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バーガーキングの広告は何がマズかったのか?byキンコン西野

このnoteは2020年2月1日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:今井 悠貴 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日はですね、
バーガーキングの広告は何がマズかったのか?
というテーマでお話したいと思います。

戦に勝ちたければ、戦をするな。戦をしたら、トドメは刺すな。

基本的に、僕は時事ネタを取り扱わないのですが、そのネタが普遍的な議題だった場合だけ取り扱って考えていこうと思っているタイプでして、今日がそれですね。

いまネットをざわつかせているバーガーキングの広告の件についてなのですが、ご存知ない方のために改めてバーガーキングさんがどういったことをされているかっていうのをご説明させていただきますとですね。

秋葉原のマクドナルドが閉店したんですね。

で、そのマクドナルドが閉店のお知らせと、「22年間ありがとうございました」っていうメッセージを店の前に出したんですけど、

そのマクドナルドの2軒となりのバーガーキングが、そのメッセージ広告とまったく同じデザインで「22年間たくさんのハッピーをありがとう」というライバル店のマクドナルドに向けたメッセージ広告を店の前に出したんですよ。

バーガーキングからマクドナルドへのメッセージ広告ですね。

わざわざバーガーキングが作ったわけですよね。そのメッセージ広告を。

で、内容はですね、

「私たちの2軒となりのマクドナルドさんが今日で最終日を迎えます。
互いによきライバルとして秋葉原を愛する仲間として、近くにいたからこそ私たちも頑張ることができました」

的なはなむけの言葉ですね。

なんか「今日ばっかりはマクドナルドに行ってください」みたいなことも書いてあるんですよ。あっちの店に行ってくださいと。最後ですんでって。

これ自体はとっても素敵なメッセージじゃないですか。

ただ、このメッセージをですね、縦読みすると「私たちの勝ち」になるんですね。

バーガー

すっごいいい言葉書いているんだけど、それを縦読みすると「私たちの勝ち」に読めてしまう。

今日は、この広告に関して個人的な感想と、ビジネスの観点から考え、ふたつにわけてお話したいと思います。

まず個人的な感想としては、バーガーキングvsマクドナルドの広告合戦ってずっと続いていて、けっこうおもしろいんですよ。

それこそハロウィンのときとか、バーガーキングがマクドナルドに店ごと仮装してですね、仕掛けたことがあったんですよ。

こういうのってジョークがきいていて最高なんですね。

ただ、そういうパンチを打っても、みている側もおもしろがれるのは、基本的には相手が立っているとき。

ボクシングと一緒で、相手が立っているときならパンチしてもショーとして見ていられる。

今回に関しては、「ざまあみろ」がにおうアクションが好きではないのはあるんですけど、今回は特に、持ち上げておいて実は「ざまあみろ」っていう終わり方だったので。

非常に稚拙で下品だなと思いました。

もし僕がバーガーキングで働いていて、上司がこの広告で決定をだしたら、その日に会社やめると思います。

やっぱりライバルの傷口に塩を塗ることをおもしろがる上司、職場は尊敬できないので、すぐやめますね。

個人的な感想としては、今回のバーガーキングの広告は、近年まれにみる最低な広告だったと思います。

で、ここからがビジネス的な観点の考え方になるんですけど、

僕がバーガーキングのリーダー、店長だったら、もっとエグく圧倒的に結果を出しに行くと思います。

基本的には「縦読みするとこうでした」って見せ方ってダサいし古いと思っているんですが、もしそれをするなら、見せ方はまったく逆にします。

2軒隣で店頭にまったく同じデザインのメッセージ広告が並んでる時点で、通行人は「おやっ?」となりますよね。

その時点で通行人の目線は奪えているので、マクドナルドの「これまでありがとうございました」という広告に対するバーガーキングが出すべき広告は「いつもありがとうございます」で、あくまでまずは自分の店の広告をしますね。

今日こんなことやってます、いまこれが安いです、みたいな。

隣がヘタっているにも関わらず、自分のとこの宣伝をバンバンしちゃう。

そこで若干嫌味っぽく見せておいて、その文章を縦読みすると「ありがとうマクドナルド、あなたがいたから頑張れた」みたいなかんじにするかな。

ちょっと長いから文章は整理するとして、いずれにせよ下げてから上げて終わりますね。

そうすることで、ライバルのマクドナルドのファンをもらえるので。

リーダーが狙うべき結果はこっちです。

これは勝利とは何か?って話になってくるんですけど、孫子の兵法とかに書かれているようなことですね。

たとえば、自国の兵士が1万人いて、相手国の兵士が1万人いて、戦争をおっぱじめて、何日もかけて傷つきながらも相手国の兵士を絶滅させました。

自国の生き残ってる兵士は5000人です、という状態。

これは負けなんです。

本当の勝利っていうのは、戦をせずに、つまり、自国の兵士をひとりも減らさずに相手国を降伏させ取り込むことですね。

なぜなら、戦は続くから。

目の前の相手に勝ったところで、すぐに横から攻め込まれてしまう。

そのときに自分のところの兵士が半分になってしまっていたら、2試合目で負けてしまうんで。

バーガーキングのライバルはマクドナルドだけじゃなくて近隣のすべての飲食店なので、2軒隣のマクドナルドにとどめを刺して評判を下げてる場合じゃないってことですね。

あともう一点、窮鼠猫を噛むじゃないけど、勝敗がついてるのにとどめを刺すと、その残党から恨みをかってかならずまたやり返しにくる。

その対応にまたコストがかかってしまう。

本来かけなくてよかったコストですね。

これはやっちゃダメですね。

わかりやすくいうと、ワールドベースボールクラシックでしたっけ。野球の世界大会みたいなやつ。

で、日本に勝利した韓国がピッチャーマウンドに国旗を立てたの覚えてます?

国旗立てたんですよ、韓国チームが。

あの瞬間、日本中が韓国チームを嫌いになったと思うんですね。
韓国を応援してる日本人が極端に減ったと。

つまり、あれは韓国の負けなんですね。

むちゃくちゃ練習して血の滲むような努力もして、試合で結果をだして期待にこたえたにも関わらず、勝敗をついた相手にトドメを刺したから、韓国チームの応援者が減った。

トドメを刺すって行為は負けなんですよ。

これは覚えておいたほうがいいと思います。

よく梶原くんから「世間や同業者があれだけ西野のことを叩いていたのに、あるとき綺麗さっぱり手のひらを返した。それに対して、お前こら!ってならないの?なんでやり返さないの?」って言われるんですが、

いまの話じゃないけど、トドメは刺しちゃダメなんですよ。

論破したらかならずまた反対分子が生まれるから。

勝負がついたときは、相手国の人たちを徹底的にケアする。
これが戦の基本ですね。

これはビジネス関係、人間関係、すべてに言えることだと思います。

あと最後にね、わーっと言いましたが、きちんとお伝えしておきたいのは、今回のバーガーキングの広告は個人的にもビジネス的にもかなりひどいと思いましたが、それはあくまで広告の話であって、バーガーキングの味やサービスとはまったく別の話でね。

あいかわらずバーガーキングはおいしいし、サービスは最高なので、引き続き利用させていただこうと思います。

というわけで今日はですね、
バーガーキングの広告は何がマズかったのか?
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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