シンクタンクとは何か(船橋洋一、中公新書)

シンクタンクとは何か。

2019年と比較的最近の本である。

切れ味の良い、非常に刺激的な論考。
中公新書らしい骨太な内容である。

主に、アメリカのシンクタンクを参照しながら、日本におけるシンクタンクの在り方についても論じている。

「第五の権力 アメリカのシンクタンク」(横江公美著、中公新書)も、優れているが、本書「シンクタンクとは何か」も、シンクタンク論の入門書として、興味深い。

本書によれば、シンクタンクはアメリカの人気職種だと言う。インターンにも人気があると言う。

確かに、日本にはそういう場は少ない。

シンクタンクはあくまでビジネスである。
したがって、あまり勝手な事は書けないが、私は本書や、「第五の権力 アメリカのシンクタンク」を読んで、同様に魅力を感じた。

シンクタンクで、研究員になり政策分析、立案。
絶対楽しいと思う。

霞ヶ関の省庁が、シンクタンク機能を持つべきであると言う主張も分からなくは無い。ネット環境さえあれば、霞ヶ関に居なくとも、情報を得ることは可能なので、物理的、時間的な制約は無い。

ただ、私が関心を持つ、エネルギー・環境分野は、かなりのレポートが「カーボンニュートラル真理教」に帰依しており、読んでいて、その違和感に耐えられない事がある。

少し陰謀論めいた話となるが、環境左派のような人々、特に日本の国力を低下させたい勢力が、霞が関に浸透していて、わざと実現不可能な目標を掲げて、官僚のモチベーションを下げているのでは無いかと邪推すらしてしまう。

シンクタンクの多くはアメリカのワシントンにあると言う。
流石に、私が「ワシントンでシンクタンク行脚」することは叶わないが、民間企業内でシンクタンク機能を持つ、くらいの事は、出来るのでは無いか。

日本で力を持ってきた、「学会」ですらも急速に力を失っている今、求められているのは、明らかにシンクタンクだ。

余談だが、日本にシンクタンクは成立する土壌はある。

何故、政権交代の時、有権者は、麻生自民より、鳩山民主を選んだのか。

悪夢の民主党政権だったというが、政権交代前夜の、麻生政権末期も十分、悪夢だった。

当時の、自民党への絶望感はそれほど深かった。

少なくとも当時の私が求めたのは、「マトモな政策論議」であり、日本にシンクタンクを待望する機運が生まれるとすればそこだろう。
後になり、いわゆるアベノミクスが評価されているのも、首相がかなり思い切った金融政策を取ったためであることはほぼ常識になりつつある。

民主党は悪夢だった。とんでもない猛毒を飲んで初めて、事の重大さに気づくと言う事態は悲劇と言う言葉で片付けられない程の悲劇だ。

本書を読んで改めて日本に、健全な政策立案を実施するシンクタンクがあれば、また状況は変わっていたかも知れないと思う。



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