雨の夜に夜の雨に濡れながら

間近でみると短い一日を遠く離れて鐘が鳴る
ぼくの四角い家にむかってガードレールが錆びながらつづいている
買い物帰りには河川があふれ
一生が危険な短さの最後で朝を迎える楽園にむかって橋がかかっている

時間を停めるために記憶の曲がり角で虹が永遠の弧を描いている
再会がないと思い出せないひとと連れ添って歩いてぼくは疲れはてている
だれよりも遠くを知っている川なのに
はじめから欲しいこたえを持っているひとのように
声にすべき問いはない

目眩よりも遠くではアスファルトが波うち
だれの手にも戻らない飛行船が
いまも光学的な停滞の縁を旋回している
誘われてあゆむ鳥居の道にはくずれ落ちた悲しみ以上のものはない
思い出には意志がない
近くをあいまいにして
ひとびとにかぎ裂きをひらき裏地をむきだしにする危険な降雨を隠している
できれば避けるにこしたことはない

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