っぽい曲ばかり好きになる。

今月取り上げたトラックはSpotifyのプレイリストにまとめてあります。

「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。


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