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映画「女王陛下のお気に入り」

 配役とアカデミー衣装賞をもらった斬新な衣装が気になってた映画です。元々、映画館で見るつもりだったんですが、見そびれてたのもあって、大枚300円を投じて(ケチなんで)見ました。この映画は大画面で見たかったなあ。

 デニムや皮といった材料で今風のデザインにアレンジされた時代衣装は、ほんと美しいです。でも、なによりゴージャスなお城での撮影で、黒や紺といったモノトーンの衣装で役者の存在がきわだつのですね。本来のカラフルな衣装だと人物がぼやけるし、画面が散漫になりがちです。それで色調を落として格調を出している時代ものが多いですけど、明暗のコントラスで新しい挑戦をしています。画面が絵画として表現されています。

 で、「女王陛下のお気に入り」のストーリーですけど、不幸でブスな女王さまとその不遇時代を支えた飛び切り頭のいい女官と、その親族で不幸でひねくれ切った侍女との愛憎物語です。

 女官は政治能力もあって、だからこそ、頭がよくない女王を叱り飛ばしたりします。もちろん、彼女の王族の隅っこな境遇を支えた、身分が低かった女官は同志しとして彼女を愛しています。また、何度お産しても、子供が産めない体をしてる彼女の不幸にも同情してる。でも、能力が高い夫と子供たちを何よりも愛しているので、彼女を利用しているのです。そこにねじくれた侍女がつけこむ余地があるわけです。彼女はたくさんのうさぎを室内で飼っている女王のバカげた趣味をばかにしている。でも、たくさんの不幸を知っている侍女には、その真意がわかるのです。

 女王を舞台の名女優のオリヴィア・コールマンが演じています。彼女はこれでアカデミー主演女優賞をさらってますね。レイチェル・ワイズが品格のある女官を演じています。ハムナプトラからのキャリアの底力です。侍女はエマ・ストーン、アカデミー主演女優賞を乗り越えた演技でした。この演技合戦がたまらなく楽しいです。一人の人間の感情で極端に境遇が動くという、時代ものだから表現できることを新しく表現する、そういう冒険心のある映画でした。

 史実では、女王は戦争がきらいという素朴な気持ちで、夫に戦争で功績をあげさせたい女官のエゴを押し切って、フランスとの戦争をやめたことを記しておきます。でも、事実として、そこには彼女の愛憎の問題もあったでしょっというドラマです。そして、人間って面白いでしょうっていう映画です。


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