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サービス提供者は何に気をつければいいのか? by キンコン西野

このnoteは2020年4月5日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: やきいもケンちゃん 

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「サービス提供者は何に気をつければいいのか」
というテーマでお話します。

応援疲れを起こさせるな

サービス提供者というのは、僕たちのようなエンターテインメントを作る人間から、飲食店、美容室、眼鏡屋さんなど、サービスを提供する人全般を指します。

今回は、「そのような人達が気をつけるべきことは何か」というすごくざっくりしたテーマですが、これには明確な答えがあります。

僕は、サービスとして色々なお仕事をしていますが、その中のひとつであるオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』は月額1000円です。

僕はこれをメルマガとしても機能するようにしておこうと考えていて、読み物として面白いものでありながら、毎日2000文字か3000文字の記事を投稿すると決めた上で、月額1000円に設定しています。

オンラインサロンは、大体月額3000円や5000円、場合によっては1万円というところもあるので、「西野さんのサロンは安すぎないですか?」と聞かれることがよくあります。

「なんでそんな安い値段にしてるんですか?もっと10倍とかにしていいじゃないですか」といったことをよく言われるのですが、僕がオンラインサロンを1000円にしている理由について、ご説明します。


まず僕は、詐欺師は本当に頭が悪いと思っています。基本、被害にあった人は二度と同じ手にはまらないわけです。

そう考えると、詐欺師がやっていることというのは、一生懸命自分のお客さんを減らし続けることです。騙す人が増えれば増えるほど、残りの騙される人の数は減っていきます。

つまり、ずっと新規顧客を開拓し、人を騙し続けなければいけないのです。

これは、どこかで限界がきます。例えば、その国に10人しか人がいなかったら、10人騙した時点で、このサービスは終わってしまいます。

新規顧客を探し続けなければいけないということは、つまるところ、残っている人数をどんどん減らしていくことを意味します。また、バレたら捕まるわけです。詐欺師のこのやり方は、とてもコスパが悪いのです。

今更言うまでもないですが、顧客の増やし方は、新規顧客1人に対し、抜けてしまう顧客の人数が1人未満だと増えるわけです。

1人が入ってきて0.9人が辞めたら、その瞬間に顧客は増えます。2人が入ってきて1人が辞めたら、顧客は1人増えるという状態です。

自分の発信が届く範囲には限界があるので、大切なことは新規顧客を増やすことよりも退会率を下げること、つまりファンを辞める人を減らすことです。ファンに支えられてる表現者、およびサービス提供者がやらなければいけないのは、このポイントです。

言い換えると、応援し続けてもらうために、一番気をつけなければいけないことは、応援疲れを起こさせないということです。応援に疲れたら、応援することを辞めてしまうでしょう。

なので、僕の場合は、「全てを投げ売って西野さんを応援する」という熱烈なファンを作ってはダメで、僕が提供するサービスは、熱烈なファンができてしまうような設計にしてはいけないと考えています。

熱烈なファンができているということは、良いサービスを提供しているということで、結果的にそれはお客さんに喜んでもらっているので、やってることは詐欺師の真逆です。
しかし、集客という観点からみれば、ファンの増減は詐欺師と似たようなグラフになっています。すなわち、辞める人が発生してしまうモデルだと言えるでしょう。

応援疲れが起こる原因の一番大きい理由は、お金です。

西野を応援することに毎月10万円が必要だという仕組みにしてしまうと、それは応援をやめるきっかけになるだけです。今月も10万円で、また来月も10万円という風に計算してしまいます。なので、僕のオンラインサロンの値段は1000円にしました。

お客さんの生活を想像しろ

あともうひとつ、サービス提供者が想像しなければならないのは、お客さんの生活です。これはとても大事です。

お客さんの生活として、架空の大学生、架空の主婦、架空のサラリーマンを自分の中で作って、おおよそで良いので、それぞれの家計簿をつけておくのがいいでしょう。

手取りうん万円の大学生が、今月あと2000円で乗り切らなければいけないとなっている状況にも関わらず、チケット代3000円のイべントを打ってしまうと、「西野を応援するのは大変だな」という感情が芽生えてしまいます。その瞬間、「ファンをやめようかな」という選択肢がちらついてしまいます。

時々、うちの田村Pが仕掛けたクラウドファンディングと、僕のクラウドファンディングの時期がぶつかることがあるのですが、ぶつかった時に、彼女は必ず「ごめんなさい」と謝ってきます。

彼女が謝っている理由はまさにそこで、僕たちが考えなければいけないのは、「クラウドファンディングを誰がやるか」ということよりも、「その支援がどのコミュニティーから集まっているか」ということです。

それが同じようなコミュニティだったら、財布は同じなわけですから、応援疲れを起こす要因になります。

田村 P がクラウドファンディングをやる際に、なるべく僕の企画から時期を離す理由はそこにあります。彼女のアクションが、場合によっては、西野の応援疲れにつながってしまうことを危惧して、なるべく離すようにしていると思います。

ちなみに、応援疲れというのはお金だけではなく、時間にも当てはまります。僕は、Voicyというラジオメディアの音源を YouTube にアップしていますが、このラジオを始める時に、少し渋ったのは「お客さんから時間を奪いすぎてやしないか」という部分を心配したからです。

つまり、西野を追いかけるのに、1日5時間かかるとかなると大変になってしまいます。それだけ時間をつくって西野を追いかけるのは疲れてしまいます。

そのため、サロンの記事、ラジオ、ブログを含めて、1日平均20分程度で済むように設計しています。お客さんの「可処分時間の奪い合い」みたいなことが言われていますが、 それはあくまで1万人から1分ずついただくという話であり、1人から1万分奪ってはいけません。

結果的に、それは応援疲れに繋がるので、そのような時間の奪い方はしてはいけないということです。

なので、僕は1日平均20分程度で済むように、なるべく移動中など、他の事をしながら、文章や音声を楽しめるように設計しています。つまり、その人の生産性を落とさない形で楽しめるように、エンターテイメントを設計しているのです。

サービス提供者は、ここの配慮や想像力を絶対に持っておいた方がいいと思います。


というわけで、
「サービス提供者は何に気を使えばいいのか」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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