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推し活、イベントの待ち時間が価値になる!「Machiwabi(マチワビ)」 ―enXross AWARD最優秀賞受賞インタビュー・MeTown

皆さん、こんにちは。
enXross事務局です。
 
日本最大級のエンターテインメントシティ・東京ドームシティの新プロジェクトenXross(エンクロス)は、デジタル技術を活用した経済圏創出や、お客さまの感動体験アップデートの実現を目指すプロジェクトです。
 
こちらのnoteでは、世界のエンターテインメントとイノベーションの交差点・enXrossがテーマとする、web3などの先端テクノロジーやエンターテインメント領域の最新動向、プロジェクトに参画するさまざまな方の声などをお伝えします。
 
今回は、2023年12月19日に開催されたenXross AWARDで、みごと最優秀賞を受賞したMeTown株式会社・代表取締役の田中一弘さんに、受賞アイデア「Machiwabi(マチワビ)」の構想とweb3の可能性についてうかがいました。


田中 一弘(たなか・かずひろ)
MeTown株式会社 代表取締役

1989年、北海道生まれ。高校生の時に、北海道夕張市の財政破綻を目の当たりにしたことをきっかけに地方創生を志す。2012年に慶應義塾大学総合政策学部卒業、2018年に九州大学生物資源環境科学府修士課程修了。2023年1月にMeTown株式会社を設立。

地方創生にweb3をかけ合わせる、「夕張メロンNFT」での体験


― このたびはenXross AWARDでの最優秀賞受賞、おめでとうございます!MeTownは2023年創業とのことですが、田中さんは元々web3領域にいらしたのですか。


田中さん 大学時代は農業や地方創生などの領域にいて、エンジニア出身ではないのですが、リアルなものにテクノロジーをかけ合わせて何ができるか、という問いは当時からもっていました。起業する前は金融業界でスタートアップに投資する業務を担当していました。

web3やブロックチェーンを知ったのは2021年末から2022年中盤ごろです。
オードリー・タンさんを入口に、伊藤穰一さんのポッドキャストを聞くようになり、日本でも山古志DAOという地方創生プロジェクトがあると知りました。出身の北海道で地方創生をしたかったので、web3のテクノロジーを応用したらどうなるのかとワクワクしたんです。

先行例のエッセンスを取り入れながら、夕張メロンを育てている仲間と一緒に「夕張メロンNFT」というプロジェクトを始め、そのタイミングで起業しました。

― 「夕張メロンNFT」は、どんなプロジェクトなのですか?

田中さん 夕張メロンのファンの輪を広げるオンラインコミュニティです。「会員証NFT」を購入すると、夕張メロンのデジタルアンバサダーになれる権利と、夕張メロン1玉を受け取れる権利がもらえます。

ファンを広げる活動をしたことをコミュニティで投稿すると、コミュニティメンバーからミツバチスタンプが押され、これがミツバチトークンに変換され貯めると、自分が受け取れる予定のメロンの糖度がアップします。特に貢献した人に一番甘いメロンが届くという構造で、とても盛り上がりました。

夕張市の今の人口は7000人ほどですが、2022年から始まった夕張市の公式X(旧Twitter)には、4.9万ものフォロワーがついています。こうした方々がメロンのNFTも買ってくれていて、オンライン上での交流やコミュニティの構造に面白さや可能性を感じました。


「夕張メロンNFT」は、夕張メロンのファンを広げるオンラインコミュニティ。
ふるさと納税の寄付を通じてNFTを受け取ると、デジタルアンバサダーになる権利と
メロン1玉を受け取る権利が得られる

オンラインコミュニティにweb3を入れて「待ち時間」のペインを解決


― 今回提案されたアイデア「Machiwabi(マチワビ)」について教えてください。

 
田中さん 「Machiwabi」は、NFTを活用して推し活などのイベントでの「待ち時間」を楽しく過ごせるように転換するアイデアです。

MeTownがenXross AWARDで提案した「Machiwabi(マチワビ)」は、
NFTを活用したイベントの整理券アプリケーションのアイデア。これまで価値とは
捉えられなかった待ち時間を、イベントをより楽しむための価値ある時間に転換する


田中さん イベントの参加者にNFTを発行し、会場で待ったり、自作のグッズを作ったりなど、イベントを盛り上げる・楽しむことにかけた時間を推しとの握手時間などの特別な体験に交換できるようにしたいと考えています。

このアイデアの背景には、夕張メロンNFTでの成功体験がありました。夕張では200〜300人規模のコミュニティで、地域のファンづくりを行い、人口が減っている場所にどうデジタル上の空間にファンを連れてくるかという考えでした。enXross AWARDの話を聞いたとき、東京ドームでの数万人規模のファンコミュニティで、この仕組みを実装したら何が起きるだろうとドキドキし、応募することを決意しました。

「Machiwabi」では、NFT獲得にあえて物理形式のカードを使用する想定。
従来のイベントでは記念としてコレクションされることも多かった
「チケット半券」に代わるものをNFTと紐付けるという、ファン心理を熟知したアイデアだ


カードをスマホにタッチさせることでNFTが獲得できる

イベントに参加する「プロセス」を大切に、コミュニティへの貢献をビジュアライズする


― Machiwabiのアイデアの独自性や、大切にしている考えを教えてください。

 
田中さん 今回、enXross応募にあたってまず考えたのは、「東京ドームで」という条件です。地方創生では、人口が減少するところに人を集めることが難しいと言う課題でしたが、今回は逆に、人が多すぎるというペインを解決するために何ができるか、という方向で発想しました。

Machiwabiで大事にしたいのは、一人ひとりのイベントへの貢献をビジュアライズすることです。イベントの参加証明としてNFTが配布されることがありますが、イベントに参加するプロセス全体でどれだけ貢献したかを可視化することも重要だと思っています。
 
― イベントを企画する側だけでなく、参加者もイベントに貢献するということですか。
 
田中さん 従来の提供者がいて消費者がいるという構図は変わり、クリエイター・アーティストサイドとファンの立場はどんどんフラットになっていくのではないでしょうか。

今までのイベントは、クリエイター側がイベントのために頑張り、その成果を喜んでもらう形でした。ですが、イベントやものを作り上げるプロセスにも大きな価値があります。スーパーで買ってきたメロンと、長い間見守って愛着が沸いたメロンでは、食べる時の感動体験が全く違います。ファンとイベントの関係も同じです。イベント当日に盛り上がるのはもちろん、当日を待ち侘びるプロセスにも価値があります。

イベントを待ち侘びる数ヶ月の間に、いちファンとしてイベントを作り上げる貢献者になる。自分が欠けたらそのイベントの魅力も欠けると思えるような、みんなでイベントを作り上げたというグルーヴ感を表現したいんです。

― 学生の頃、文化祭が準備のときから楽しかったのを思い出します。
 
田中さん 今まで以上に「共創」が必要な時代になっていますし、そのためにはブロックチェーンが非常に便利だと思っています。今まではえも言われぬ感情だった、一緒に盛り上がるグルーヴ感をトークンで刻むことで、ビジュアライズできるのではないかと思っています。

みんなの思いの詰まった活動をトークンで表現したいですし、その貢献履歴を重み付けして残せるようにしたいです。これは技術的なチャレンジになりますが、単なるポイ活のようにしないためには重要です。

アプリケーションを通じて「待ち侘びる」日本的美意識を世界に広げる


― 最後に、今後の目標やビジョンについてお聞かせください。

 
田中さん Machiwabiが世界中で使われている未来が絶対くる、という気持ちでいます。

以前、社内でメンバーが言っていて印象的に残っているのですが、桜が散るさまも美しいと感じるような日本人特有の美意識、「侘び寂び」の感覚が世界で注目されています。Machiwabiを日本発のweb3アプリケーションとして実装できれば大きな意義があるはずです。

僕たちが解決するのは待ち時間の課題ですが、イベント当日だけでなく、始まるまでのプロセスや終わった後の余韻の価値も表現する。侘びの精神をプロダクトの背景にある哲学、設計思想に組み込みたいと考えています。

東京ドームでビッグアーティストを待ち侘びている列に並ぶ人たちがMachiwabiを使っていたら、最高にエモいですね。

満開の桜だけでなく、散りゆく桜も愛でる日本的な美意識は海外でも
注目されている。イベントに参加するというプロセス全体のグルーヴ感
そのものを表現するのがMachiwabiが目指す世界観だ


 
― これまで以上にイベントを深く楽しみ尽くすことができそうなアプリケーションのアイデア、実現が楽しみです。本日はありがとうございました!


東京ドームシティの新プロジェクトenXrossについてはhttps://www.tokyo-dome.co.jp/enxross/をご覧ください!

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