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「お笑いしてますよ」の言い訳をつくると「お笑い」に繋がらない by キンコン西野

このnoteは2019年11月6日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
提供:福島悦子さん

おはようございます。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり
国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

カジサックに夢中

さあ今はですね、朝の9時を回ったところなのですが、

実は朝ずーっとカジサックの YouTube の動画を見漁っていたんです。

いやー面白いですね。僕、カジサックのファンで。

お笑いの話をずっとしてくれるので、ずっとニヤニヤしながら見させてもらっています。

昨日、一昨日かな。テレ東の佐久間さんがゲストで来られていて。

佐久間さんとは、今だとゴッドタンだったり、前だと『キンコンヒルズ』という番組をご一緒させていただいていたので、関係は長いんです。

そこでまたお二人がお笑いの話をしていて
「あぁ、お笑いっていいなぁ」って
改めて思った次第です。

それは『逃げ』だ

というわけで今朝はですね、
「『お笑いしてますよ』の言い訳を作るとお笑いにつながらない」
というテーマで、ちょっとお笑いの話をしてみたいと思います。

自分の話をですね、ちょっとだけさせていただきますと・・

小学校2年生の時にテレビでお笑い芸人さんを見て
「あぁ、僕もこういう仕事したいなぁ」と思って
そのまま寄り道することもなくですね、
今に至るわけですけど。

高校卒業してすぐに吉本に入って、
エンターテイメント、人が笑う現場になるべくいたいなぁと思って
まあ今に至るんですけどね。

どういうふうに皆様に映っているかはちょっと分からないですが、だいぶお笑いが好きな方だと思うんですね。

でやっぱ常日頃、どうすれば芸人として面白くなれるかなっていうことは、恥ずかしい話ですが、考えるんですね。

「芸人って何なんだろう?」
「どういう風に立ち振る舞えば、僕は5年後も10年後も20年も30年後も芸人を続けることができるのか?」
「そのためにやっとかなきゃいけないことは何なのか?」

ということをですね、
もうデビューしたその日からずっと考えているんですね。

で、まああれやこれやとやっているうちに
いろんなところでお呼びがかかるようになってですね、
いろんなお仕事をさせていただくんですけど、

例えば・・・
今だとあんまりないのかな、
昔よくあったのが・・

絵本とか書いてるとよく飛んでくる批判がですね、
「芸人が絵本を書きやがって」みたいな。

しかもその絵本もね、
例えば、お笑いに関する絵本だったら、
なんか小ボケとツッコミがあってドヒャーみたいな『お笑い絵本』だったら、
世間の皆様は納得してくれたと思うんですけれど、

自分の絵本はボケとかツッコミとかありませんし、ギャグっぽいタッチでもないと。

「なにを芸人がそんな大真面目に絵本書いてるんだ」
みたいなことを結構言われたんですね、当時。

それだけでなくていろんな活動をしている先々でですね、
お笑いのこと以外のことをしていると
「お笑い芸人が何してんねん」
みたいなことをやいのやいの言われたんですけれど。

あの僕ね、
売れるのが非常に早かったんですよ。

デビューしてすぐにもう冠番組を持っていたし、MCから入っているんですね。あんまり、ひな壇みたいな経験がなくてですね。

基本MCスタートなんですね。司会からスタートしてるんですよ。
なのでMC側、イジる側の気持ちってすごいわかるんですね。
視聴者とイジられる人とイジる人の三者でいうと、イジる人だった
んです。1年目から。

そうするとですね、イジる人からすると一番助かるのは、上手にイジらせてくれる人ですよね。

でこの上手にイジらせてくれる人の共通点は何かというと、
『フックがある』っていうところです。

『イジリしろ』があるっていうことです。

「ここついたらこの人恥ずかしがるなぁ」とか
「ここついたらこの人のことをいい感じにバカにできるなぁ」みたいな、
フックがあるっていうことが非常に大事で、

逆に言うと、フックが一つもなくて
ただただ技量だけある人っていうのは、
まぁいてくれると助かることはあるんですけれど
その人だけでは番組は回らないなっていう感じはあるんです。

フックがある人って非常に助かるんですね。

っていう観点から見るとですね、例えば・・

僕この前後輩の一人とご飯に言ったんですけど、
編み物、毛糸で編んだりする編み物をしているっていう芸人の後輩がいて。

でその彼としゃべってて
「これ何かうまいこと使えないですかね?」
みたいに相談されたんです。

彼はチンピラみたいな見た目なので、
「チンピラキャラなのに編み物をしてる」みたいな感じが面白いと思って始めたらしいんですけれど、
「どんなの編んでるの?」って聞いたら、
「ピストルカバー」だと。
そんなの世の中にはないですけど、ピストルをカポって入れる用のピストルカバーみたいなものを作っていると。

でそれを聞いて彼に僕が言ったのは、
これは彼なりの「お笑い忘れてませんよ」っていう彼なりのポジション取りだと思うんですけれど・・

そんなことされてしまうと、
「僕、編み物やってますけどお笑いのこと忘れてませんから」
っていうスタンスを取られてしまうと、
お笑いのチャンネルでいじれない。

「お前何してんだよ!」って突っ込みたいのに
「お笑いやれよ!」って突っ込みたいのに
「いやお笑いをやってますから」っていう風に逃げ道をつくられちゃうと、お笑いのチャンネルでお笑いが作れないんですよ。

つまり編み物をしているのにいじれないんですよ。

これフックがないという状態ですね。

世間的には
「あの人、編み物しつつお笑いも忘れてないなぁ」
で納得が行くかもしれませんが、
じゃあお笑いの番組でそれって弄れないんですよね

で彼に言ったのは、

本当に編み物とお笑いとをくっつけたいのであれば、

その編み物でものすごい評価された方が
すごいセーターを編んで、
それがプロの職人さんとかから、
その編み物業界からすごい評価された方が。

で編み物雑誌とかインタビューとかで、
「編み物は世界を変える!」みたいなことを真顔で語って、
編み物に対して本当にかっこいいことを語ってくれたら、

じゃあその素材っていうのは、お笑いの番組で
「こいつこんなことを言ってましたよ!」ってイジれるじゃないですか。

そっちの方がお笑いが近いと思うんですね。


有名なところで言うと・・・

ダウンタウンの松本さんが書いた『遺書』っていう100万部?200万部?くらい売れたすごい本があって、その中でこう

「俺は結婚しないん。笑いのためには、結婚は百害あって一利ナシ。」
だの、
「筋肉もいらない」みたいなことを言ったって。

で当時ね、少年たちも胸が踊ったわけですけど。

結局、それ全部『水曜日のダウンタウン』っていう番組でそれを全部ほじくられて、

「お前結婚してるやないか」とか
「お前今筋肉ムキムキやないか」ってイジられるんですね。

やっぱり、それでドカーンと笑いが起こってるわけです。

つまり『遺書』っていう本の中で、
松本さんがアツく語ってくださったから、
最終的にそれが回収できたわけで。

紅白歌合戦でオリエンタルラジオが出て、
ギャグソングじゃなくて本当にいい曲を、
『パーフェクトヒューマン』っていうシンプルに盛り上がる曲を歌ってくれて、
実際に国民を沸かしたから、

だからお笑いのチャンネルの時に、「お前何してんだよ」っていうお笑いにつながる。

そっちの方が、
お笑いまでの距離が近いなと思っていて。

ここの捉え方に結構乖離があるなあって思いましたね。
これけっこうずっと思ってますね。

なので、お笑い芸人はお笑いを取ることが目的なのであれば、
お笑い以外のチャンネルは振り切ってる方がいい。

僕は、振り切らないのは逃げだと思うんですよね。

『お笑い忘れてませんよ』っていう風にしたら、
同業からもお客さんからも
批判されずらいので。

みんな別にMCの観点から見てないから、
「あの人、ここでもお笑いを忘れてないんだ、素敵」
という風になって
攻撃の対象にはならないんですけど、
基本的には僕は逃げだと見ています。

まとめ

まとめますね。

芸人の目的は、基本的には『笑いをとること』だと思うんですけど、

じゃあ笑いを取るっていうことを考えたら、
それ以外の時の立ち振舞いは、
基本的には振り切ってる方がお笑いには近い。

つまり、絵本を書くときも、ギャグ絵本みたいなのを書くんじゃなくて本気の絵本を書いて、日本で一番結果を出して。

エッフェル塔で個展もして、世界とも戦いーの、

そいつがお笑いのときに肛門を出して、肛門を舐め合って「ウギャー!」とかやる方が、

基本的には、お笑いの量っていうのは大きくなるなー
っていうふうに思っております。

そういうふうに結構芸人を見ていると
「この人なんでここで大マジメに語ってるんだろう」っていう、
もう一つ深い面白がり方ができると思うので
お笑いの見方に深みが出ると思います。

まああんまりこの話はしたくないんだけどね、

一番やっぱ優秀だなぁと思うのは・・

イジられた時にやめてよって可愛く言える負け顔をもっていて、
かつお笑いのチャンネル以外では一切お笑いをしてないっていう芸人が
最強じゃないかな、
っていうふうに思っています。

自分もそうなれるように、
そこを目指して頑張っているんですけど。

何人かね、そういう人はいますね。

「この人はもう笑いのチャンネルでたら、
弄られるぞ、負けるぞっていうことを多分決めていて、
それを踏まえた上でのこういう行動なんだなー」
っていう。

いま国民総ツッコミですから。
SNSで全員ツッコめる状態にありますから、
一番ツッコまれる奴が一番おいしいという風になってくるので。

ちゃんと負け顔を持っていて、
それ以外でお笑いは一切せずに
フックをたくさん作ってる芸人っていうのは、
今後すごく強くなってくるなぁ、
と、そういうようなことを考えております。

このところvoicyでは
仕事の話ばっかりする雰囲気になっていたので
今日はちょっと趣向を変えまして、
普段自分がやっているお笑いについてちょっと熱っぽく語ってみました。

さあ今日は「『お笑いしていますよ』の言い訳を作ると笑いにつながらない」というテーマでお話しさせていただきました。
それでは素敵な一日をお過ごしください。
西野亮廣でした。

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