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吟味して買った長ネギを無駄にしてしまうカノジョ【 エッセイ 】

「 特売ネギ、割高になる 」


カノジョはスーパーで、特売のネギを一本ずつ手に取り、その出来栄えを確認していた。

今日に限って長ネギにこだわるのは、テレビか何かから、美味しい長ネギの見分け方情報を仕入れたからに違いない。

気持ちはわかる。でも、何分も時間をかけるのは如何なものか? 「 あんまり長く立ってると他の人に迷惑だよ 」その言葉にカノジョは不機嫌になる。こういうところが面倒くさい。

帰り道でもカノジョの不機嫌は続いており、わたしもいい加減で辟易していた。

そして、信号待ちの交差点。

背後から「 あの 」という女性の声。

不機嫌さを持続したまま振り向くと、メガネをかけた真面目そうな若い女性が立っている。

なにかの勧誘だろうか? 「 なんですか? 」感じの悪い声が出てしまった。

女性は、私のカノジョの足元近くを指さし、「 長ネギ出てますよ 」と言うと、軽く会釈して去っていった。

指が示した場所に目をやると、レジ袋の底を突き破った長ネギの白いボディが見えている。

ごめんなさい親切な人。去っていく背中に向かって「 すいませーん 」と頭をさげる。不機嫌に接してごめんなさい。と、親切にありがとうございます。両方の気持ちを込めた声は届いただろうか?

それにしても、なにをどうしたら丁度ネギ一本分の穴があくのだろう? そういえば買った時よりも、だいぶ短くなっていないか?

来た道をふり返ると、すりおろしネギがうっすらと一本の線を付けていた。何十メートルかは分からないが、それだけの距離、カノジョは長ネギをすり下ろしながら歩いていたのだ。なにかしらの手ごたえはなかったのだろうか?

時間をかけて吟味し、選りすぐった労力が水の泡だ。それを指摘すると「 細かい男ね 」と言って大股で通りを渡りだした。

余計な一言を言ってしまった……

それにしても細かいのは私だろうか? なんだか解せない。

エージロー

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