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【788回】タンチョウの足音が聞こえる

北海道鶴居村でタンチョウを観察したい。「鶴見台だよな」と思い込んで行ってみたら、実際には5箇所ほど観察ポイントが存在していた。

きっちりと下調べをせずに行ったので、当初「鶴見台」以外の訪問は考えていなかった。今思うと、タンチョウがたくさん観察できそうな「①鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」には行くべきだったか。

そのまま、釧路市に戻ろうと車をUターンさせた。ふと、「④音羽橋」という観察ポイントの存在に気づいた。少し横道に入るだけで、大きな迂回にならないようだ。

川をまたぐ橋に立つ。奥にタンチョウの群れがいる。どうやらあそこが、ねぐらなのだろうか。

奥がねぐらかな?
群れは急に飛んで行ってしまった。


橋の下を見ると、タンチョウが2羽立っている。これはツガイだろうか。

ツガイ?


そのうち1羽は、ゆっくりゆっくり歩いている。何かを探しているのか、歩く理由はわからない。ただ、歩いている。

歩く

厳冬の北海道だ。川は凍っているところがある。
道東の、都市部から離れた地方の村。ただただ静けさが広がる。

タンチョウの足が、氷の上に乗った。
「ピシ、ピシ」
氷にヒビが入ったのだろうか。静かな場所だったからこそ、小さな自然の音が聞こえた。

ピシ、ピシ

タンチョウは氷の上から、川の中に足を入れる。
おそらく、震えるほど冷たい水温だろうが、タンチョウは平気なのだろうか。

冷たくないの?

タンチョウの足音。小さい小さい単なる音。だけれども、普段は聞けないような自然の音で、なにかとても贅沢な気持ちに包まれた。

ゆっくりのんびり、自然を見ていられるのは幸せだなと思った。