マガジンのカバー画像

上場企業の決算書講座

14
上場企業の開示資料を分析します
運営しているクリエイター

記事一覧

サイボウズの決算書を見て、改めてすごいと思った理由

サイボウズは、パッケージソフト販売からクラウドベースのSaaSへとビジネスモデルを転換し、さらなる成長を遂げている会社として有名です。 1年以上前のものですが、その成果を象徴しているこちらのグラフは何度見ても衝撃的です。 (サイボウズ株式会社「2019年事業説明会 配布資料」より抜粋) そんな、日本版マイクロソフトのようなサイボウズについて、改めて決算書を中心に調べてみると、すごいなと感じた点がいくつかあったのでまとめます。 クラウド売上成長率は26%。2021年末の

【Sansan, freeeから学ぶ】効率よくお金を回すことのメリット

今回の記事では、運転資本(ワーキング・キャピタル)の効率化について、Sansanを例に説明したいと思います。 Sansanは非常に効率よくお金を回しているSansanの2021年5月期の売上高は161億円で、前年同期比21%増加(前年同期は133億円)。一方で、営業利益は前年と同じ7億円でした。 営業利益は、レンジで出していた予想数字よりもわずかに下回っただけですが、業績発表後は「順調な収益拡大を期待して買いついていた個人投資家には失望感が広がって」いたようで、株価は大き

SaaS企業 直近のARR・PSRランキング(ARR100億円程度の会社編)

こんにちは、今回はSaaS企業のARR・PSRについて取り上げます。 日本でもSaaS企業の売上高(ARR)と時価総額の相関関係が見られるようになってきましたが、これらの指標の現在の比較と過去1年でどう推移したのかをざっくり見ていきたいと思います。 【対象企業】 ❶ 直近ARRが50億円以上(100億円程度)の会社(←今回の記事) サイボウズ、sansan、フリー、マネーフォワード、ユーザベース、ラクス ❷ 直近ARRが50億円未満の会社(←次回の記事:3/6(土)公開

SaaS企業 直近のARR・PSRランキング(ARR50億円以下の会社編)

こんにちは、今回も前回の記事同様SaaS企業のARR・PSRの比較ついて取り上げます。 対象企業はこちらです↓ 【対象企業】 ❶ 直近ARRが50億円以上(100億円程度)の会社(←前回の記事) サイボウズ、sansan、フリー、マネーフォワード、ユーザベース、ラクス ❷ 直近ARRが50億円未満の会社(←今回の記事) AI inside、カオナビ、スマレジ、チームスピリット、Chatwork、HENNGE、プレイド、ヤプリ、ユーザーローカル 前回は、直近ARRが10

プレイドの「成長可能性に関する説明資料」が素敵すぎる3つの理由

今回は、昨年12月に上場した株式会社プレイド(以下、プレイド)に関する記事です。 プレイドは上場の際に「成長可能性に関する説明資料」を公表しています。資料自体は昨年の12月にリリースされてたものなので、新しいものではないですが、この資料が素敵すぎるので紹介させてください。 プレイドの資料が素敵すぎると思う3つの理由 ❶ 欲しい情報(要素)がすべて入っている ❷ 初めて見ただけでプレゼンできそうな論理構成 ❸ 洗練されたデザイン ❶ 欲しい情報(要素)がすべて入っている1

超スマートな freeeの決算説明資料を分解してみた

先日、freeeの2020年6月期の決算が発表されました。 決算内容は、年間売上高が前年同期対比で52.7%増の68億円、来期は40%増の96億円の予想とのことで、引き続き非常に高い成長率であり、来期末にはARR100億円も見えています。 決算自体に特段のサプライズはなかった一方、あらためてfreeeの資料がめちゃくちゃわかりやすく、スマートにまとめられていると思ったので、今回の記事ではその要因をさぐりたいと思います。 freeeの資料がわかりやすい3つの理由 ❶ 伝え

巣ごもり需要で大躍進!任天堂の最新決算まとめ

今回は、グローバルの巣ごもり需要の影響を直に受けた、任天堂の決算分析を行います。 この記事では、任天堂の決算書を見たことない方でも、任天堂の特徴がわかる「重要な数字」を用いて解説します。 今回の記事の構成 ・2021年3月期 第1四半期(4-6月)決算のサマリー ・任天堂を理解する上で「重要な数字」の紹介 任天堂株式会社の2021年3月期 第1四半期決算が8/6に発表されました。 売上高は前年同期比で約2倍の3,581億円、営業利益は5倍超の1,447億円と、コロナの影

SaaS企業のBSを比較したら、ビジネスモデルの違いが色濃く出ていて思ったよりも興味深い結果に

最近SaaS企業に興味があるので、今回は日本の主要なSaaS企業のBSを比較してみました。 ■今回の記事の構成 前半:全体感の比較と所感 後半:各勘定科目別の会社比較から見える各社のビジネスモデルの特徴や、方針に関しての気づき事項 ←メイン 結論、PLよりも各社の”色”が反映されているように思いました。ついついPL(特に売上高)に目が行きがちですが、BSもやっぱり大事だなと。 全体感の比較と所感≪金額ベースの一覧表/総資産に占める割合の一覧表≫ 各社の直近のBSの金額

freeeの評価が断トツ?!PSRで日本の主要なSaaS上場企業を比較してみた

足元では少し落ち着いてきた感もありますが、近年は未上場企業でもSaaS企業を中心に高いバリュエーションで資金調達をする例も多く、”SaaS” や ”サブスクリプション”は、ビジネスモデルとしても一般的なものになりました。 今回の記事では、SaaS企業価値評価の中でよく用いられるPSRという指標を基に、日本の上場企業の比較をしてみたいと思います。 SaaSは投資家にとっても投資がしやすい?!比較に入る前に、まず投資家から見たSaaS企業の特長を軽く説明します。 ■投資家か

資金繰りは大丈夫?!未曾有のコロナショックがANAとJALに与える影響を分析

先日ANA、JALの2020年3月期の決算が発表されました。 ANAは、四半期ベースで赤字に転落し「過去最悪の数字」。JALも経営再建後初の四半期赤字となりました。また、両社は2021年3月期も第1四半期から大幅な減便を余儀なくされており、JALは「直近では国際線約95%、国内線約70%の減便」を予定しています。 皆さんご想像のとおり、航空業界は多額の設備投資が必要で、それを多くの借入金等で賄っています。ただでさえキャッシュフローが非常に厳しい業界にもかかわらず、当面は状況

カニバリを恐れない!?ユーザベースについ期待したくなる理由

SaaS企業の企業価値評価の指標として、時価総額と年間売上高(ARR、年間のストック売上高)を比較した指標”PSR”が一般的です。 以前、主要SaaS企業のいくつか(時価総額 概ね1,000億円以上の企業)の”PSR”を比較した結果、このように、freeeがずば抜けて高く、ユーザベースが相対的に低い結果となりました。 過去の記事はこちらからご参照ください。 もちろん他のSaaS企業が超優良であるので、ユーザベース自体の評価が低いわけではないことは理解していますが、なぜ他

過小評価されている?クックパッドがなんだかんだ凄い3つのポイント

突然ですが、”クックパッド”と聞いてどんなイメージを浮かべますか?? ・クラシルとかデリッシュキッチンとかが出てきて正直厳しそう ・業績が良くない ・会員数もどんどん下がっていそう ・お家騒動とかもあったし経営は大丈夫? など、どちらかというとネガティブなイメージが多いのではないでしょうか? ただ、個人的には、クックパッドはなんだかんだやっぱすごいなと思うので、この記事では、クックパッドのすごい理由を説明したいと思います。 (開示情報から推測しているあくまで個人的な見

1年間休業しても大丈夫?!オリエンタルランドが”異例の”融資枠の申請もまだ余裕のわけ

先日ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが2,000億円の融資枠の要請をしたというニュースがありました。 不測の事態に備えて手元資金を厚くすることが目的とされていますが、実態はどうなのか、今回はオリエンタルランドの財務状況を見てみたいと思います。 固定資産を多く抱える企業とは思えないほど”盤石な財務基盤”オリエンタルランドはご存じのとおり、ディズニーランドやディズニーシーのほかにホテルの運営を主たる事業としているほか、イクスピアリやモノレール事業を展開しており、

構造改革中にコロナの直撃を受けたライザップの現在の状況

今回は、RIZAPグループ株式会社(以下、ライザップ社)についてです。 6月10日にライザップ社が発表した2020年3月期の決算は、コロナの影響もあり、約7億円の営業赤字と約60億円の最終赤字となりました。 個人的に、ライザップ社の事業ドメイン「自己投資産業」と、それに関わる会社を次々とM&A(現在は凍結していますが)して経営再建していくという成長戦略は、ストーリーがあって好きです。 今回は、直近の決算発表を踏まえ、ライザップ社の現在の状況を知りたくなったため、以下につ