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18世紀イギリスで発生した廃墟ブームとは?造園狂いに取り込まれる廃墟 その二

前回の続きです。(一回目の記事はこちらより↓)


かくして、イギリスでは廃墟めちゃええやん!ぴくちゃれすく!アツい!なムードが高まってきました。

ちなみにイギリス国内で主にモチーフとして取り入れられた廃墟は修道院跡です。

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こんなんです。(フリー素材より)

これら修道院は、1530年代にイングランド王ヘンリー8世の修道院解散令によりみなぽろぽろと解散されゆき、その後誰からも関心を払われず人の寄り付かない廃墟となってほったらかしにされていたのですが、ここにきてピクチャレスクの美的感覚とピッタンコ合致し、突如もてはやされ始めたって感じです。

こうして廃墟の姿が取り込まれたピクチャレスクな絵画が誕生してゆきます。

すると、廃墟ブームは次のステージに向かいました。絵という平面の2次元世界でモチーフとされていただけでなく、実際に制作され3次元的に現出するようになります。

絵の先に続く次なるステージは「庭園」でした。庭園の中のお飾りアイテムとして人々は実際に廃墟を作り始めたのです。たまたま自分の敷地内にイイ見た目の廃墟があればそれをそのまま取り込んで造園しました。敷地内になくて近場に廃墟があった場合、それを破壊し運んできた断片を建材とし廃墟を作りました。敷地内にも近場にも廃墟がなければイチから新しく廃墟を制作しました。

これら「人工廃墟」を建設する廃墟デザイナーなる人たちも出てきました。綺麗にピシッと作りすぎると当然廃墟っぽくないのでイイ感じにボロく、ガタついた感じで作ったようです。修道院、城、神殿みたいな意匠のものが好まれました。

庭園も勿論ピクチャレスクの感性に乗っ取ってつくられたので、それまで主流だったフランスの平面的で完璧主義な幾何学人工的庭園とは真逆を行く、自然美非対称曲線風景式ってかんじの庭園が多く生み出されます。

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↑フレンチフォーマルガーデン(フランス式庭園)
完璧であることを求められているので植物はキッチリ人の制御下におかれ、全てシンメトリーに組まれております。整形美を楽しむやつ。

ブリティッシュナチュラルガーデン(イギリス式庭園)
フリー画像なかった…。ピクチャレスクの感性、あんま整えすぎず自然そのままスタイルの庭園。自然美を楽しむやつ。

こうして、絵で見ていた、絵に描いていた理想的風景が、庭園術によって人工的に現実の中へ再現されていくことになります。

するとこのつくられた庭園を見て
「これってすごく絵になるねえ…!(そういう風に作ったのだから当然のことであるbyキートン山田)」と感じた人々が今度はそれら庭園を絵にかくようになります。
「すべての庭園は風景画である」「庭は絵の如く、絵は庭の如く」といった具合で、2次元表現である絵画と3次元表現である庭園はその中に廃墟を抱き込みながら、おたがいに影響を受け合い表現されゆくのでした。

以上がイギリスで廃墟趣味がぶわーっと広まった一連の流れでした。

まとめると、風景画を大陸から持ち帰ってきて、それ見てイイ風景画描きたくなって、描いてるうちに「ピクチャレスク」概念がポロっと生まれて、廃墟って最高のモチーフじゃん!てなって、廃墟探して絵に描くようになって、庭園もピクチャレスク感性に基づいて作るようになって、そしたらやっぱ廃墟も絶対庭園に置きたいよね!ってなって、廃墟せっせとつくって造園に組み込んで、イイ庭園出来たらそれも絵にしてえ!ってなってまた描き始めたかんじです。

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この中でうまれたピクチャレスクという概念はその後「イギリス人がヨーロッパの視覚分野にもたらした最大の貢献」といわれるほどに広まっていく模様です。
そしてここで人気が出た廃墟たちは人がたくさん訪れるようになり観光地化されていきましたとさ。

今回イギリスメインだったので、またそのうち大陸(イタリアフランス)編とか日本編とかまとめて書いていこうと思います。

おわり


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