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多くの人が間違っている「価格設定」についてbyキンコン西野

このnoteは2020年4月23日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:菅野 涼 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「多くの人が間違っている『価格設定』について」
というテーマでお話したいと思います。

「安いから」売れるわけじゃない

昨日のオンラインサロンの記事で、日本人が最も苦手な「ブランディング」という作業について、なぜ日本人はブランディングが苦手なのか?なぜブランディングが今必要なのか?というお話をさせていただきました。

その話の中で一瞬だけ、商品の「価格設定」について言及したのですが、そこに関しては、僕のオンラインサロンが売りにしている「最新ビジネス」とか「最新エンタメ」の話でもなんでもなく、

普遍的な話なので、こちらのラジオで喋っても問題ないだろうなと思い、サロンで書いたことにプラスアルファして、深掘りしてお話ししてみたいと思います。

まず結論から言うと、

ほとんどの人が、商品とかサービスの価格を設定するときに「価格」というものを間違って取り扱っているということです。

例えば、以前、面白い実験をしました。

僕の会社のネットショップで、『えんとつ町のプペル』のサイン本を
2500円と3000円でそれぞれ別で売り出してみたことがありました。

売っているものは、全く一緒のサイン本です。

ただ、その商品を2つ並べて、値段を2500円パターンと3000円パターンで変えてみました。

この時、一つだけルールを設けました。

3000円の方の商品説明欄には「こちらの絵本の利益でまた絵本を買って、スラム街の子どもたちに絵本をプレゼントします」というアナウンス一部を入れたのです。

つまり、3000円の方の『えんとつ町のプペル』が4〜5冊売れると、スラム街の子どもたちに1冊絵本をプレゼントできるという建て付けです。

このようにして販売してみたところ、みんな2500円の方ではなく、3000円の方の絵本を買っていました。

ここから割り出される答えは何かというと、

お客さんは、買う理由が多い方を買うということです。

値下げをすると商品が売れるのは、安いから売れたわけではなく、安くなったことによって買う理由が増えたから売れたという訳です。

わかりますか。

値下げした安い商品よりも、買う理由が高い、高価な商品が隣にあれば、お客さんはそちらを買うということです。

なので、売れ残ったものを売るときに店主が考えなければならないのは「買う理由を増やす」ということです。

値下げした方が、買う理由が増えるのならば値下げは正解であるし、少し高くなっても付加価値をつけることによって、値下げした時よりも買う理由が増えるのであれば、少し高くするべきであるということです。

高いから売れない、安いから売れるではないということです。

買う理由の「総量」で売れる売れないが決定していて、その角度から価格を設計し、売り方を設計しなくちゃいけないということです。

これは今で言うと、「コロナの影響で苦しんでいます。助けてください」的なクラウドファンディングがいま乱立していますよね。

コロナショック当初は、パンチが入ったのですが、いまはもう飽和状態ですよね。

クラウドファンディングのタイムラインは「助けて」とか「助けよう」ばっかりじゃないですか。

当然、同じ味が続くと飽きますから、「助けて」だと、クラファンの場合だと支援する理由が落ちるんです。

これはリターンを安くしても無駄です。そういう問題ではないのです。

買う理由の「総量」の問題なのです。

昨日、『スナック吉本』『純喫茶吉本』という企画を吉本発のクラウドファンディングサイト『SILKHAT』にて立ち上げました。

芸人が zoom飲み会をする方が『スナック吉本』で、お茶会をする方が『純喫茶よしもと』です。

確か、参加者のお客さんは7人限定とかそれぐらいです。

この『スナック吉本』は、昨日1日で100万円以上の支援、売り上げが出ています。

これだって厳密に言うと、吉本興業や吉本芸人を「助けて」「助けよう」じゃないですか。

ただ、そういう打ち出し方をしていないんですね。

「芸人と少人数でオンライン飲み会ができますよ」という打ち出し方です。

もし僕がファンだったら、やっぱりテレビとか劇場に出てる芸人と6、7人で飲めるなら、少々高くてもそのプレミアム体験は買うと思います。

「買う理由がある」ということですね。

これが、「誰々芸人さんを助けよう」とか、「どこどこ劇場を助けよう」「どこどこのライブハウスを救おう」だとそれほど集まらないのですが、

こういうふうに打ち出すと、買う理由、支援する理由が増えるので、『スナック吉本』は1日で100万円以上という結果が出ました。

どのクラウドファンディングも、最終目的は同じなんです。

「助けて」だし、「助けたい」ですね。

その時に、本当に助けて欲しかったり、本当に誰かを助けたいと思うのであれば、この「価格」っていうものの意味、そして、お客さんは何にお金を出しているのか?というところの解像度を上げて、プレゼン内容を見直した方が良いと思います。

助けて欲しい時に「助けて」と言ってはダメなんですよ。

助けたい時に「助けたい」と言ってはダメなんですよ。

それが効くのは、繰り返しになりますが、まだ数が少ない時ですね。

要は、コロナが「わっ」となった時、一番最初にそれを言った人はパンチがありますが、もう今は、猫も杓子も「助けて」「助けて」なので。

当然、そのパンチはないですよね。

買う理由がないから、支援する理由が少ないからですね。

そのような感じで、商品やサービスの価格設定をしていきます。
いかに買う理由を増やすかという。

クラウドファンディングの場合であれば、いかに支援してもらう理由を増やすかということですね。

絶対に考えなければならないのは「理由の総量」ですね。

値段が高いからダメ、安いからOK ということではなく、買う理由、支援する理由の総量でしかないということです。

ちなみに話は変わりますが(それ程は変わりませんが)、最近ちょっと言われるので、説明しておきます。

この『スナック吉本』と『純喫茶よしもと』について、僕はあれをやることで1円にもなっていません。

例えば、ノブコブの徳井君が『スナック徳井』をやって、集めた分の10%が僕に入りますかと言えば、全然そんなことはありません。

これは完全に、人助け、会社助けでやっています。趣味です。

あとは、「人を助けるサービスはこうやって作るんですよ」というオンラインサロンの教材としてやっているというだけです。

実は、『スナック吉本』『純喫茶よしもと』は立ち上げからサロンメンバーと共有していました。

3日間ぐらいでババって作ったのですが、その3日間に何が起きたかということをオンラインサロンで共有して、そのスピード感や、「ここに配慮するんだよ」ということを見せるためにやっているものなので。

あれ自体で自分のところに1円でも入ったということではありません。

なんか、吉本興業がニュースリリースするときに勝手に、僕を『スナック吉本』の「ママ代表」みたいな感じにしたので、そういう誤解がちょっと生まれたのかもしれないですが、

『スナック吉本』『純喫茶よしもと』は、別に仕事でも何でもない。
ただの趣味でしかないというところです。

というわけで、
「多くの人が間違っている『価格設定』について」
というテーマでお話させていただきました。

「買う理由の総量」というものを意識しなきゃいけないですよ、ということです。

大変な日が続いておりますが、頑張っていきましょう。西野亮廣でした。



※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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