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上野あたり 弥生美術館から谷中へ

 不忍池にそって10分ほど歩くと、弥生美術館です。バレエ漫画アラベスクで有名な漫画家、山岸凉子の展覧会から、気になっていたところです。展示は夏のあいだ、京都の漫画美術館に巡回しているようです。

 今回の展示のスタイル画の元祖、長沢節については、セツモードという画塾で多くの弟子を育てたこと、戦前の美術家の集団、池袋モンパルナスの頃からのひとであること。そして、その頃から描き方は変わらないことを知りました。また、改めて、昭和初期までに、多くの現代の文化的基本はできたのだと、改めて確認した感じです。

 弥生美術館は、高畠華宵の個人コレクションからはじまったらしく、たくさんの名品の展示がありました。私は、彼のユニセックスな女性像が、好みではないのですが、かつて、ふらっと寄った町田文学館で回顧展を見ていたので、ご縁を感じます。竹久夢二もたくさんあります。どちらも膨大で多様なスタイルをこなしているのが印象的でした。

夢二のどくだみの一筆箋がありました。谷間にある、このあたりのひとに、懐かしい花なんですね。付属のカフェで一休みして、谷中の朝倉塑造館に行ってみたいと思いました。ゆっくり歩くと一時間ぐらいです。

 途中、千駄木の、千代紙で有名な、江戸時代からの老舗、いせ辰によりました。ここ、好きなんです。河鍋暁斎、竹久夢二が考えた図案もあります。だから、一枚、千円以上するものも多く、決して、お安くない。美しい千代紙に見惚れていると、店員さんが、新しい色で擦りましたと、ブックカバーになんかどうですかと、幾何学模様の伝統柄をすすめてくれました。4枚で五百円ほど。こういった気さくなところも好きなんですね。たまに来てても、素通りだった彫刻家、朝倉文夫の私邸あと、朝倉彫塑館にいってみます。

 ちょこっと、彫刻が置いてあるだけだろうと舐めていましたが、建物が、すばらしいです。岩崎邸がお金持ちの良心だとしたら、アートの具現化された場所です。料亭ができるほどの広さなのですが、建具、壁、手抜きなし。置いていある壺とか、掛け軸も美術館クラス。

 l美術の私塾をしていて、多くのひとが訪れたようです。これだけの美的な環境にそだった、娘さんの朝倉摂が、のちに、蜷川幸雄の舞台美術家として有名になったのも納得です。家のまんなかに湧き水をやりまわした現代的な庭があり、それも素敵でした。猫をたくさん飼ったり、蘭をコレクションしたり、経済的に、ものすごく成功したひとなんだな。それについて、悪びれていないのが、かっこいい。

 帰りは近くの日暮里駅から上野駅へ、駅でお弁当を買って、ビジネスホテルに泊まりました。まだ、雨はしょぼしょぼ降っていましたが、明日はやむとのことでした。続きます。

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