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米国司法省によるLive Nation/ Ticketmasterへの独禁法訴訟

(※冒頭の画像はDALL-Eで生成しております。)

2024年5月23日、米国司法省(DOJ)は、30のAttorney Generalと共に、Live Nation(100%子会社にTicketmasterを有するLive Nationを、シャーマン法2条に違反したとしてニューヨーク南部地区連邦地裁において独占禁止法違反で訴えました(訴状はこちらです。)

Ticketmasterは、アメリカでイベントのチケット買う時は一度は使ったことがあるサービスではないかと思いますが、アメリカの最大のコンサートチケット販売会社です。Live Nationは、コンサート、チケット販売、及びスポンサーを主な事業の柱とする会社です。訴状によれば、Live Nationは400以上の音楽アーティストを直接Manageし、アメリカ国内の主要コンサート会場でのコンサートプロモーションの60%をコントロール、100の野外劇場(Amphitheaters)を含む北米で265のコンサート会場を所有し、Live NationはTicketmasterを通じてコンサートの一次チケット販売のおおよそ80%を掌握しています。

今回、訴状では、Live NationとTicketMasterは、コンサートプロモーションやチケット販売において独占状態を維持し、排他的行為を行っているとしています。具体的には、以下のような行為が挙げられています。

①潜在的な競争相手であり、協力関係に転じたOak View Groupによって、Live Nationとの入札を避け、Ticketmasterと契約するように影響を与えていること。
②Live Nationは、コンサートプロモーション市場への参入をやめない限り、経済的報復をすると脅していること。
③Live Nationが内部で脅威と判断する多くの小規模・地域プロモーターを買収し、競争を妨げアーティストの対価に影響を与えていたこと。
④コンサート会場側は、他のプロモーターやチケット販売者を選ぶと、Ticketmaster側から反発を招き、コンサートや収益、ファンを失うリスクがあることを理解していて、Live Nationがコンサートプロモーションで強大な権力を有していること。
⑤コンサート会場と長期間の独占的契約を締結することで、コンサート会場が他の競合他社への変更をできなくさせ、競争圧力を減少させていること。
⑥Live Nation側の行為や独占契約により、新規又は別のプロモーターや競合相手、ビジネスモデルの出現を妨げていること。
⑦Live Nationが買収等をし通じて主要な会場の支配を拡大し、アーティストがLive Nationのプロモーションを使用しない限り会場を使用を制限していたこと。

上記により、Ticketmasterには、「Ticketmaster税」とも呼ばれる複数の不透明な手数料が追加され、チケットが高額になるだけはなく、新しいイノベーションを阻害しているとしています。
DOJは、シャーマン法2条や各州法に違反しているとし、Ticketmasterの分割などを求めています。

これに対し、Live Nation側もHP上で長文の反論を行っています。
本訴訟は、チケットの価格上昇の責任をLive Nation側に押し付けているが、Ticketmasterは手数料の一部のみを保有していること、Ticketmasterは他のチケットサイト(SeatGeekやAXSなど)よりもサービス料が低廉であること、Ticketmasterのシェアは年々下がっていること、独占契約は長年の慣行でありチケットサービスを利用する会場側がそのような形態が望ましいと考えていること、プロモーターの買収は過去10年間で1件しか行なっていないことなどを述べています。

Ticketmasterとの間では、ファンやアーティストとの間で古くから紛争がおこっております。かつて、1994年にPeal JamがTicketmasterに対し、その地位を利用してプロモーターがバンドのブッキングをしないようにさせたなどとして、訴訟を提起しています。また、Live NationとTicketmasterの合併の際、10年間他のチケット会社を使用するコンサート会場に報復しないことを合意したのですが、それが守られていないことが発覚しています。さらに、2022年にTyler Swiftのスタジアムツアーのチケット発売に問題が生じた際、システムがダウンしました。これは、再販売のためにチケットを大量に購入するボットが問題となり、議会での公聴会なども行われておりました。

このように、本件は、長年に渡りファンやアーティストからの不満を抱えてきた問題ではありますが、今回、DOJの訴訟が、業界全体の透明性を測り、ファンやアーティストが安心してパフォーマンスを見れる契機になることを期待しています。


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