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吉本興業の騒動から学ぶ『お金』の話 byキンコン西野

このnoteは2019年10月21日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:日向 崇文さん

どうもこんにちは。
キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をやったり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は「吉本興業の騒動から学ぶ『お金』の話」
というテーマで、お話ししたいと思います。

予算から計算してみよう

今日のお話は、以前サロンの中でも言ったし、それをブログでも投稿したと思うんですけど、「吉本興業の騒動から学ぶ『お金』の話」というテーマでお話したいんですけどね。

昨日放送された『僕らの時代』という朝の番組、
ひたすらすべり倒す「西野がヤリチンだ!」ってことを叫ぶ放送になってしまったんですけど、その中で、「吉本興業の騒動」についてふれてるシーンがありましてですね。

収録したのが、吉本の騒動ホヤホヤの時だったから、梶原くんが「どう思う?」みたいなことをふってくれて、

僕も、
「ふだんは思ってても言わないんだけどね〜」ってことで話しだして、吉本興業の『エージェント契約』についての話をして、

で、それを受けて又吉くんが
「それを芸人が知っていれば、把握していればいいんだけどね」って言ったところで、僕の話はウケてるんですけど。

まあ、文脈はおかしくないんだけど、
ちょっと編集で何個か飛んでいたので、
「あれ?」と思った方がけっこういると思うんですね。

ふつうに聞いてた人はちょっとわからなかったと思うんですよ。
「『知っていればいい』ってなんのことなの?」って。

「あそこでどういう会話が広げられたか?」
ってことが、いまからお話する話なんですけど。

じつは、吉本興業の騒動を受けて、あの場で話題にあがったのはですね、「若手芸人の子達が、吉本興業のライブのギャランティーに不満を持っている」と。

会見でね、社長が「ギャラは5:5だ」って言ったんですね。

そのときに、吉本の若手芸人が、
「嘘つくな!」
って感じでツイートを一斉にしたんですね。

それをうけて、「ちがうよ」っていうことを、僕らの時代の中でお話したんです。

それが何かって言うとですね、
とある若手の子のこういうツイートがあったんですよ。

「9:1じゃなくて5:5。ほほう。品川で初単独やったとき、445席即完してグッズも完売して、ギャラ2000円だった」

みたいな。

要は、単独ライブやって満席にしたにも関わらず、グッズも完売したにも関わらず、ギャラが2000円だった。これどこが5:5やねんっていうようなことのツイートですね。

これに関しては、若手も知ろうとしなきゃいけないし、吉本興業サイドもきちんと説明するべきだと思うんですけど、基本的に、劇場運営って赤字なんですよ。

劇場運営、会社経営とかしていなかったら、この辺って見えてこないと思うんですけど。

まあ、コンビでやられている子ですから、
ひとりのギャラが2000円だったら、ふたりで4000円です。

「445席を完売させて、ギャラ4000円っていうのは、安すぎるぞ」
っていう若手の子の言い分なんですけど、

結論ですね、「この規模のイベントで4000円もらえるなんてありえない」っていうのが、僕の見解ですね。

基本的には赤字なんで、ライブっていうのは。

ちょっと説明していくとですね、
僕、けっこういろいろ調べたんですよ。

この若手の子の初単独ライブが行われたのは、2011年11月22日。
会場は吉本プリンスシアターってとこで、キャパは445席。

で、チケットは即完ということなので、前売り料金で完売したと思います。
調べたところ、前売り料金は1800円だった。

つまりですね、チケットの収益っていうのは1800円×445席なので、80万円くらいですね。

グッズの利益。445人向けのグッズの利益って、そもそもなんだよね。あんまり数をすれないもんですから、利益なんてほとんどないと思う。多くて10万円だったとするじゃないですか。

するとですね、この若手の子の初単独ライブの予算はですね、90万円なんですね。ここなんです。ここから考えていかなきゃいけない。

利益を共有しよう

このイベント全体の予算が90万円であると。

都内のこのクラスの会場をおさえようと思ったら、会場のレンタル料はどれだけ安く見積もっても5、60万円くらいですね。

で、この日、2011年11月22日っていうのは土曜日ですので、もう少し割り増しになって、思いっきり少なく見積もっても65万円。とするじゃないですか。

するとですね、90万円マイナス65万円なので、残りの予算は25万円。

ここから、音響費、照明費、めちゃくちゃ安く見積もっても、だいたいこのふたつが15万円だと。ほんとはもっとしますよ。

で、セット費。パネルだけ立てるにしても5万円。

音響と照明で、25万円から15万円引いて10万円。
ここからパネル代の5万円をひいて、残りの予算は5万円。

コントライブってことなので、衣装費をまるまる安く見積もっても3万円。
そうすると、予算は残り2万円。

この2万円の中から全スタッフさんのお給料を支払わなきゃいけないので、基本的に大赤字ですね。

あと、打ち上げ代も吉本がもったりしますがら、基本的にびっくりするくらい大赤字なんです。だから、黒なんかでてないんですね。

これ、5:5どころか、吉本がだいぶもってくれてるんですよ。赤字なので。

なのでね、ほんとはギャラなんか発生しないはずなんですけど、吉本はギャラを入れていると。

じゃあ、なんでこういったイベントが毎週末行われているのか?

吉本興業でいうと『寄席』っていうのがありまして、なんでそれがずーっとまわっているのかって言いますとですね、

ほんまの売れっ子芸人さんの売り上げから制作費を補填してるんです。

つまり、ここからが『僕らの時代』で話した話につながるんですけど、
つまるところ、ダウンタウンさんの売り上げの一部が若手芸人の単独ライブの赤字の補填をしている、と。

で、若手はそこでライブをせっせとやって、スターになっていく。
っていう、ループですね。

もちろんダウンタウンさんもですね、劇場出身の芸人さんですから。『二丁目劇場』っていう劇場の。

この『二丁目劇場』っていう劇場は、ダウンタウンさんよりも前の方々が、売れてる先輩の方々が、売り上げの一部を劇場の赤字の補填にまわしてくださって、それでダウンタウンっていう新人漫才コンビがそこで生まれて、そこからスターになっていったと。

吉本興業ってこのループでずっとまわってるんですね。

なので、売れてるタレントさんが『エージェント契約』ってことをしてしまって、僕はそれをすること自体は賛成でも反対でもないんですけど、

把握しておかなきゃいけないのは、そこで『エージェント契約』ってものをして「売り上げはぜんぶこっちがいただきます」っていう、「僕がとってきた仕事は僕がやるし」みたいな、「売り上げはこっちがいただきます」っていう風にしてしまうと、圧迫されるのは若手芸人。

新人がライブができなくなってしまう、っていうところに陥ってしまうっていうことですね。

又吉くんが「知ってたらいいだけどね」って言ったのは何を知ってたらいいかって言うのは、
若手が、自分たちがやっているライブが、基本的に大赤字で、でも吉本興業が「それはあまりにもかわいそうだから」ってことでギャラをいれてくれている。

「このギャラは、先輩の売り上げの一部ですよ、ってことを知ってたら、不満も持たないんだけどね」ってことで又吉くんの「知ってたらいいだけどね」につながりますね。

ちょっと長くなりましたが、そういうことです。

なので、まず、これをクリアするためには、若手はそのことを知ろうとしなきゃいけないし、会社的にはこのことを説明しなきゃいけないんですね。

劇場運営っていうのは極めて、基本的には大赤字なんだって。

だけど、これを説明していないから、若手芸人は、「吉本にかなり中抜きされてるんじゃないか。だってあんなに客席満席にして、でももらえるギャラは2000円。これだいぶ中抜きされてるぞ」って思ってるので。

これはシンプルに、説明不足だし、対話不足ですね。

大切なのは、会社と芸人がやっておかなきゃいけないのは、
売り上げではなくて、利益を共有しておく
っていうことですね。

利益がどれくらいなのか?ってこと共有しておいて、そこで、そうすると、自分がもらってる額が多いのか少ないのかが見えてくるんで。

売り上げから考えてしまうと、経費がどれくらいひかれてるかってのがよくわからないから。

これは芸人と事務所だけではなくて、会社員と会社だとかも、やっぱり利益を共有しておくのは非常に重要だなっていうのと、対話が需要だなっていうとこにつきますね。

まとめ

今年の夏の騒動の一部、若手芸人が「このギャラ少ないぞ!」っていう不満は、
利益の共有ができていない。そして、対話不足が引き起こしているものだな。

まあ、吉本興業は赤字イベントなのにも関わらず、本来発生するはずのないギャラを払っているし、若手芸人は、吉本興業にかなり中抜きされていると思ってしまっている。

繰り返し言いますが、利益の共有ができていない。対話ができていない。
ということろに尽きるので、やっぱり対話っていうのは非常に重要だなぁというのを思います。

というわけで、今日はですね、「吉本興業の騒動から学ぶ『お金』の話」というテーマでお話させていただきました。

なんとなく、『僕らの時代』の番組の中で話したことの輪郭がみえてきたかな?どうなんだろう?

くれぐれも言っておくと、僕は、芸人さんの『エージェント契約』うんぬんかんぬんに関しては、賛成でも、反対でもないです。

べつにどっちだっていいと思ってます。
把握していれば。自分たちのことなので。
僕は僕で『エージェント契約』ではないけど、『エージェント契約』みたいな形は7、8年前くらいからとっていて、『株式会社NISHINO』で基本的には動いていて、「吉本の仕事は吉本と一緒にやりましょうね」っていう形をとらせてもらっています。

さっきの話じゃないですけど、僕が劇場で生まれたのは、やっぱり先輩方が利益の一部を劇場の赤字補填にまわしてくださったからっていうのはわかっているので、

やっぱり僕は「何かしらの形で吉本に恩返ししなくちゃいけないなー」と思って、クラウドファンディングのプラットフォーム『SILKHAT』っていうのを作りました。

これを作って運営しているんですけど、集まったお金の手数料が会社に入りますから、これでまぁ、お金面でも会社に恩返しして、吉本興業の若手芸人および、まぁ先輩もそうか、

芸人さんの新しいまだ見ぬ企画の応援ができればいいなと思ってるってことで、『SILKHAT』っていうのを作ってお礼とさせていただいているっていう感じです。

というわけで、改めて言いますが
「吉本興業の騒動から学ぶ『お金』の話」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。
西野亮廣でした。

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