窓という窓を曇らせて

どうかそれぞれの扉から旅立ち
ぼくの雪を降らせ
ぼくの雪を融かしてほしい
水蒸気となって浮遊するあなたのために
どうか水晶の静寂を揺るがし
窓という窓を曇らせてほしい

それぞれの言葉がすれ違う午前二時に
どうか明滅する信号機よりも彼方から
あなたの季節を届けてほしい
受け取り主のない配達物よりも彼方へと
あなたの翼は放物線を描いて去っていくだろう
真冬の真横から射す陽光のように
なにひとつ温めない言葉となって
どうかあなたの悲しみを届けてほしい
ぼくの雪を降らせ
ぼくの雪を融かしてほしい

新しい服に袖を通して
あなたの季節だけが風を生む
それは海のない海岸を吹き抜けて
続きのないドラマを形づくる
ぼくの雪となって降り
あなたを吹く風となってもどらない

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