編集長を出せ!『噂の眞相』クレーム対応の舞台裏(岡留安則、ソフトバンク新書)

「噂の眞相」や「岡留安則」の名前を聞いてピンとくる方はもしかすると減ってきているかもしれない。

雑誌「噂の眞相」が、休刊となったのは2004年との事なので、早20年近い時が過ぎようとしている。

本書は、「噂の眞相」の名物編集長であった岡留安則氏(1947-2019)の執筆した新書(2006年初版)である。

筆者が「噂の眞相」を手に取ったのは近所の図書館の雑誌コーナーである。

いつもその場で読むだけで自分で買ったことも、ましてや借りたことも無いのだが、立ち読みでも読む時の、何とも後ろめたい気持ちは今でも記憶している。
(一応、周囲に人が居ないことを確認してから手に取っていた気がする。)

現代はSNSが全盛であると同時に、政界でも昨今メディアを賑わしている総務省の行政文書問題に象徴されるような、当時から変わらず、真偽不明の情報が行き交う時代となった。

この「噂の眞相」は、SNS時代では、もはや当たり前となった内部告発や、垂れ込みの類、あるいは社会にあって行き場のない感情の「受け皿」として機能していたのかもしれない。

とはいえ、コンプライアンス問題がもはや経営課題になった現代からすると、本書、あるいはかつて噂の眞相で描かれていた日本は、まだ牧歌的であった最後の時代だったようにも思えるのである。

「噂の真相」をジャーナリズムと呼ぶかは、かなり是非が分かれるところだと思うので、いったん棚上げとする。

さて、そんなある意味では、危なっかしいともいえる「噂の眞相」だが、表現の自由を主張しながら、「噂の眞相」を引っ張っていた著者・岡留氏の姿勢は今、新書で読んでも、意外なほど、独特の訴求力と説得力を持っている。

本書は、筆者のタイムリーな関心とフィットして楽しい読書体験になった。

筆者は、2000年頃、岡留氏を拝見したことがある。

某大学の小さな教室で開催された、登壇者三人の中の一人として、岡留編集長が参加されていたのだ。テーマは個人情報保護と犯罪などについてざっくばらんに意見交換をすると言う硬派な内容だったと記憶している。

本書で噂の眞相が追いかけていたニュースから、90年代から2000年代初頭の世相に思いを馳せるのも中々楽しい。

本稿は以上。

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