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1.世界で一番美しく、優しい人

最初の10年、私はお母さんがとても好きでした。
お母さんも私を大切に育ててくれました。

私はお母さんが23歳の時の子だったので、物心ついた時まだお母さんは20代の、若い人でした。
私は一人っ子で、お母さんは専業主婦。
洋服を縫ってくれたり、
遊びを工夫してくれたり、
かわいいお弁当をつくってくれたり、
枕元で絵本を読んでくれたり、
とても可愛がってくれました。

物心ついたとき、私たち一家は、東京都の郊外に暮していました。
両親は結婚当時九州に住んでいましたが、お父さんの働く会社の本社は東京にあり、川崎や横浜にもたくさん事業所や研究所があったため、転勤で東京に来たのです。

お母さんは社交的で、どこに行っても友達ができました。編み物などの習い事や、私の幼稚園のママ友など、しょっちゅう家に呼んで、手作りの菓子をふるまって、けらけら笑っていました。

お母さんはまた、野生児でもありました。九州の山奥の出身で、野山を飛び回って育ったのです。
窓辺に遊びに来た小鳥をつかまえようとしたり
プールに飛んできたゲンゴロウを持って帰ったり、
私を背中に載せて泳ぎまわったり、
グミやヤマモモなどの食べられる実がなる木は、花も実もついていない状態でも見分けることができ、
ノビルやスカンポなどの食べられる野草を見つけては散歩中にポリポリ食べたり、
楽しい人でもありました。

近所の写真館のイベントに応募してモデルになったり、
姿も可憐な若いお母さん。

多くの人がそうなのでしょうが、
私も、私のお母さんは世界で一番美しく、優しい人だと思っていました。

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