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タレントのオンラインサロンが上手くいかない理由byキンコン西野

このnoteは2020年6月12日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:板倉 正明 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「タレントのオンラインサロンが上手くいかない理由」
というテーマでお話しします。

オンラインサロン=「売上が安定する」ではない

今日はオンラインサロンの話ですね。

僕はオンラインサロン内で発信するコンテンツを充実させることに注力しているんですね。

「映画」みたいなイメージで、まずは映画館で流すために全力を出し切る。

そして、映画館に足を運んでくださった方を本気で満足させる。

その映画を2、3年後にテレビで公開する。という流れですね。

テレビで『君の名は』が流れている頃に、映画館では『天気の子』をやっているみたいな感じで、新ネタは常にサロンの方で流しています。

もちろん今からお話しする内容も2、3年前の情報ですね。世間の人が見られているキングコング西野というのは、2、3年前の姿です。

僕はここでは昔話しかしていないので、そのような認識でお付き合いいただけると嬉しいです。

まずは、常々お伝えしておりますが、オンラインサロン運営って難易度が高すぎるんですね。

多くの方が、「サブスクリプション」というモデルを「売上が安定する」みたいな感じで捉えていて、そこが一番の魅力だと思われているわけですが、

オンラインサロンなんていつでも退会できてしまうので、売り上げが安定する訳がないんですね。

退会理由が「Netflixと比べて〜」とかだったりするし、サブスクの強豪って強すぎるんですよ。

サロン会員をSNSのフォロワーのように捉えている方もいらっしゃいますが、今申し上げたように、サロンは退会される方が多くいらっしゃるんですね。

SNSは基本的にやめないじゃないですか。TwitterやInstagram、Facebookのフォロワーって基本的に減らないじゃないですか。

一方で、サロンは退会される方がいらっしゃるので、SNSのフォロワーを増やすこととは似て非なるものなんですね。

僕のサロンが参考になるかわかりませんが、たとえば僕のサロンだと毎月2000人ほど退会されます。

ちなみにこれでも、他のサロンに比べて退会数はめちゃくちゃ低い方です。

この条件でサロンの規模を維持しようと思うならば、僕の場合だと毎月2000人の新規会員がいないといけないのですが、「自分の発信が届く範囲内」にいる人の数に限りがある以上、新規会員の獲得は日に日に難しくなっていくんですよ。

やめてしまった2000人は、新規会員や再入会の対象にはならないじゃないですか。やめてすぐ「来月入ろう」とはならないですよね。

なので、新規会員の対象に「ならない」人が毎月増えていくというイメージですね。

サブスクは、こことの戦いです。
新規会員を対象にならない人が毎月増えていってしまうんですね。

タレントさんがオンラインサロンをやるのは難しすぎる

最近、「オンラインサロンが盛り上がっている」という話を聞きますが、これは立ち上げる人が増えているだけの話で、上手くいっているサロンは1%未満だと思います。

ここで言う「上手くいく」の定義は、マクドナルドのアルバイトよりも時給が良いということです。

このことを踏まえた上で、「タレントのオンラインサロンが上手くいかない理由」についてお話ししたいと思います。

現在出ている結果をお伝えすると、有料オンラインサロンのトップ10にはタレントさんのオンラインサロンは入っていないんですね。

テレビで人気のあの人のサロンも、ファンをたくさん抱えているアーティストさんのサロンもランクインしてないんですよ。

なぜ上手くいかないのか?

絶対に上手くいかないということはないし、やり方はあるのですが、それを再現するのが難しすぎるんです。

結論はすごくシンプルで、サロン内に投稿する「ネタ」がなくなるということですね。

そのタレントさんの情報だけを知りたければ無料のブログでいいわけで、有料ならばプラスアルファのバリューを載せなきゃいけないわけです。しかも、濃度の高すぎる情報を提供し続けなければならない。

タレントさんって基本的に露出しないと食っていけない生き物だから、1000人いれば1000人のタレントがレギュラー番組を欲しがります。

その下心を視聴者も知っているので、世の中的にも「レギュラー番組の本数」がそのタレントさんのステータスのようになってますよね。

ただ、レギュラー番組が多いということはルーティン仕事が多いということであり、行く場所や会う人が固定されてきます。

行く場所、会う人が固定されてしまうと、インプットできる情報が極端に減っちゃうんですね。

当然、インプットがないとアウトプットはできません。

先日もお伝えしましたが、多くのタレントさんが取り扱っている情報って「情報」ではなく「トークテーマ」なので売り物にならないんですよ。

「○○さんの不倫が正しい」とか「○○さんの不倫に対して私はこう考えています」というトークテーマに月額課金する人なんていないじゃないですか。

サロンを運営するには常に情報を出し続けなきゃいけないんです。

だけど、タレントさんは職業柄「情報」というものを取り扱っていない上にレギュラー仕事が増えれば増えるほど新しい情報が減るので、普段の活動とオンラインサロンの運営が矛盾してるんですね。

「マラソンランナーをしながらお相撲さんになる」みたいなことです。これはどっちが間違っているということでも、能力が低いということでもなく肉体作りに矛盾が発生しているということですね。

ここで「うちのサロンは情報云々じゃなくて月1の交流会がメインなんだ」という考えが出てくると思うのですが、それはそれでさらに無理ゲーだと思います。

交流会に参加できる人って、基本は都内の人じゃないですか。

そうなると、都内在住のサロンメンバーと地方在住のサロンメンバーに差が生まれてしまうので、同じ料金を支払っているのに地方のメンバーが損になってくるので、地方のメンバーは退会してしまいます。

その場合、新規会員のターゲットは都内在住の人になってくるわけですが、都内のメンバーも「つまんねー」となれば退会するわけですから、今度は新規会員の対象は都内在住の人である上に、新規会員の対象にならない人が毎月増えていくという極めて厳しい状況になり、手詰まりとなります。

「実際に会えます」を全面に押し出したところで、この落とし穴にはまります。

その欲を手放せるか

結論として、濃度の高い情報を発信し続けるしかないのですが、それをやろうと思うならばレギュラー番組を捨てなければならない。レギュラー番組のオファーが来ても断らなければならないのです。

収入を安定させたくてオンラインサロンを始めようとするマインドを持っている人が、収入の安定が約束されているレギュラー番組のオファーを断れますか?

レギュラー番組のオファーを断ってオンラインサロン始めたところで、上手くいくかどうかわからないんですよ。

安定を求める人なら尚のこと、レギュラー番組を選ぶと思います。

ここでは、マインド面の矛盾が発生しているんですね。

話をまとめると、不可能とは言い切れませんが、タレントさんがオンラインサロンをやるのはむずかしいです。

オンラインサロンを上手くやろうと思うならば、今持っている仕事やマインド、様々なものを手放さなければならないので。

それができますか?というところですね。

ちなみに僕はできますよ。そもそもの目的が「芸能で食っていく」ではなくて「エンタメで世界を取る」なので。

そのためなら「向こう30年間テレビに出れなくてもいい」という人間なので、僕はできます。

タレントさんのオンラインサロン運営は「手放せるか」という問いが、喉元に突きつけられているのだと思います。

ここが一番厳しいだろうなというところですね。

無理ではないですが、ちょっと厳しいというのが僕の結論でございます。

というわけで今日は
「タレントのオンラインサロンが上手くいかない理由」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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