逆説の日本史6 中世神風編 井沢元彦、小学館文庫

後醍醐天皇に関する井沢元彦氏の論考が刺激的で、興味深い。

マルクス主義史観や、皇国史観抜きで、後醍醐を見たい。
井沢元彦は、後醍醐天皇の親政を失敗と結論する。
網野善彦氏の名著「異形の王権」では、いわゆる社会の下層の「異形の」天皇であったと述べられている。

私は、後醍醐天皇は「超原理主義者」だったと思う。

中世よりさらに古代の天皇が直接統治していた、武士なる存在が出現するさらに前の王権に自らの理想を見ていたのではないか。

神皇正統記を記した北畠親房の様な、中世日本の天才的な人物が側近にいた事が、間接的であれ、後醍醐の親政の妥当性を証明しているようにも思う。

井沢元彦が論じるように、ケガレた者の登用で毒を以て毒を制しようとした。

この説は、想像が付く。

武力を持たない、持ちたく無い天皇は、武力を保持しない権力を維持しながら、敵方の「内ゲバ」を惹起する事で、結果として自らの支配構造を強化しようとしたのでは無いか。

例えが悪いが、現代日本でも公安や警察は、反社会的勢力を、一気に介入、摘発せずに「泳がせる」という作戦を取るという。疑心暗鬼が高じて、それらの勢力が勝手に潰しあうと。

そのイメージに少し近い。

後醍醐が政敵の「潰し合い」というある種賭けとも言える高度な戦術を取ったのではないか。

それが、「中先代の乱」のような事象として発露しているようにも見える。

建武の新政についてはまた書く。


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