七月の傷だらけの背中が遠ざかっていく

風があるとしてもぼくたちを吹いている風ではない
濡れまいとして傘を開いただれかに降りかかる雨があるとしても
ぼくたちに降る雨ではない

やがてきみの姿となる光に照らされて夜の破片を踏んでいる
きみの不在はまだ深い井戸の底にあって
ぼくが振りかえるときにみる暗がりの正体を知ることはない

遠ざかるものを見送るにはまだ早い
ぼくたちはまだ近づいているさなかだ
きみの言葉は口にされる前にすでにぼくたちふたりの口のなかにある

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