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この二年間が終わる。

羽田空港から乗車した、実家(町田)に向かうバスの中から書いている。

今回の出張の目的もいつも通り、MMMとMRSに関する時間がほとんど。
だけど、今回はその合間に実家を撤収する、という重大用務がある。

そして来週は札幌の自宅を引き払うという重大用務がある。

僕は生活を変化させることが好きな側の人間だと思うが、それでもこの二年間は「町田と札幌の二拠点居住生活」で安定していた。

もちろん大変なことが多かった。東京に戻る理由だって「このままじゃもたないから」と言えなくもない(もちろん、もっとポジティブな言い方の方が適切だけど)。しかし、ここの所はペースが掴めてきていたし、この生活への愛着は強まるばかりであった。

札幌は本当に楽しい場所だ。最初は手こずった勤務先のリズムもやっと読めてきて、僕らしい仕事もできてきた。教育も楽しい。学生からは「講評時だけ怖いキャラ」が定着しつつある。学生と飲みに行く機会も増えたし、顧問を務めたワークショップ研究会はとても居心地の良いコミュニティだ。道内での活動も面白くなってきて、夕張や浦幌での活動は充実してきたところだ(これは札幌を出てからも続けます)。

そして東京の拠点である実家。夜、北海道(時に茨城や伊東)の土産をつまみに、父と酒を飲む時間が本当に楽しい。

父とはこれまで、決して仲良くはなかった。僕の理屈っぽく、頑固で、そのくせいい加減な所は、叩き上げでかつ繊細な父の気性には合わなかったのだろう。大学後半からは、色々なじょせ…もとい色々な友人知人宅に転がり込むようになり、あまり実家には帰らなくなっていた。

この二年間、実家に戻り、父と二人暮らしの中で、酒を片手にゆっくり話す時間があった。別に考え方が近くなった訳じゃない。ただ、互いに歳を取り、異なる価値観に出会っても、酒を挟んで、受け入れる余裕ができるようになっていた。そうすると、父の今までの仕事や子どもの頃の話をはじめて楽しく、聞くことができるようになった。学生時代、退屈の象徴だった実家が、いつのまにか充実した時間になっていた。

その時間が今週、終わる。

この二年間を一言で言えば「優しい時間」と言えるかもしれない。東京で、嫌われ者を覚悟しながら、組織の立て直しの責任者、という刺激だらけの2017年とは対照的だ。この「優しい時間」は僕のこれからに悪くはない影響を与えていくのだと思う。

次はまた、東京の真ん中で充実した日々を送ることになる。すぐに順応するだろうし、次に住むことになる麻布十番は大好きな土地。正直とても楽しみだ。次に実家を「住む場所」として帰ることは…おそらくもうないだろう。

だけど、この出張では父との時間を愉しみたい。今、バスを降りた。実家まではもう少し。

鞄にそのためのルイベと北海道焼酎が入っている。少し重い。

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