クリエイターの育児放棄問題
このnoteは2020年5月5日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:上杉 拓也 さん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日はですね、
「クリエイターの育児放棄問題」
というテーマでお話したいと思います。
「予約スタート」のタイミングに明確な意図はあるのか?
今日は、クリエイターさんやクリエイター志望の方に向けて、普通にやった方がいいことなのにみんな意外とやってないなーと思うことについてお話ししたいと思います。
もちろんクリエイターさんなら「表現」については、もう絶対むちゃくちゃ頑張らなきゃいけないし、120点のものを作らなければならないですが、今の時代を生きるクリエイターさんには、自分の表現以外の部分でも、最低限持ち合わせておかなければならない能力があると思います。
それは「売る力」、販売力です。
一昔前なら、クリエイターが「売る」という領域に口をはさんだ瞬間に「金に目がくらんだやつ」みたいな感じで銭ゲバ扱いされてたんですね。
自分が産んだ作品を一人でも多くの人に届ける努力って、愚直で責任ある行動だと思うのですが、実際は汚いことのように扱われていました。
「それは事務所の仕事であってクリエイターの仕事ではないだろう」とか、「クリエイターはクリエイターらしくモノだけ作っとけよ、そっちのほうが美しいじゃないか」という 論調ですね。
クリエイターがモノを作って事務所やマネージャーが売るというのは、理想だし、一番かっこいいことだとは思いますが、ここが非常に重要なポイントなのですが、事務所やマネージャーも老化してしまうんです。
次第に現代マーケティングに反応出来なくなるんです。
一番多いパターンは、一時代前に結果を残したような事務所が、その勝ちパターンから抜け出せずに時代に取り残されて、所属タレントもろとも沈んでしまうというものです。これは本当に多いですね。
そのようななか、吉本興業って、なんじゃかんじゃすごいなぁと思う。
あ、僕は別に吉本の回しものでもないですよ。僕は多分、吉本芸人の中でもトップクラスに吉本と仕事してない人間なので、回し者ではないのですが。
やっぱり客観的に見て、吉本興業すごいなぁと思うのは、一昔前も二昔前も結果を出していたはずなのに、今なお貪欲で、それこそ去年か一昨年に「吉本初のクラウドファンディングのプラットフォームを作りましょうよ」という提案をしたら、二つ返事で OK だったんです。
「えーどうしようかな」みたいなことじゃなくて、「かくかくしかじかこういうことで、吉本興業は自社でクラウドファンディングのプラットフォームを持っておいたほうがいいですよ」みたいなことを提案したら、本当に二つ返事でOKで、翌週には開発がスタートしたぐらいの感じでした。
それ、凄くないですか?
100年以上の歴史がある会社がそういうスピード感でやっているのです。
やっぱり、なんじゃかんじゃ社長の岡本さんと会長の大崎さんが、非常に優秀だということはやっぱりあると思うんですね。評判は悪いですが。でもやっぱり、非常に優秀なのだと思います。
結果、コロナの自粛期間中であろうと、吉本芸人は吉本のクラウドファンディング『SILKHAT』を使って、今、どんどん仕事を作ってるんですね。
今、「タレントさんが仕事なくなってる」みたいに言われているじゃないですか。
吉本芸人の『SILKHAT』を見ていただきたいのですが、もうそこで仕事バンバンとっているんです。
今回は、この辺りで、事務所の差が大きく開いたなぁと思っています。
コロナが来ようが来まいが、オンラインの需要は増えていたのだから、もともと本来であれば、経営の重心をそちらにずらしておいてもよかった。
なのに、そこに全く手をつけなかったおかげで、今回急にオンライン化を迫られて、右も左も分からないまま、見よう見まねで「やれユーチューブだ、やれ無料公開だ」とするから大きな成果が出なかったりする。
ここは、前々から動いていた事務所と、今回慌てて動いた事務所の大きな違いですね。
当然、年老いた事務所にまかせっきりだと、クリエイターやタレントは事務所もろとも沈んでしまうので、やっぱり結論、個々人が自分や自分の作品を売る能力を身につけておかなければんらないと思うんですね。
ちなみに、クラウドファンディングのイロハなんて、本当ならクリエイター or表現者1日目に、体に叩き込んでおかなきゃいけないことですよ。
2020年にもなって「クラウドファンディングってどうやるの?」とか言ってたら、もうマジで、おじいちゃんです。
この辺は、僕が数年前に出した『革命のファンファーレ』という本を選んでください。あれさえ読んでおけばとりあえず大丈夫です。
なので、クリエイターは「売る」っていうことと真面目に向き合わなければならないよということが、今日の前半の話です。
この話をした上で、後半戦に入ります。
結構な数のクリエイターさんがやってしまっていることがあって、それは何かというと、作品の制作過程でポチれるボタンを用意していないということです。ここでかいですね。
大体、クリエイターさんが作っている作品がポチれる、お買い物できるボタンが現れるのって、完成or発売日の少し前なんですよ。
書籍の場合なら、Amazonだとめちゃくちゃ早くて、発売日の2ヶ月前とかに予約でポチれるページが立ち上がる。
ここでクリエイターさんに聞きたいことは2つですね。
一つ目の質問は、その作品はいつから作っていたか?
二つ目の質問は、その作品を作っていることをいつから公表していたか?
作っているものにもよりますが、この2つの質問を聞くと、平気で半年前とか1年前、場合によっては、2、3年前ということもあると。
そういう返事が当たり前に返ってくるんですね。
1年前から本を書き始めて、その時から新作の執筆をスタートさせましたという発信をしていたのにも関わらず、その作品が購入できるボタンが登場するのは、発売の1ヶ月前とかなんです。
つまり、1年前の段階で「欲しい」と思ったお客さんのニーズには応えてないんです。
半年前に買いたいと思ってくれたファンの方を無視しているという。
これすっごい機会損失でしょ。
みんな予約スタートをなんとなく、発売1か月前とかにしておいて、発売1ヶ月前に設定した理由を聞いても、誰も答えられないんです。
何かしらのデータに基づいた戦略ではなく、予約開始をなんとなく発売1ヶ月前にしてしまっているんです。これは厳しいことを言うようですが、理由が伴っていない行動は素人の仕事です。
たとえ思惑が外れようと、プロはすべての行動に理由がなくてはなりません。
でないと、成功と失敗の正確なデータが取れず、アップデートが出来ないからです。
すっごくベタですが、もし1年前から製作をスタートさせていて、そのことをSNSで公表しているのであれば、1年前から予約販売ページを自社でつくっておく。
自分のオンラインショップに予約販売ページを作っておいて、SNSを発信する都度、最後に予約販売ページのリンクを貼っておくといいと思います。
僕は今年の12月に『みにくいマルコ ~えんとつ町に咲いた花~(仮)』という新作絵本を出すのですが、その絵本の予約を二日前にスタートしたんですね。
つまり、発売の7カ月前から予約をスタートしたんです。
ありがたいことに、この二日で1000冊が売れました。
これを発売前日まで毎日ずっと、コツコツ続けて発売までに、2万冊ぐらい売ろうと思っています。
2万部の予約販売を確約していれば、初版部数が多く擦られるので、多くの書店に本が並んで、多くの人に届くということですね。
一番ダメなのは、お客さんがせっかく買いたいと思ってくれているタイミングで販売ページがないことです。
そういう機会損失は徹底的にカットしていくことが大切ですね。
作品を生む作業が出産であれば、作品を届ける作業は育児なので、育児まで責任を持った方が親としてはかっこいいと思います。
今日は自分の宣伝をしつつ、もっと真面目に売ろうというメッセージをクリエイターさんに向けて送ってみました。
というわけで、
「クリエイターの育児放棄問題」
というテーマでお話させていただきました。
僕も頑張るので、お互い一生懸命頑張っていきましょう。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
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