見出し画像

悪夢、闇に消えた不審者

片田舎の農道で、もう直ぐ日が暮れようとしていた夕空の中を急いで家に帰ろうと半ば焦りながら歩いていると、、後ろから声を掛けて来る男がいた。

そいつの服装は、何も気取らない中年男性の私服のそれと言った感じで、どう言う訳でこんな田舎の農道で何度も話しかけて来るのか分からないが、私も初めに相槌を打ってしまったものだから途中で話を切り上げる訳にもいかずに話を聞いているのだが、辺りがとても暗くなって来た。

田舎の夜道は街灯が無く、日が暮れたら終わりだ。

そんな中私は『少し待って下さい。』と言って持っていたスマートフォンのライトで灯りを照らした。

辺りに光はなく、ただ照らした先の中年の顔だけが、浮かび上がって私に向かってずっと喋り続けている。

私はこの状況が恐ろしくなって、遂に『すみません、そろそろ家に帰る時間なので』と言うと、中年の男も『そうですね、そろそろ帰りますか...』と言って、本来、実在する道では木々が茂って、急勾配の坂にになっている方へ体を向けて歩いていった。暗闇の中、スマホのライトでは全然先は見えないので、、男の行方は分からなかった。

私がその男と話していたのは、直ぐ横に丘になっている先に道祖神のある場所で、平生より気味が悪いのだが、ここで一つ私は、ある事に気がついたのである。

私が帰る家が在るのは、不審な男が帰った先と全く逆の方向で、何も見えない暗闇の道で、さっきまで闇の中にポツンと顔だけを不気味に浮かび上がらせていた気持ち悪い男が、実際に歩いて行ったのを確認しないまま、絶対の確信がないまま背中を向けようとしている。

心臓が今にも破裂しそうな程の急激な不安に襲われ、暗闇の中でどっちを向いて良いか分からなくなって頭の中には、さっきまで青白いライトを浴びて奇妙に顔を闇の中へ浮かばせていた男が、未だ近くに居て此方を監視しているかもしれない!と考えた瞬間に私はその場から動けなくなってしまった。

さあ、どうする?

奴に背中を向けて走って逃げようか、それとも心を不安にさせまいと、安全を確認する為にスマホのライトを四方八方にぶん回すか、いや、もうヤツは自分の後ろ側に回り込んで待機しているかもしれない......


物凄い汗と心拍数と絶望感の中、私は目を覚ました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?