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好きな小説5

柴原友香の「その街の今は」は大阪での青春を描いた小説だ。
私はこの一作しか読んでない。たぶん、彼女のファンはもっとこれがいいというのがあると思う。
だから、語るにはちょっとおこがましい感じがするのだ。

しかし、寂れきった上町台地を歩いていると、この小説になかにある写真の失われた家族の写真が蘇るのだ。

私は若い頃、本町界隈でバイトしたことがあるので、ヒロインが働くあたりに既視感がある。彼女の働き方なんかみてると就職氷河期がはじまったころの古い秩序の働き方と、まだ、それでも周りがなんとしよとしてた景気が悪かった時代に青春があったのだなって思う。

今はどうなのかな。若い人は生活に追われすぎな感じがするが。
昔の人はもっとのんびりしていたように思う。
その中に暴力や野蛮は潜んでいたと思うけど。
彼女の小説の中でも若くしていなくなった人は出てくる。

しかし、大学時代の半分は就活とかどうかしていると思う。

この小説の魅力は何層にも重ねられた土地の歴史の重なりだと思う。
古い写真を集めるヒロインは作者の一部だと思う。

私が柴崎友香を知ったのは大阪心斎橋大丸の改装を悲しむ姿だった。
古いものは失われていいと思う。
しかし、その中の美しいものは何らかの形で残してほしいと思う。

幾層もつらなる歴史の層、そういえば、大阪の文壇的なものも無くなったなあと思う。関西在住でも作家として食べていける人がかつていた。

田辺聖子と司馬遼太郎が文学仲間だったりした。
戦前は同人誌といえば文学だったし、大学卒業するような人しか文章に長けていなかったりしたので、付き合いが狭かったっていうこともある。
そのいやらしさもあっとは思う。東京でも文壇的なものは絶滅した。

しかし、ローカルな関西弁を駆使した文学集団は私にとっては土地への誇りと身近に人の気持がわかる人が潜んでいるという安心感があった。

人気作家の西加奈子や川上未映子とか関西弁が使える作家はいく人かいる。しかし、柴崎友香自身が言っていたように大阪の雑誌もないし、読みてもいなくなって食べれない。皆東京に行ってしまった。

これは他の地域でも起こっていることなんだと思う。幾層にも重なっている人の営みがたちぎられていく。それは戦争に近いことなんだと思う。

これで10作。
このランキングは気分なので入れ替わるような気ままなものだ。
私も20代までは小説がバンバン読めたけど、今は読めない。
田辺聖子なんかは新作を読めたな。

世の中にいろんなコンテンツが増えたってこともあるし。生活大変だし。
バルザックあたりから始まった。ライブ感のある近代文学の時代は終わったと思うし。時代小説なんか週刊だったりした時代は戻ってこないと思う。

うん、でも、言葉はまだある。





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