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回収を急いで負ける人byキンコン西野

このnoteは2020年7月11日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供: みついかずひろ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「回収を急いで負ける人」
というテーマでお話しします。

必ず潰れる会社のリーダーの行動パターン

ずっと前から「面白いなぁ」と思っていることがありまして…

ただ、この話は「理屈でいうと完全に正解」だから、丁寧に話さないと強制力が働いてしまう。

まずは、僕自身、「強制は絶対にしたくない」ということと、これはくれぐれも、「僕個人の取り分を増やすことを目的で話しているわけではない」ということを先にお伝えしておきたいです。

少し周りくどい話し方で嫌ですが、フェアに行きたいので、僕の下心を先に話しておきます。

僕は、「自分の作品が広まればいい」と考えています。

広まりさえすれば、収益化するポイントは後からいくらでも作れるので、まずは「広まればいい」と思っています。

この一点。

これが僕の「下心」です。

なので、僕は自分の作品の権利を解放しているんですね。

『えんとつ町のプペル』にしても何にしても、「どうぞどうぞ使ってください」という状態にしています。

もちろん「著作権」というものはあるのですが、その権利を行使するのは「道徳的にどうなの?」という時と、そこで問題があった時に大きな責任が運営母体の方にのしかかって来る場合のみです。

たとえば、「えんとつ町のプペル幼稚園」というのが勝手に作られて、そこで虐待があったら「キンコン西野の幼稚園で虐待」というニュースになるわけじゃないですか?

そこで、僕が「いやいや、あれは運営母体が違っていて…」と訂正しても、おそらく世間はそれを聞き入れず、「えんとつ町のプペル=キンコン西野」として捉え、キンコン西野が手がける他のエンタメ・サービスに大きな影響を与えてしまう。

それは流石に具合が悪いので、そういうサービスに関しては「キチンと契約を結びましょう」となります。が、勝手にグッズが作られる分には目をつぶっています。

以前、「えんとつ穴のプペリン」というアダルトグッズが発売されていましたが、こういうのは面白がってシェアしちゃうやつです(笑)

あと、『ちん凸待ちのアナル』というタイトルのAVの企画が持ち上がっていると聞いて、最高だと思っていたりします。

 

で、ここからが本題です。

僕は、そんな感じで権利をナァナァにして、「どうぞどうぞ使ってください」「タダで使ってもらってオッケーで〜す」というスタンスでやらせてもらっているのですが、優秀な経営者さんほど、「売り上げの数%を受け取ってください」と向こうから言ってくるんです。

「タダで使っていい」と言っているのに。

でも、理屈で考えたら、そりゃそれが圧倒的に正解なんです。

だって、そのサービスの取り分を西野に渡したら、西野からすると「そのサービスが盛り上がれば盛り上がるほど、自分の取り分が大きくなる」わけですから、そのサービスを積極的に宣伝しますよ。

僕は生活費に困っている人間ではないので、そこで頂いたお金は、絵本を買って子供達に寄付させていただくか、被災地支援か何かに使わせていただきます。

ただ、そのサービスが盛り上がれば盛り上がるほど、子供達が喜んでくれたり、被災地の方が救われたりするわけですから、僕は、そのサービスを積極的に宣伝するでしょう。

積極的に集客のお手伝いをする。

そりゃそうですよね。

経営者なら、この算盤を弾くべきで、毎日コツコツとSNSで自分のお店の宣伝するぐらいなら、お店の売り上げのパーセンテージを西野に渡して、発信力がある西野にお店の宣伝をさせた方が、集客は増えるわけじゃないですか?

自分の取り分が増えるわけじゃないですか?

でも、未熟な経営者さんは、それをやらないんです。

「西野に取り分を渡す」って、結果的には『宣伝費』だと思うのですが、宣伝費をかけたくないから自分で発信をしちゃう。

これが大きな間違いで、「自分の発信」って無料じゃないんです。

そこに自分の時間を割いている限り、そこには目には見えないけど「時給」が発生しています。

別の売り上げを作る時間を削っているわけだから。

西野に宣伝させるのも、自分で宣伝するのも、結局、どちらもお金を支払っているんです。

この時の問題は、「自分の発信があまり見られていない」ということです。

せいぜい、数十人の身内しか見ていない。
これじゃ、お店は回らないんです。
つまり、広告効果のない広告枠をずっと買い続けている。

これって「いかに、自分のサービスの株をイイ感じに他人に持たせるか?」という話だと思うんですけど、「私が成功すれば得をする人」は「私」の応援を積極的にしてくれるわけじゃないですか?

だったら、そういう人たちを、一人でも多く作った方がイイのに、「私の店の売り上げは絶対に渡さない」「私の店の売り上げは、私のもの!」としてしまう経営者が少なくない。

そうすると、集客から何から、全部自分一人でやらなくちゃいけなくなるから、ジリ貧になる。

吉本興業のグッズの宣伝をしている吉本芸人って、見たことないじゃないですか?

劇場のグッズコーナーとかで「ノンスタイル井上のウチワ」とか置いているんですけど、ノンスタイル井上のSNSのタイムラインで、「ウチワ買ってくださ〜い」という投稿って見たことがないですよね?

そりゃそうなんですよ。

【ウチワの売り上げが井上君にほぼ入っていないから】です。
井上君からすると、そのウチワを宣伝する理由がない。

結果、グッス開発担当の吉本の無名社員が「ノンスタイルの井上さんのウチワが発売になりました〜」と、誰からも見られていない宣伝アカウントで、せっせと宣伝している。

その社員が宣伝にかけている時間に発生しているお金を、井上に渡して、「売れれば売れるほど井上が得をする」という状態を作って、井上に宣伝させた方が、自分達が得をするじゃないですか?

でも、これができない。

そこで「売り上げの数パーセントを渡す」ということを、『損』として捉えてしまう。

これって、メチャクチャ簡単な算数なので、どうして、そこで『損』だと思ってしまう人がいるのかが、僕は全く理解できなくて、昨日、ウチの会社の社長に話したところ、「絵本『えんとつ町のプペル』を無料公開した時も、そうだったよね」と言われました。

そういえば、そうだったんです。

あの時も、何度説明しても、全然伝わらなかったんです。

肌感でいうと97%ぐらいの方が、「絵本を無料で読めるようにしてしまったら、売り上げが落ちて、クリエイターが食いっぱぐれるじゃないか!」と批判したんです。

逆に聞きたいのですが、世の中に【無料で読めない絵本】なんてあります?

本屋さんに行ってみてください。
全ての絵本が無料で読めます。

だって、お母さんは、内容を確認してから絵本を買うから。
内容の分からない絵本を一か八かで買わないので。
だから本屋さんは「絵本の立ち読み」を容認しているわけじゃないですか?

これもメチャクチャ簡単な算数で、「10人に立ち読みされる絵本と、1000万人に立ち読みされる絵本、どっちの絵本の方が売れますか?」という問題です。

今となっては、「無料公開」は販売戦略のスタンダードになりましたが、当時は日本中が批判したんです。

皆が批判しなくなったのは、無料公開した『えんとつ町のプペル』が爆発的にヒットした後です。

結果が出て初めて「ああ、そういうことなのね。じゃあ、私も無料公開しよう」となった。

しかし、絵本『えんとつ町のプペル』を無料公開する時に、秋元康さんと、FR2の石川涼さんと、SHOWROOMの前田裕二さんに相談したところ、三人とも即答。

「絶対に無料公開した方がイイ」だったんです。

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「無料にした方が売り上げが伸びるし、それによって、その作品に携わっているスタッフさんおよびご家族が救われる」と。

要するに、世の中には「ポイントで売り上げを見る人」と「お金の流れで売り上げを見る人」がいる。

「ポイントで売り上げを見る人」は、「自分が稼働した直後にお金が入って来なかったら損」と考えてしまう。

「どうすれば成功するか?」という問いには即答できないのですが、「どうすれば失敗するか?」という問いには即答できて、結論、「ポイントで売り上げを見るようにすれば失敗します」。

会社を潰しているリーダーは見事に全員これです。

もし、経営をされるのであれば、ここは押さえておいた方がイイと思います。

というわけで、
「回収を急いで負ける人」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


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※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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