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魂の叫び声

私は2年前、ずっと悪かった耳の聴力を良くしようと、とある大学病院で鼓室形成術をしました。
その時の手術は2、3時間程で終わると主治医から伝えられていましたが、実際、全身麻酔の効果が切れた時に、看護婦から9時間と大分掛かってしまった事を伝えられました。

麻酔から覚醒した直後、と言うのは手術台の上でだったが、喉に異変が感じられ、一瞬歌っている自分が頭の中に現れました。
次の瞬間目が覚めて、看護婦に
『手術自体は成功しましたが、体の方が今非常に危険な状態です。酸素を注入する管を口に入れます。』

と言われて、管を無理矢理喉の奥に突っ込まれ、喉の奥を傷つけました。その後、息しないで!と言われて、口にプラスチックのマスクを装着させられ、グッと抑えられて、無理矢理息が出来ない状態にさせられました。恐らく酸素を体内に充満させる為でしょうが、それを二回させられ、そんな時にそこまで頭が回る訳もなく、殺されると思い、マスクを抑える手を離して貰おうと、退け払ったんだかトントン叩いたんだか、どちらかの行動を取りました。

なんだか目の周りも、手が自由に動かせなかったし、先程の行動は本能的にやった行動なので、目がショボショボして、明かりが眩しい為に出て来た涙も拭う気力が無くて、どうしたもんかと思っていると看護婦さんが寄って来て、目の周りを拭いてくれました。それで看護婦さんが、

『凄く危険な状態は脱したんですけど、血圧が非常に高く危険な状態で、先程の酸素不足の影響で心臓が無理をしてしまったので肺に水が溜まってしまいました。血圧を下げるのと肺に溜まった水を取る事をしなければいけないので、急遽、ICU(集中治療室)に入っていただきます。』


そう言われて若干の、手術室からICUに移動する為の準備時間が多少出来て、その時誰にも話しかけられないので1人で黙って考える時間になってしまい、心の内でずっと

(集中治療室!?普通の病室に戻って数日で帰る予定だったのに...でも集中治療室って事は下手すると死ぬ可能性があるって事だよね、、、この現状の精神状態を悪い方向に行かせない為に吐いている何かしらの嘘だったらどうしよう、、、嫌だ、死にたく無い、死にたく無い、死にたく無い、まだ、好きな人に好きだと伝えていないで死ぬ可能性があるのか?
その場合があるなら、こんな事になるなら、恋仲になりたいと、振られても良いから、振られても良いから、其れでも私の好きな人は私を振って人生を歩んで行くんだから、もしも死ぬなら死ぬ前に伝えたかった、、、クソ、、、)

本気で思いました。

気持ちが暗くなると死にたいと思う癖に、何度か前に告白して振られて、失意のどん底に突き落とされ、傷心の余りに、もう人を好きになりたく無い、こんな気持ちに又なる位なら、一生女性と縁がなくてもマシだ。  

本気でそう考えて居た自分が、いざ死ぬかも知れない時に自分の中に沸き起こった感情には本当に驚かされました。動物の本能的な所には、失恋の時の心の傷なんか吹き飛ばして、新たに自分の気持ちにモタモタして居た自分を本気で恥じて後悔するなんて思いませんでした。

コレが死ぬ前の未練と言う感情なんだなと、本能を少し恐ろしく思いました。
人生観がガラリと変わって、これからはもう未練の無い様に生きようと考えました。

あの時自分に起きた感情を、魂の叫び声と呼んでいます。

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