その寒気ゆえに

汚れた歩道から汚れた歩道へ
廃墟の落とす影を踏みながらきみと歩いた
見えるだろうか、まだ名のない色の空と
まだ聴かれたことのない音が混じる週末の街角
身を寄せたいつもの希望とは無関係に
絵のような公園は封鎖されて
古い寒暖計が最低気温を更新した

薄汚れた歩道には
いつまでも回りやまない独楽を見つめる少年がひとりたたずんでいる
記憶されてしまうことからすべてを守るために
空を切り取って窓とすれば
きみはその窓の向こうを通りすぎる
なにひとつ気づかずに通りすぎる

それだけの隔たりが永遠であるうちにぼくは気持ちをうちあける
とても細い道を通って告白のなかできみをおいかける
まだ名前もない色の空の真下では
パン屋の屋根の方から乾いた風がときおり吹いて
てのひらの大きさにまで縮んだ絵のような公園
なにも持たない手はいまも握りしめたまま
きみを追うものだけが離されていく


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