初夏にむかう地図

時間が波であるように
あの孤島までの距離が海だった
船には速度を与え
その船からは速度を奪った
距離を与え 海を奪った
海を与えて距離を奪った
島々を抱く波の指先が
波を抱きかえす島々のその反応に触れていた

負の花を育ててきた
だれよりも多く立ち止まり
いかなる抱擁もしんじなかった
けむたいけむたい波しぶきにむかって
けむたいなけむたいなと思いつづけた

それからも負の花を育てた
なにも痛くないと血を流す風とともに
もうだれもいない初夏にむかって歩きつづけた

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