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仕事の先延ばしグセと、黒澤明も描いたその先にある本当の問題についてのTEDトーク

9月末から私はコーチングのランセンス取得のためのトレーニングを受けることになっている。(「なっている」というのはまるで他人事みたいな逃げ腰の表現で、すでにそこにちょっとした私の生きる姿勢についての情報も詰まっているのだけど)いずれにせよ、自分で決めたことだ。このコースではライセンス取得までの間に合計100時間に渡るコーチング実績を積む必要があって、「どなたか、私のコーチングを受けてくれませんか。お代は、コーヒー一杯分で良いのでぜひ!」と声をかける必要があった。5人のクライアントをコース開始前にまずは見つておくように、と説明資料にある。となれば、さっさと心当たりの知人にメッセージを送ればいいというのが理性的な考えなのは十分にわかっている。

なのに!!

なんとワカメったら申し込んでからの4週間もの間、山梨や香川に行ったりうどん食べたり酔っ払ったりサウナに入ったりしながら、毎日この宿題を先送りにしまくった。

「いよいよ、やばい。そろそろ5人を見つけないと、二日後のオリエンテーションで叱られてしまうワカメ」なんて子供みたいな焦りを感じた昨夜、やっと全身の勇気をかき集め(大袈裟)、Facebookの実名アカウントでクライアント募集の投稿をした。たかが200文字程度の草稿には45分もかけた。我ながら何を躊躇しているのかわからない。どうかしている。

これがもし自分の部下だったら、「もうさー、完璧じゃない仕事するのが気持ち悪いの私も知ってるんだけど、全力で適当にやってくれない?終わらせることの方が大事ってあるんだよ、この世界には」なんて、吸わないタバコをふかしながら言ってしまう場面である。ああ、でもそんなことを言うから私は嫌われるのだと言うことも今この瞬間ならわかる。ほんとうにごめんなさい。

そして、震える手でFacebook投稿ボタンを押した結果、2時間くらいの間に5件以上の反応をいただき、ありがたいことに私の宿題はあっけなく完了となった。でも、宿題が期限内に終えられたからオッケー、なのだろうか?この4週間の間、毎晩歯を磨きながら「ああ、明日こそは・・・やるのだ・・・」って思っていた後ろめたさや、毎朝起きた時の心の重しに何か果たして価値なんてあったんだろうか。

いや、、、絶対に、ない。と言うことで以下は反省の弁。

私には、先延ばしグセがある。実は2023年の年賀状さえ返せていない。

今回のことだけじゃない。私の先延ばしグセは随所で起きる。例えば2023年のお正月にいただいた、たった4枚の年賀状を、9月4日現在1通も返信できていない。うち一名にはある4月の早朝に渋谷の路上でばったり遭遇してしまって「あわわわわわ。年賀状が返せてなくてこんにちはあわわわわ」と言いながら怪しいカニ歩きをしてしまったほどだ。そして5月頃には、「遅ればせながら、明けまして・・・」と書こうと思い立ち、LOFTで可愛いスズランの絵柄のハガキ5枚セットを買った。なのにやはり書けず、投函できず仕舞いで、もはや9月になってスズランの季節はとうに去ってしまった。スズランを塗りつぶすように鈴虫と満月でも上から書き込めばいいのかもしれないが、そんな画才もない。こうなったらクリスマスカードまで待とうか、いやそれさえもできるかどうか怪しいと思うと毎晩安眠できない。

ちなみに私は一応肩書き上ワーキングマザーではあるけれど、そしてバレると余計なことを頼まれそうで隠しているけれど、全然忙しくなんてない。子どもたちが小学校に上がった頃から一気に楽になった。たまに数週間仕事が立て込む時期があっても、年間通してみたらむしろ暇な方だと思う。そのせいじゃないけどTiktok中毒だし、林真理子も先月だけで三冊読んだりしているうちに時間は埋まってしまうが、年賀状を返せないような忙しさの言い訳なんて、持ち合わせていない。

職場でも、しょっちゅう先延ばしグセを発揮している。

自慢するようなことではないのだけど、ぐずぐずして、なかなか取りかかれない仕事が常にいくつもある。代表的なのは経費精算、査定のフィードバック文章の作成、長期のビジネス計画書の作成など。幸い、会社の仕事は大抵は期限があるので「うわうわうわうわやばいやばいやばいやばい」と一人で騒ぎながらギリギリになってから必死で取り組むことで乗り切っている。でもどう考えても、心臓に悪いし、多分周囲からの信頼もちょっと損ねていると思う。

TED Talkで賢い人(ティム・アーバン)の意見を聞いてみた。

この先延ばしグセは、もしかすると私が怠惰なせいじゃなくて病気なのかもしれないと思って(なわけない)検索しているうちにこんな動画にたどり着いた。TED Talkで英語だけど、右側に日本語字幕も付いているし、お話がすごく面白いので似たようなお悩みを抱える方がいらしたらぜひ見ていただきたい。

ティム・アーバンによると先延ばしぐせのある人の頭の中には3人の役者がいるらしい。(判断者、猿、モンスター)

  • 理性的な判断者(さっさと仕事しなさいよ、締め切り考えると今日の仕事はこれくらいが妥当よ、というまともな人)

  • 即効性のある快楽を追求する猿(気がつくとTiktokとYouTubeの沼に私を誘う人。あるいは部屋の掃除を始めさせる人。インスタント・グラティフィケーション・モンキー)

  • パニックモンスター(普段は眠っているのに、期限が迫ると騒ぎ出して体を突き動かし、ギリギリで締切を守らせる人)

この3者によって私たちの先延ばし劇場は繰り広げられるという。特に、二番目の「即効性のある快楽を追求する猿」が締切を意識し始めた私たちをYouTubeや深夜の冷蔵庫の掃除に誘うわけだ。わかる。わかりすぎる。

ただ、ティム・バートン曰く、実は期限があるタスクについてはパニックモンスターが活躍してくれるからある意味なんとかなるという。今回の私のコーチングクライアント探しもそうで、「このままだとやばい!」とパニックになると体が動き出す。

本当の問題は、期限がないテーマ(人生で果たしたい夢、実現したい人間関係、などなど)を先送りにしてしまうこと。

これがこの動画の一番のポイントなのだけど、決まった期限がないと、原動力のパニックモンスターが発動しないから、あなたは大切なものを実現する時間を時々刻々と失っているのだ、という。例えばある人にとってはそれは起業準備だったり、パートナー探しだったり、海外への移住だったり、別に誰かが期限を設定してくるわけではないけれど、本当は自分が大切だと思っていること。

昨日書いたゾン100も、黒澤明監督の「生きる」も、扱っているテーマは同じだ。

「あなたの残された命は長くない」なかで

「あなたが、先送りしている、本当に大切なことはなんですか?」

と問うてくる。

「それは、スマホでSNSを見ることですか?」

(絶対違う!!!こわ!!)

残念ながら、このTED Talkは解決策は提示してくれない。残してくれるのは、期限がないと思ってずっと先送りしていることについての、この問いだけ。

そして、どうでもいい情報だけれども、この投稿も本日中に本当は仕上げなくちゃいけない仕事の来期計画資料を先延ばしにしつつ、即効性の快楽を求めて書いていることを、付け加えておく。投稿ボタンを押した時の感覚はまさにインスタントな快感で、私の中の猿は、今日も元気にしております。



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