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難化した2024北大物理 大問1(力学)

この記事では難化した2024北大物理の大問1(力学)を見ていきます。


問1 剛体(コの字物体)の運動

(1),(2)重心の座標

x,y座標を求めよということなので、一旦奥行きは無視していいようですね。
考えられる解法は2パターンでしょう。

①3つの長方形に分けてそれぞれの重心を求め、さらにその3つの重心を求める
②抜けた部分の長方形Aの重心と抜けていない場合の大きな長方形Bの重心を求める。Aとコの字型の2つの重心の重心がBの重心となる方程式を立てる

x軸y軸がすでに定められているので、これに従って各頂点の座標は決定できます。一つ一つ書いていると、時間ロスになるので以下のように場当たり的に処理していくのがいいでしょう。

まず①の解法からいきます。
こちらの方が直観的に感じる人が多いような気はしますね。

コの字の上の屋根の部分の長方形の重心の座標は$${w,h-\frac{w}{2}}$$,この部分の質量は$${\frac{屋根部分の面積}{全体の面積} \cdot m}$$で求められるので、$${\frac{2w}{h+2w}m}$$.(今回は奥行きが一定(d)なので体積で考えても結果は変わりません). できなかった場合は自分で手を動かして合うまで計算してみましょう。
中間部分の長方形の重心の座標は$${\frac{w}{2},\frac{h}{2}}$$,この部分の質量は$${\frac{h-2w}{h+2w}m}$$. 
下の部分の長方形の重心の座標は$${w,\frac{w}{2}}$$, この部分の質量は$${\frac{2w}{h+2w}m}$$(屋根部分と同じ).

これらは質量が均質であるという条件からテキパキ一瞬で出せるように練習する必要があります。

これら3つの重心の重心が求める座標です。
$${x_G=\frac{\frac{2w}{h+2w}mw+\frac{h-2w}{h+2w}m \cdot \frac{w}{2}+\frac{2w}{h+2w}mw}{m}=\frac{w(h+6w)}{2(h+2w)}}$$
$${y_G=\frac{h}{2}}$$
y座標については均質性から計算するまでもなく求まりますので、考慮すべきはx座標だけで良かったのですね。
ベストな立ち回りは(2)y座標を瞬殺して、x座標だけ考慮して計算するという手順でしょう。

次に②の解法についても見ていきましょう。
(2)のy座標は均質性から一瞬で$${\frac{h}{2}}$$とわかるので、今回はx座標のみに着目します。
穴を補完した長方形Aの重心のx座標は$${w}$$, この長方形の質量は$${\frac{2h}{w+2h}m}$$,
穴抜け部分の長方形Bの重心のx座標は$${\frac{3w}{2}}$$, この長方形の質量は$${\frac{w-2h}{w+2h}m}$$.

求める図形の重心と穴抜け部分の重心の重心がAの重心に相当するから、以下の方程式が成り立ちます。
$${\frac{x_Gm+\frac{w-2h}{w+2h}m\frac{3w}{2}}{m}=\frac{2h}{w+2h}mw}$$
$${x_G=\frac{w(h+6w)}{2(h+2w)}}$$

(3)力のモーメントのつりあい式

時計回りの回転成分と反時計回りの回転成分が一致するタイミングでのFを求めればOKですね。
そこで原点Oのまわりの力のモーメントを考えると、
$${F \cdot h - x_G \cdot mg=0}$$
$${F=\frac{w(h+6w)}{2h(h+2w)}mg}$$[N]

(4)静止摩擦係数の定義そのまま

今、垂直抗力は{mg}なので、静止摩擦係数を$${μ}$$とすれば
$${μmg>F}$$が成立する。(3)の結果と合わせて
$${μ>\frac{w(h+6w)}{2h(h+2w)}}$$

(5)転倒を始めた時の角度

これも(3)と同様に、転倒を始める直前、ギリギリつり合っている状態を考えればOKですね。
つり合っている剛体では働いている外力の作用線は一点で交わります。
つまりこのとき、垂直抗力の作用線は重心を通っているので、これを図示すればあとは幾何的に考えれば終わりです。

$${tanθ_c=\frac{x_G}{y_G}=\frac{w(h+6w)}{h(h+2w)}}$$

いずれも基礎が身に付いていれば難なく解ける問題でしたね。(3)-(5)の事項は「新・物理入門問題演習」の問題に同じ考え方をするものがあります。

問2 固定台を滑る質点 | 円運動・放物運動

(6)衝突直後のBの速度

重心速度の式と反発係数を用いた相対速度の2式の連立でも求められますが、やや冗長というか無駄に時間がかかるので、2体問題の定石である重心系で考えていきます。

まずは衝突直前のAの速度が必要です。今回摩擦は無視できるので、力学的エネルギー保存則により高さLの位置エネルギーが全て運動エネルギーに変換されたと考えれば
$${mgL=\frac{m}{2}v_A^2}$$
$${v_A=\sqrt{2gL}}$$

ここから重心系で考えていきます。
衝突問題なので重心速度は一定で
$${v_G=\frac{m \cdot v_A}{3m}=\frac{v_A}{3}}$$
まだ弾性衝突より相対速度は変化せず$${v_{rel}=v_A}$$
重心から見たA,Bの速度は質量の逆比になるので、
$${v_{GB}=\frac{1}{3}v_{rel}}$$
よって
$${v_B=v_G+v_{GB}=\frac{2}{3}v_A=\frac{2\sqrt{2gL}}{3}}$$

このように書くとかなり冗長に見えますが、慣れていれば10秒くらいで瞬殺してしまえる問題です。
(重心系による解法については別記事作成中です)

(7)台から飛び出すための角度の条件

これもエネルギーを考えるのが良さそうです。
(6)の時点で得た運動エネルギーが全て位置エネルギーに変換され、なお余剰が残る(運動エネルギー(速度)が残る)ことを不等式で表現すれば
$${\frac{m}{2}v_B^2-2L(1-cosθ)g>0}$$
$${cosθ>\frac{5}{9}}$$

(8)飛び出す場合のRにおける速さ

(7)の$${\frac{m}{2}v_B^2-2L(1-cosθ)g}$$が点RにおけるBの運動エネルギーなので、点Rにおける速度を$${v_R}$$とすれば
$${\frac{m}{2}v_R^2=\frac{m}{2}v_B^2-2L(1-cosθ)g}$$
$${v_R=\sqrt{2gL(cosθ-\frac{5}{9})}}$$

(9)放物運動の最高点の高さ

放り出された直後の運動方程式を考えます。
今回は最高点を求めるだけなのでy方向のみを考えましょう。鉛直上向きを正として
$${2ma_y=-2mg}$$
$${a=-g}$$

また初速$${v_Rsinθ}$$, 初期位置$${y_0=L(1-cosθ)}$$より
$${v_y=v_Rsinθ-gt}$$
$${y=L(1-cosθ)+v_Rsinθ \cdot t-\frac{gt^2}{2}$$

最高点で$${v_y=0}$$よりこの時$${t=\frac{v_Rsinθ}{g}}$$
これをyに代入してcosで揃えると
$${y_Max=\frac{L}{9}(4+5cosθ^2-9cosθ^3)}$$

ここまでは基礎事項が固まっていれば解きやすい問題でした。

(11)相対運動エネルギー変化を考慮

あからさまに固定具が書かれているところから、「多分取り除かれるんやろなぁ」と思ってはいましたが、ついに取り除かれましたね。

まず取り除かれる直前のAの速度を求めます。力学的エネルギーを考慮すれば$${v=\sqrt{v_0^2+2gL}}$$, 融合直後の初速は運動量保存の式から
$${V=\frac{1}{3} \sqrt{v_0^2+2GL}}$$

とはいえ、今回ABは一体化してしまうので、これを質点C(3m)とすれば、
質点Cと台の二体問題と捉えることができます。

ここでは相対運動エネルギーと重心運動エネルギーを用いて解きます。
質点Cと台の重心運動エネルギーは変化せず、Cの上昇による位置エネルギーの変化は相対運動エネルギーの変化と捉えることができます。
最初の相対速度は台が動いていなかったことを踏まえ$${V}$$,相対速度が0になるタイミングが後ですから最後の相対速度(相対運動エネルギーも)は0。
換算質量は$${μ=\frac{3mM}{3m+M}}$$より

$${Δ(\frac{1}{2}μv_{rel}^2)=3mgL(1-cosθ)}$$
$${\frac{1}{2} \cdot {3mM}{3m+M} \cdot \frac{1}{9}(v_0^2+2gL=3mgL(1-cosθ))}$$
$${v_0=\sqrt{\frac{18gL(1-cosθ)(3m+M)}{M}-2gL}}$$

(12)重心系により解決

台と質点Cの重心速度は(11)より
$${v_G=\frac{m}{M+3m}\sqrt{v_0^2+2gL}}$$

今回は相対速度が0、すなわち重心速度と質点及び台の速度は一致する。
よって上の式に与えられた数値を代入すればOKです。
計算量がなかなかありますが答えは0.7になります。

総括

(11)(12)はうまく処理しないとなかなか厳しい問題でしたが、他の問題は基礎事項や本質理解をできていれば、特に解けない問題はないように感じました。闇雲に問題にあたるのではなく体系的に演習していけば怖くありません。

おすすめ参考書

いずれの問題も「新・物理入門問題演習」に類題がありました。


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