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30代で精巣がんになった話 前編

はじめまして。ハンドルネームをEntradaと申します。
30代で精巣胚細胞腫瘍(以下、精巣がん)を患い、手術&化学療法を経て、既に寛解しています。
今となっては、がん患者だった面影もないくらい元気いっぱい&頭髪フサフサなので、当時のことを思い出すことも少なく、たまに聞いていただけることもあるのですが、闘病していたことを長々と語るのも不幸自慢かよと思われたくないので(あと闘病話をすると色んな人への感謝で涙が普通に出ちゃうので)、当時の出来事や思っていたことをnoteにまとめておくことにしました。
入院生活中にブログを開設して投稿した記事を再編したものになります。(ブログは収益化できなかったので閉鎖しました)


day 0

突然ですが皆さん、入浴の時、身体を何で洗っていますか?
タオルでしょうか。アカスリでしょうか。ヘチマでしょうか。
僕は素手で洗うようにしていました。
・身体を洗うときに摩擦で実は肌が荒れている
・手を色んなところに伸ばすためストレッチになる
といったネット情報を鵜呑みにして実践していたわけです。

そんな、スベスベ素肌を目指して毎日素手で身体を洗う日常が功を奏して、症状を早期発見することができました。

ある夜、玉が片方だけ、ほんの少し晴れているように大きいことに気付きました。男性諸君は理解していただけると思いますが、なんとなく自分のモノの大きさは感触で覚えていたので気づきました。
ウズラの卵×2だったタマタマの片方が、鶏卵くらいになっていたのです。

今の時代はGoogle先生に聞けば何でも分かったような気になれるので、ご多分にも漏れず、自分も先生に聞いてみました。このnoteに辿り着いた方も、Google先生の検索結果の中にタマタマあったのかもしれませんね。
ググった結果は、怖い情報ばかりが並んでいました。
精巣捻転、精巣上体炎、精索静脈瘤、陰嚢水腫、精巣腫瘍、精巣癌….
これは病院に行った方がよいと思ったのですが、実はこの日、盆休みのまっただ中でした。不安だが救急でもないだろうし寝るしかない。
…というのがこの闘病記の始まりの前夜、0日目でした。
(もちろん結果的に精巣がんだったのですが…)


day 1 

股間の違和感に悪い予感たっぷりのまま、どうにもできなかったので寝酒を飲んで無理矢理眠った翌朝、医師の友人に休暇中に申し訳ないながらもLINEすると、即レスどころか即折り返しで電話してもらえました。(後日談ですが、そのとき伊勢神宮に婚約者とお詣りしていたそうです。本当にごめんなさい、でもありがとうございました。) 

タマがどうにも腫れているので放置して良いかとフランクに聞いてみたところ、いつからか・痛みや発熱の有無を聞き返されます。
思い返せば1週間前くらいから違和感はあったような気がするが痛みも熱もないことを伝えると、急性ではないが盆明けに受診せよと言われました。

そう、何を隠そうこの友人医師、泌尿器科医だったので、持つべきは友人だなと思いながらも、自分のデリケートゾーンを友人に見せるのか、とも思いましたが、まぁなんともなければ良い話のネタのひとつになるかくらいにこの時は考えていました。
だって急性じゃないって言うし…


day 5

こんなに盆休みが終わることを待ち望んだのは初めてかもしれません。
泌尿器科を受診し、友人医師の前で、生まれたままの姿になりました。
触診と超音波エコー検査をされましたが恥ずかしいかというと、それどころじゃなかったです。
『症状についてGoogleで調べたよね?どう書いてあった?』
「調べたけど、色んなことが書いてあって正直自分では…」
『何と書いてあった?』
「精巣がんの可能性があると…」
『そうだね。癌の可能性が正直かなり高い。血液検査で腫瘍マーカーの値を検査しよう。腫瘍マーカーはすぐに結果が出ないものもあるから、来週必ずまた来てね。癌なら切除が基本原則だから手術になるよ。万が一、緊急性の高いマーカー値が出てきたらすぐ連絡するからね。手術&入院の準備しておいてね』
という急転直下の癌予想告知でした。

『癌ですね』
「ガーン…!」
っていうやりとりを予想していたのですが、友人医師がやりたくなかったのか、自分で言わされてしまいました。
今思うと、精神的なショックを与えないような配慮だったのかもしません。友人医師からは、『心配で寝られないと思うから言っとくけど、お酒は飲んでいいから。いっぱい飲んで寝なさい。』と有り難いアドバイスを頂いたので久々に泥酔するまで飲んで寝ました。


day 8 

一週間を待たずに、なんだかタマがより大きくなってきたような気がするし、パンツの中での窮屈さや、重量感が増してきた気がするので、あまりに気になって先生にLINEしてしまいました。迷惑な患者ですみません。
・そんなに急に物理的に大きくならない。
・痛みや赤み、発熱がなければ急性ではない。
と返事をいただき、一安心。迷惑な患者ですみません。
 
週明けに死刑宣告を受けるような気持ちだったので、色んなことを調べました。精巣がん患者の方のブログもたくさん読みました。やはり先が分かっていると不安も少なくなります。

でも、残されてるブログって手術で切除したあとも、抗がん剤治療の辛い日記しか見つからない…

この時、決意しました。
自分は、どんな結果になろうとも記録に残しておこうと。
切除して転移なし!ハッピー!っていうブログがあってもいいじゃない。


day 12 

緊急ではないと言われつつも膨れ上がる股間と不安な気持ち。検査結果を聞きに再度、友人医師のいる泌尿器科にいくと、「検査の結果が出ました。癌の可能性が非常に高いです。」と伝えられました。

可能性が「高い」から「非常に高い」に進化してしまいました。まるで台風みたいだ。でも冗談言えるふいんき(なぜか変換できない)じゃない…

すぐに入院する必要があるとのことで、大学病院に準緊急扱いで予約を取ってもらい、紹介状を書いてもらって受診日が決まります。

友人医師からは力強い言葉ではっきりと言われました。
『気休めで言うんじゃないよ、治る病気だから大丈夫だからね!』
『まだお酒飲んでも大丈夫。心配で眠れないだろうし、むしろ飲め!』
持つべきは医師の友人ですね。

心配している家族を居酒屋に連れ出し、飲みながら病状を伝えました。
今となっては何食べたか覚えていませんが、最後の晩餐が居酒屋かぁと思ったような気がします。

day 5の時点での腫瘍マーカー値はあとで知るのですが、赤信号ではあるが出遅れてはないし、どちらかというと早期発見の値ではありました。
AFP:800(15以下が基準値)
hCGβ分画:0.8

引用ではありませんが医療判断は医師がすべきことなので、あくまで所感ですよ、の意

次回はday14です。とても長い1日になりました。
一旦ここで前編と称して記事は締めさせていただきます。

次回、「後編」にと言いたいところですが「中編」に続きます。


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