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私が好きな詩6

春よ来い
お正月と云えば
炬燵を囲んで
お雑煮を食べながら
歌留多を していたものです
今年は一人ぼっちで
年を迎えたんです
除夜の鐘が寂しすぎ
耳を押えてました

アルバム「はっぴぃえんど」
「春よ来い」

作詞 松本隆
作曲 大瀧詠一

 今回は歌詞です。記憶に残る歌なら詩なんだと思う。

 YMOがはやっていたのとき大瀧詠一と細野晴臣が結成した伝説のバンド「はっぴえんど」があったと知り、手に取ってみた。デビューアルバムの「はっぴえんど」の最初の曲、お正月の風景から始まる「春よ来い」です。
 
 ごつごつとしたロックに不器用にねじ込んだ日本語、この辺りから日本語が欧米の音楽の消化を始めたのか。

 お正月の雑煮といった血の系譜でつながる家族の風景からひとりになる。個として生きる決意をのべた始まりの曲です。恵まれた家庭に育った本読む青年、松本隆が歌詞に初挑戦しています。
 この歌は彼の気持ちというよりは新しいものを作りたいと音楽の世界に飛び込んだ彼らの総意の歌です。

「はっぴえんど」は過去からのしがらみを抱えた家庭から精神的に家出した青年たちのバンドです。少しのあいだ群れを作って自分たちを守る。それを確信犯的にやってみた、そんな感じがします。
 青森の貧しい母子家庭に育ち古い伝統音楽の背景をもった大瀧詠一が、才能ある青年たちを自分の求める新しい音楽世界にいざなう。そういう誘惑のエロスが感じられるから、この曲は強烈に響きました。
 

 このバンドの曲はアルバム「風街ろまん」の松本隆作詞、細野晴臣作曲の「風をあつめて」が人の心にじわじわと残っています。東京という都市育ちの細野と松本の個人的な体験を踏まえたひとりだちの曲として素晴らしい。
 

 でも、私は「はっぴいえんど」の曲としてはこれなんだな。お正月になると思わず口ずさんでしまいます。はたして、春は来たのかな。それとも夢中になっているうちに夏になってしまったのかな。
 


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