【アトリエエンヤ】早稲田学報4月号表紙イラストを担当しました
2020年3月16日発行の早稲田学報4月号の表紙イラストを担当しました。早稲田学報とは、早稲田大学校友会が発行するコミュニケーション誌。校友会費を納入している早稲田大学のOBや定期購読を申し込んでいる方の自宅に届けられるほか、キャンパスの書店などで販売されています。お話をいただいたのは昨年の暮れ。2019年に早稲田キャンパスの中央図書館を改修したことを機に「進化する図書館」として新たな図書館を特集するため、図書館を銭湯図解風に描いて欲しいというご依頼でした。早稲田ウィークリーや早稲田大学 by AERAなど、複数の記事で早稲田大学に取材協力をしてきましたが、インタビューだけでなく一人のクリエイターとして母校とお仕事ができることが心より嬉しく、二つ返事でアトリエエンヤの初めてのお仕事としてお引き受けしました。
早速、打ち合わせと取材のため、中央図書館へ。中央図書館がある早稲田キャンパス(学生は本キャンパスと呼んでました)は建築学科がある西早稲田キャンパスからやや離れていたため、学生当時は中央図書館に頻繁には訪れておりませんでしたが、卒業論文を書き進める際に文献を探しにきたり、院生が使用できる個室を利用して修士設計の研究を進めたりと、様々な思い出があります。
学生当時の中央図書館は、書架がずらっと並び、音を立てるのも躊躇するような静謐な図書館というイメージでしたが、久々に訪れた図書館はその真逆の空間でした。新しい中央図書館は、早稲田大学の掲げる理念の一つ「対話型、問題発見・解決型教育への移行」を支える施設として、ラーニングコモンズ(学生同士が主体的に話し合いながら学習することができる場所や施設)の場と図書館らしい静かな場が併存することを目的に作られました。友達とおしゃべりを楽しめるカフェのような場所から、集中して勉学に向き合える静かな空間まで、その所によって過ごし方が選択できる、濃淡のついた空間が実現されています。自分が学生だったら、遠いキャンパスでも足を伸ばして過ごしたのになあ、、と思わず嫉妬を覚えるほど。今の図書館で研究していたら、研究の成果はさらに上がっていたかもしれません。
図書館内で写真撮影と実測を終え、表紙のレイアウトへ。ご依頼くださった校友会の方から「書架とコモンズエリアが両方見えるレイアウト」「コモンズエリアやグループ学習エリアの人の様子が分かるように」などのご要望をいただき、図書館の受付を入ってすぐにあるコモンズエリアを中心に描くことになりました。
下書きがこちら。縮尺は1/130程度。手前の部屋はグループ学習室と呼ばれ、プレゼンの練習やホワイトボードを使ってのディスカッションも可能です。その奥がコモンズエリアと呼ばれる、グループのディスカッションから個人学習まで広く使える空間。そして奥に書架が並ぶ構成です。B5サイズに収まる構図、人の動きが見えること、加えて書架を入れつつ、学習室もいれるというのがレイアウト上なかなか難しい作業でした。この角度でやると書架が見えない、あの角度にすると学習室が見えないと、回転させたり縮尺を変えたりとレイアウト時点で相当時間がかかりました。苦労した甲斐もあり、こちらのレイアウトで一度チェックいただいたところ、人数をちょっと調整すればOKとすんなり通りました。よかった‥
お次はペン入れ。トレス台に置いて、厚手の水彩紙にトレス作業を行います。スケールを崩さず人を描き分けるのも大変でしたが、何より苦労したのは書架の本。図書館なのに本が少ないとなっては台無しなので、できるだけ実際のサイズに合わせ、本がギッチリ詰まっている表現を努めました。大体5~7時間ほどかかりました。
着彩作業。実際の色合いに寄せて細かい部分まで描いていきます。「アイソメトリック」という斜め上からの視点で絵を描いているので、床の色合いが強く出てきます。普段は床を注意深くみることはないですが、こうしてみると床の色って相当印象づけるんですよね。
苦労したのがこのカーペット。茶色地にピンクとグレーのストライプが入っています。これを水彩でどのように描くのか?
①最初に茶色の下地を塗ってからピンクとグレーを乗せる
→描きやすいが、ピンクとグレーが薄くなって全体的にぼやける
②ストライプを描いてからその隙間に茶色を乗せる
→全体の色合いが活きてくるが、手間がかかる
2つの方法を実際にテストした結果、最終的に②で進めていきました。画像にあるように、先にピンクとネズミ色のストライプを描いてから茶色で隙間を埋めていきます。
着彩終わり。書庫の本の色分けもちょっと大変でした。賑やかになるかな?と描く前は思っていましたが、カーペットが落ち着いた色合いだったので全体的に暗めになりました。水彩は描き始めてみると印象が変わることがあり、生き物のようです。
色校正の際に明るさを調整し、デザイナーさんに文字入れをしていただいて完成!!!!!文字が入ると途端に表紙っぽさが出てきて感動しました。こちらの学報は校友会費を納入している早稲田大学のOBの方々、定期購読を申し込んでいる方に届けられることとなります。そのほか、キャンパス内でも販売されるそうなので、現役生のみんなも手に取ってくれるといいな。
早稲田に入学し、早稲田の自由な校風の中で6年間建築と絵を勉強できたからこそ今の私があると常々感じています。今の自分を培ってきた早稲田大学にイラストという形で恩返しができて本当に嬉しかったです。この場を借りて、このようなお仕事をくださったこと、改めて心よりお礼申し上げます。イラストで少しでも母校に貢献できたのなら、幸いに存じます。
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