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英語を使うチャンスは自分で作る

以前に少し触れましたが、私は社会人3年目で、アメリカの親会社の研究所へ逆出向という形で1年間赴任しました。そこですぐに気づいた問題が、英語で会話をする時間は仕事の時間中はほとんどない、ということでした。研究開発の仕事なので、考えてみれば当たり前のことでした。

しかしいざチームのミーティングなどになると、白熱している議論についていけない。

私は物心ついた頃から音楽で育ち、大人になってもオーケストラ指揮者を続けていましたから、耳から覚えて慣れることと単純に繰り返すトレーニングの効用を身を以て体験していました。私の夢の環境と比べると、話すこと、聞くことの時間が圧倒的に足りない、という危機感を持ったのです。

そこで私が始めたことは、仕事中はいろんな人のオフィスに立ち寄り質問をしに行く。コーヒーを注ぎに行けば、そこにたまたまいる人に声をかけてちょっと話をする。ランチは必ず誰かと一緒に行く、というようなことでした。

プライベートにて。スーパーマーケット(Walmart Super Centerは巨大)へ買い物に行けば、あえて自分で努力して商品を探さず、フロアスタッフを探して尋ねる。レジのおばちゃんとも会話を交わす。TexasのLake Jacksonという田舎でしたから、個人経営の店では、商品を探す会話から、プライベートまで、いつまでも話し相手になってくれる人がたくさんいました。

友達の友達がしょっちゅう、ボートを出してビールを浴びるほど飲むパーティーをやったりしていました。そういうところに誘われたら必ず行きました。

あとは、繰り返しの効用として、テレビで再放送される映画(Jaws, CHiPs, The A-Teamなど)を何度も見ました。(私のfurnished apartmentにはvideo deckがなかった。)一度目に聞き取れなかったことが二度目にはわかるようなり、三度目にはもっと聞き取れる言葉が増える。。。こうして少しづつ聞き取れる言葉が増えると同時に、ボキャブラリーも増えていきました。特に英会話スクールや学校では絶対に習わないforbiden phrases(いわゆる汚い言葉)などを身につけるには、この手の映画やテレビ番組は絶好の教材です。

余談ですが、私の尊敬していた当時の製造プラントのエンジニアリングのリーダーの男性は、ミーティング中でもそういったslangをしょっちゅう口に出しました。皆彼をよく知っているので、ニヤニヤして聞くわけです。例えば、ちょっと調子の悪いサンプリングバルブに対して、”bull sh*t sampling valve” 「もう一度測定し直そう」という時にも、”Measure f*ckin’ tank pressure again!”などというわけです。ワイルドでしょ?

私が気をつけていたもう一つのことは、出来るだけ日本語を使わないことでした。読まない、書かない、話さない、聞かない、ということをできるだけ徹底しました。日本語を使ってしまうと、どうしても頭の中が日本語に戻ってしまうからです。そこから英語の頭に戻すには時間がかかりました。

当時の逆出向は私と私の上司と二人でした。私はその日本人の上司とは、必要最低限しか話さないことに決めました。上司といえども、各自が新しいプロセスを学び研究するためのアメリカ赴任でしたらから立場は互角でした。話すときは、その上司が日本語でも私はあえて英語をキープしました。周りからすると、日本語で「何かコソコソと話している」と思われているのではないかという懸念があったことも記しておきます。

さて、私はシンガポールに来て6年になります。世界のほぼどこでも、ある程度以上の都会には必ず日本人コミュニティーがあります。今ならインターネットですぐに現地の日本人コミュニティーを見つけることができます。確かに最初の慣れていないときは、どうしても日本人コミュニティーに頼りたくなるのも理解できます。しかしちょっと待ってください。いったんコミュニティーと繋がりを持てば、ほとんどの場合そこから抜け出せなくなるようです。つまり交友関係は日本人ばかりということになるのです。こういう生活をスタートしてしまうと、英語を身につけることがストップしてしまいます。実際に英語圏に長年住んでいても、英語がさっぱりという人は大勢います。「間違えだらけの学校英語教育」でも指摘しましたが、英語を使う時間を積み上げること、一日中英語の中にいることが英語をマスターする上で最も重要なことです。

外国に引っ越したら、隣人がどこの国の人であろうが、まず挨拶に伺いましょう。日本国内ではそうしますよね?それと同じです。近所の便利な場所を教えてもらえるかもしれません。何か共通の話題が見つかるかもしれません。この第一歩があなたの気持ちを楽にするはずです。どうして隣人より先にオンラインで探した日本人コミュニティーにコンタクトするのでしょうか?考えてみればおかしな話です。英語を使うチャンスを作るのはあなた自身のチョイスと最初の勇気ある一歩です。チャンスがあるのにそれを有効活用しないのもあなたのチョイスです。

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