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仕組みの作り方 ~モンスターを生まない教育~【キンコン西野】

このnoteは2024年7月25日のvoicyの音源、『CHIMNEY TOWN 公式BLOG』の内容をもとに作成したものです。


 
 

「エンタメ体験」にお金を払えない人達や赤ちゃん連れの参加を諦めたくない

 
先にお伝えしておくと、今日の話は少し長くなるので、前半を通常回で、後半をプレミアム放送でお話したいと思います。
 
通常回だけでも聴き応えのある内容にしますので、「プレミアム放送に誘導しやがった」と怒らずに聴いてください。
 
それでは本題です。
 
かれこれ24年ほどエンタメ屋をやっているのですが、エンタメを作るには予算が必要で、テレビやYouTubeは広告ビジネスなので、お客さんが参加料金を払うことはありませんが、これが「イベント」になってくると、そういうわけにはいかなかったりします。
 
その時に溢れてしまうのが、いろんな事情から「エンタメ体験」にお金を払えない人達で、とりわけ「シングルファミリー」と「多子世帯」は、イベントへの参加が難しかったりします。
 
それとは別で、「赤ちゃんが生まれたばかりのお父さんお母さん」も「他のお客さんに迷惑がかかるから」という理由からイベント参加を諦めなきゃいけなかったりします。
 
誤解があってはいけないので、ここで世の中のイベント屋(クリエイターさん)の気持ちを勝手に代弁させていただきますが、彼らは彼らで、「シングルファミリー」や「多子世帯」、あるいは「赤ちゃん連れの親子」を『切り捨てたい』なんて1ミリも思っていなくて、そりゃ「できるなら参加して欲しい」と思っています。
 
ただ、予算の問題や、仕組みの問題や、音の問題やらを考慮すると、「これ以上は受け入れられません」という判断をせざるをえない。
 
「彼らに悪気があるわけでも、彼らがサボっているわけでもない」ということを、まずは皆さんと共有しておきたいです。
 
その上で、(自分の家が多子世帯だったのもあって)やっぱり僕はそこを諦めたくなくて、徹底的に抗いたいと思っていますし、クラウドファンディングやらオンラインサロンといった選択肢ができた今の時代なら、抗えると思っています。
 
 

世界中のエンタメ屋が解くことができずに諦めてきた問題をクリアするチャレンジ

 
そんなこんなで来年の夏におこなうファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』の日本公演では『ファミリー応援シート』と称して、「シングルファミリー」や「多子世帯」の子供達を無料招待することに決めて、加えて、赤ちゃん連れのお父さんお母さんに向けて『膝上席』というものを設けさせていただきました。
 
これを実現する為には、世界中のエンタメ屋がこれまで解くことができずに諦めてきた本当にたくさんの問題をクリアしなきゃいけないのですが、その中でも、「これらの問題を解く為の仕組み」を作るのがメチャクチャ大変で、表に出ているところでいうと「そのチケット、どうやって売るん?」という問題がある。
 
ぶっちゃけ「オールスタンディング」なら簡単なんです。
 
将棋倒しなどの事故が起きないように人数の上限を決めて、チケットを捌けばいいだけなので。
 
もちろん無料チケットがたくさん出てしまうと、その分の赤字は膨らみますが、それも言ってしまえば「あとは予算の問題をクリアするだけ」です。
 
ただ、今回のように「座席」があると、そういうわけにはいかない。
 
たとえば、今回は『膝上席』を全て通路側に設定しているわけですが、その膝上席を含む椅子の並びが「一列=10席」だった場合、『膝上席』の方を購入された方が、さらに子供を3名連れてきたら、それだけでまず4席が潰れてしまいます。
 
その列の反対側の端も『膝上席』になるわけですが、そこもまた別のお客様が、『膝上席』を購入して、さらに子供を3名連れてきたら…これで、一列(10席)のうちの両端が4席ずつ潰れるじゃないですか?
 
そうすると、間に2席しか残らないですよね?
 
こうなった時点で、まずこの席は3人グループには売れなくなる。
 
加えて(ここがポイントです!)、この間の2席を購入された人からすると「両サイドに子供がいる」という少し騒がしい環境になるわけで、「ここを他の席と同じ値段で提供していいのか?」という問題が出てくる。
 
そこで僕らは、その「両サイドが『膝上席を含む家族連れ』になってしまった席」をワンランク下の値段で提供することにしたんです。
 
そこがS席であれば、A席の値段で提供することにしたんです。
 
こうしてしまった場合、「S席とA席の発券枚数が『膝上席』が埋まるまで決められない」という地獄が待っています。
 
この他にも(こうして説明しないかぎり)表には見えない地獄問題が山ほどあるのですが、「これら全てをクリアしてやろう🔥」というのが今回のチャレンジです。
 
 

オンラインサロンをやっていて良かったこと

 
そんな中、昨日は「オンラインサロンをやっていて本当に良かったなぁ」と思ったことがありまして…繰り返しますが、僕らが提唱するレベルの『ファミリー応援シート』を過去に仕掛けたエンタメ屋が一人もいないので、僕らはチケット販売の仕組みから開発しているわけですが、仕組みを開発する時って、どれだけシミュレーションを繰り返しても、どこかで必ず不備が出てくるんです。
 
「大人席2枚、子供席3枚」と入力したのに、なぜか合計で「10枚」になっていたりなんかして、その都度、「どこでエラーが発生しているんだ?」「何と何が紐付いちゃってるんだ?」みたいな捜索活動を始め、一つ一つ潰していかなきゃいけない。
 
リリースしてからも改善を繰り返さなきゃいけないのがサービス開発の宿命なのですが、これが「こと、チケット販売サイト」となると、不備があった場合のダメージがデカすぎる。
 
「チケットを購入したのに、当日、席が用意されていなかった」とかなったら、そりゃもう大変なわけで。。
 
なので、今回のチケット販売ページは一般にリリースする前に、まずはオンラインサロンの方で「先行販売」という形でリリースして、「サロンメンバーからフィードバックを貰う」というのを昨日一日やりました。
 
そこで、やっぱり不備は見つかったのですが、その段階で見つかったのでメチャクチャ助かりました。
 
これ、僕が吉本興業に所属している時に、吉本興業のクラウドファンディングを開発したのですが、その時もオンラインサロンで数千人に参加してもらってテスト&フィードバックを貰ったんです。
 
オンラインサロン(あるいはDAOのようなコミュニティー)を持っていない人は、こういったテストができないので、かなり大変だと思います。
 
 

「仕組みの開発」と「教育」はセット

 
ま、こんな感じで、時々、僕は「仕組みから開発する」ということをやっているわけですが、こういうことをしていると、必ず出てくるトラブルが二つあります。
 
一つは、「お客さんに寄り添う仕組みを作った時に、神様のように振る舞うお客さんを生んでしまう」ということ。
 
たとえば、今回の場合だと「友達の家族と並びで座れますか?」みたいな声が出てきちゃう。
 
今回はあくまで、シングルファミリーの支援であり、多子世帯の支援であり、赤ちゃん連れのお父さんお母さんの支援をするための仕組み作りであって、Aの家族とBの家族のマッチングサービスの開発じゃないんですね。
 
だけど、これ、気持ちはすごく分かるんです。
 
友達の家族が近くに入れば、お互いの家族の子供達をフォローし合えるし、それこそが「ファミリー支援」だと思うんです。
 
ただ、それは(今回においては)「求めすぎ」で、サービスを提供しすぎると、この「求めすぎ」が一定数発生してしまう。
 
これは会社が若手社員に気を遣いまくった結果、自分の意見を尊重するだけの無能な社員を量産してしまう問題と似ていて、「挨拶をしない自由があってもいいハズだ!多様性の時代なんだから!」という若手が出てきたら、「ならば、そいつをクビにする自由もあっていいよね」と西野は返すので、そういった「求めすぎるスタッフ」はウチにはいません。
 
優しい仕組みを開発する時は、「お客さん教育」や「社員教育」も同時にやらなきゃいけなくて、端的に言うと「ここまでは俺の方で頑張るから、ここから先はそっちで頑張ってね」というラインを共有しなきゃいけない。
 
このラインを共有しないと、モンスターお客さん、モンスター社員を生んでしまって、優しい仕組みを提供する側のリソースが大幅に削られてしまう。
 
ので、「仕組みの開発」と「教育」はセットですよ…というのが今回の一つ目のお話です。
 
そして、二つ目(後半)の「外形と例外は別で議論しよう」というのは以前、米山議員が、論破に狂うひろゆきサンを諭す時に使った名文句なんですが、今日のプレミアム放送ではこれについてお話ししたいと思います。
 
後半(外形と例外は別で議論しよう)はコチラから↓

 
 

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