産業領域にも広がるXR。エンタメ活用を起爆剤に社会実装につなげる ―enXross 2nd協賛企業インタビュー・PwCコンサルティング
皆さん、こんにちは。
enXross事務局です。
日本最大級のエンターテインメントシティ・東京ドームシティを舞台に、デジタル技術を活用した経済圏創出や、お客さまの感動体験アップデートの実現を目指すプロジェクトenXross(エンクロス)。
今年はXR(クロスリアリティ)をテーマに、2024年7月4日にトークセッションや企業展示などのイベントが行われます。
今回は、enXrossプラチナスポンサーであるPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)の執行役員で、新興テクノロジーやその社会実装を専門とする岩花修平さんに、XRとは何か、そしてXR市場の推移や産業応用の現状、PwCコンサルティングが提供するサービスなどについてお聞きました。
エンタメ用途だけじゃない! 実ビジネスの中で活用されはじめたXR
― 今回の「enXross 2nd」では“エンタメ×XR”をテーマにしています。関連する言葉にVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といろいろありますが、そもそもXR(クロスリアリティ)とは何なのでしょうか?
岩花さん XRとは、VR、AR、MRを総称する概念です。
VRは専用のゴーグルを付けるなどして仮想空間に入り込み、没入体験をするもの。ARは現実空間をベースに、仮想のオブジェクトを重ね合わせて表現するものを指します。
一方、MRの定義は企業によって異なり、ARに近い表現をされることも多くあります。現実空間にVR並みの仮想空間を重ね合わせて新たな世界観をつくる、という表現が私たちの認識に近いところです。
また、VRもARも、ゴーグル型デバイスが必須というわけではなく、スマートフォンやその他のデバイスでも実現可能です。
― まだ成熟途上の技術ですから、定義は不確定な部分もあるのですね。市場としては伸びているのでしょうか。
岩花さん 市場規模は、今は流動的な状況です。
過去に、当社でも市場規模の推計をしており、その際は現在の推計よりも急速な成長を予測していましたが、最近の傾向では当時より鈍化しています。これはデバイスの普及度合いなどが影響していると見ていますが、足元では着実に利用の検討が進んでおり、当社では問い合わせや相談を継続していただいています。
地に足のついた使われ方がされるようになってきたといえるでしょうか。
― 具体的にどんな使われ方がされているのですか。
岩花さん 少子高齢化の影響で高度な技能をもった熟練工が減っており、若手の採用もなかなか進まない。そういう中で、XRを活用してトレーニングやシミュレーションを行うなど、コストを少なく習熟度を上げさせ、現場対応ができる人材を増やそうというニーズがあります。さらに、生成AIと組み合わせて技術継承を実現していこうという話もあります。
例えば工場などのプラントや製造業の現場で、作業員と熟練工がリモートで文字情報や画像情報をやり取りして指示の授受を行うなど、情報の共有を行っている例もあります。
また、コロナ禍でウェブ会議は当たり前になりましたが、XRを導入することで、より密度の高いディスカッションを行っている事例もあります。さらに、美術品などを遠隔地で見られるようにする、インテリアの配置をシミュレーションする、変わったところでは、これまでは教科書で見ていたような歴史的建造物などをVRで体験できるようにするといった活用法もあります。
もともとはエンタメやコミュニケーションに利用する例が多かったですが、実ビジネスでの利用がかなり増えてきていると感じています。
産業別専門チームが各業界・業務の特性をおさえた多面的支援を展開
― PwCは世界151カ国に展開する世界最大級のプロフェッショナルサービスファームです。XRについてのサービスも提供しているそうですね。
岩花さん PwCコンサルティングでは7年ほど前からXR関連のサービスを提供しています。
個々のクライアントの要件に応じたコンテンツづくりはもちろん、私たちとしてはテクノロジーの社会実装という観点をもって動いています。
市場調査というかたちで今後の市場の見立てなどを提示し、その中でクライアントのビジネスがどう伸びていくのかを考察するほか、そこから一歩踏み込んで、事業検討を行ううえで必要なビジネスモデルの検討から、事業計画への落とし込みまでサポートさせていただいています。
もちろん、取り組みの前提となる情報提供やグローバルの調査なども行っています。
― XRのような新しい技術をビジネス化するには、検討・検証しなければいけないことが多そうです。
岩花さん そうですね。技術が有効か、ビジネスとして成り立つかを読むことは難しいので、技術や事業性の検証などもサポートさせていただいています。
そのうえで、実装や導入、事業として進めていくうえでのオペレーションをワンストップで多面的にご支援しているのがPwCコンサルティングのサービスの特徴です。
― 計画段階から導入、運用に至るまでの取り組み全体を通じてサポートされているわけですね。
岩花さん はい。XRを事業化する際にはどういったツールを使うかという点も重要です。
私たちはツールベンダーではないので、クライアントの業務特性やビジネスを考えたときに最適なツールを中立的な立場で評価させていただいています。
また、見落としがちな点としてコンプライアンスやガバナンス、品質管理といったマネジメントに関するお話をさせていただいたり、セキュリティのアセスメントを行ったりもしています。それから、新しいテクノロジーについてはどう定着させるかが課題となるので、意識改革についての検討などもさせていただいています。こういったさまざまな観点をある程度パッケージでご提供できる点はポイントだと思っています。
PwCコンサルティングでは、産業別に専門のコンサルティングチームが組成されています。各業界の特性や、現場特有の業務などを熟知したメンバーが在籍していますので、より有効な打ち手をご提案できると考えています。
XRは万能なテクノロジーではありません。業界や業務の特性を踏まえて、どういうアプローチをとるべきかという観点でサポートさせていただいています。
― 現状、どんな業界でXRの導入意欲が高いですか。
岩花さん 製造業、また、エネルギー系など大きなインフラをもつ業界は導入に対して積極的です。もちろん、エンタメ領域も多いですね。製造業・インフラ系企業は現場活用という目線で、エンタメ系企業は事業戦略的な目線での支援が多いです。
また、自治体でも、観光資源活用や交流人口増加のためにメタバースを活用するケースが増えており、その中でXRも活用したいというお話をいただくこともあります。
「エンタメ×XR」の発信が世の中にXRを浸透させていく
― PwCコンサルティングは今回、enXrossへ2回目の協賛となります。製造業など実ビジネスにも広がりつつあるXRを、エンタメという観点で取り上げるenXross 2ndへの期待をお聞かせください。
岩花さん はじめに、市場の伸びが鈍化していると説明しましたが、だからといって今後XR市場が落ちていくとは思っていません。
伸びていない原因は明確で、1つはデバイスの使いやすさや表現の幅などの技術的課題で、もう1つは人々の受容性です。その点、今年はじめにCES(世界最大級の電子機器見本市)を視察に訪れたところ、小型化や軽量化が進んだAR/VRゴーグルなどのデバイスが展示されていましたので、遠くない未来に市場に出回ることが想定されます。
デバイスの問題が解決されてくれば、次は人や社会が受け入れるかどうかです。便利、安全といった社会受容性の向上に最も貢献する領域は、やっぱりエンタメかなと思いますし、エンタメ領域で魅力的なXRコンテンツが発信され、世の中にXRの価値が示されることは非常に重要だと思っています。
enXross 2ndは、そういう1つのきっかけになるイベントとして、期待をもって協賛させていただいています。
― エンタメを通じてXRが普及すれば、社会が大きく変わりそうですね。本日はありがとうございました。
PwCコンサルティング XR紹介
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/disruptive-technology/xr.html
PwCコンサルティングの昨年の記事はこちらから:
「パラダイムシフトが起こる世界の中で、前例のないことにチャレンジし、日本の強みを発信する」
東京ドームシティの新プロジェクトenXrossについてはhttps://www.tokyo-dome.co.jp/enxross/をご覧ください!
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