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キンコン西野が語るダウンタウン松本人志の凄さ

このnoteは2020年4月30日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:たかはしかなこ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「キンコン西野が語るダウンタウン松本人志の凄さ」
というテーマでお話しします。

デビュー当時の思い出

以前『ダウンタウンなう』 に出させていただいた時、僕はもう本当にひどくて、先輩方が来られる前に酔っ払っていたのもあるのですが、ダウンタウンさんのことも、坂上忍さんのことも好きなものですから、収録があまりにも楽しくて、お三方がそろそろ切り上げようとしていた時に、「もう帰るんですか」みたいな拗ね方を炸裂してしまいました。

たしか僕の回が1本目で、その日は2本取りか3本取りの予定で、みんな次があるのに、「もっと飲みましょうよ」みたいな感じで僕は拗ねちゃったんです。

それぐらい好きで、尊敬している先輩なのですが、この「好き」というのは少し邪魔なんです。というのも、「なにくそ」みたいな気持ちが削がれてしまうから。

なので、下の人間からすると複雑なのですが、でも好きなものは好きでもう仕方がないと割り切って、今日はダウンタウン松本さんの話をしたいと思います。

松本さんがすごいことは、皆さんの知るところですが、キングコング西野から見て何がすごいのかという部分を少しお話しさせてください。

まず、本題に入る前に、「僕がどの世代の芸人なのか?」ということをざっくり説明しておきますと、僕はダウンタウンさんを見て芸人になった人たちを見て、芸人になった世代です。

大阪だと、『心斎橋2丁目劇場』という劇場があり、僕が学生の頃は、その劇場では、千原兄弟さんや、ジャリズムさん、中川家さん、メッセンジャーさん、サバンナさん、あと異なるグループでは吉本印天然素材がいて、そこには雨上がり決死隊さんやナインティナインさん、FUJIWARAさんなどがいらっしゃいました。
そういった先輩方を中学生や高校生の頃に見て、吉本の門を叩いたクチです。

なので、ダウンタウンさんからすると、世代としては、ふた回りぐらい下でしょうか。
今日は、そんな奴がいけしゃあしゃあと喋っていると思って、話をお聞きいただけると嬉しいです。

話は、デビュー当時に遡るのですが、『キングコング』としてデビューして、実力が無いにも関わらず頑張って駆け上がっていく中で、ある時、すごく違和感を覚えたことがありました。

それは、先輩芸人からの強い同調圧力です。
例えば、僕らキングコングは2人とも、「大喜利ライブ」、「コーナーライブ」には絶対出ませんでした。なぜなら、2人とも似合わないし、苦手だったからです。

そうすると、先輩からは「勝負せえや」的な怒られ方をされました。

僕の言い分としては、ちょっと生意気ですが、「いえいえ勝負はしてますよ。ただあなたは剣の使い手で、僕は弓の使い手なので、剣の勝負はしませんよ」というだけの話なのですが、これが全然通用しませんでした。

「その剣で戦って勝ってこそ、芸人やろ」という言い分で、ガーと詰め寄られてしまいました。

皆さんがご存知のところでは、「ひな壇」もそれに当たるかもしれません。
「芸人だったらひな壇出ろ」は、日本中が言っていたと思うのですが、ひな壇が得意な芸人はひな壇をやればいいし、Youtubeが得意な芸人はYoutube やればいいと、僕は思っています。

目的は、お客さんを楽しませることなので、別に芸人さんが何をしても、その人が一番得意なことをしたほうがいいよなと思っている口なのです。

しかしながら、この僕の「得意なことやった方がよくないですか」という言い分は、当時はなかなか許されることではありませんでした。
最近は、そのあたりが随分と緩和されていますが。

そして、「このルールを作ってるの誰だ」と思った時に出てきたのが、松本さんです。これはくれぐれも言っておくと、松本さん自体は、そんなことは全然OKなんです。

なんなら、芸人や世間から煙たがられていた頃の僕を番組に呼んで下さっていたし、浜田さんも、作家の高須さんもそうでした。

高須さんに関しては、僕と一緒に仕事をする時は、「なんであいつと仕事すんの」と、同業者から結構突かれていたらしいです。今考えると、泣けてきますよね。でも、そのような時期がありました。

なので、ご本人たちは「あれやめろ、これやめろ」という言い方はしなかったのですが、やっぱり影響力が強いものですから、なんとなく「ダウンタウンさんがやっていること以外はアウト」のような空気がずっと流れていたんです。

これは誰が始めたというわけではないのですが、なんとなくその空気がずっと流れていて、僕みたいに、作るところからお客さんと共有する「バーベキュー型」のノリなどは、絶対にアウトでした。

松本人志の天才性

これまでも、そのように大きな影響力を持った芸人さんはいましたが、ダウンタウンさんが他と明らかに違っていたのは、「ハードを作っている」という点です。

みんなせっせと「ソフト」を作っているのに、例えるならドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーを作っているのに、松本さんだけファミリーコンピュータを作ってしまったということです。

そして、「ハード」という例えが暗に発信しているメッセージは、「ソフトを作るならこの差込口に合うようにお願いします」ということで、みんなその口にならざるを得ないということです。

それでご本人は、そういうハードを作りながら、スーパーマリオ的なソフトを作られるわけじゃないですか。

もう一人で任天堂みたいなことをずっとされていると。
『大喜利』にしても、『すべらない話』にしても、ハードを作る人は過去にもいたのですが、松本さんのハード作りで、本当にすごいなあと思うところが2つあります。

一つ目は、「セット費がかからない」ということです。
大喜利はフリップとペンでいけるし、『すべらない話』はサイコロ、「写真で一言」なら写真です。

セット費がかからないので、若手ライブでも引用されるし、お笑いが好きな中学生や高校生、父ちゃんも母ちゃんもプレーできます。本当に、ファミリーコンピューターみたいなことをされています。

あともう一つは、セット費の延長になるのですが、プレーに必要なものを極限まで減らしているので「古くならない」ということです。

古くならないということは、本当に大きいんです。

フリップの大喜利って、古くなっていないじゃないですか。落語や漫才ぐらいの伝統芸能感がありますよね。

この古くならないことは、すごく大事で、また別の機会でお話ししますが、『キャリオク』さんの CM を作ったときに、アーカイブとしてYoutubeに残すことを前提としていたので、まず意識したのも古くならないということでした。


なので、テロップを出してないし、キングコング2人の衣装にも流行は絶対入れていません。

とにかく、5年後、10年後に見ても古くならないようにしようということを意識してやっていたのですが、松本さんはこれをお笑いのハード面でやっている。これは本当にすごいです。

フリップ大喜利は本当にすごい発明です。
「操作感」という言い方をしたりしますが、スマホ画面を横にスライドする時に、若干の引っかかりがあったほうがユーザーには喜ばれたりするんですね。

ガチャガチャなども、すぐに出てくるのではなく、ガリッガリッガリッと、3回くらい回して出てきてくれた方が、なんか嬉しいじゃないすか。

それに近いものがこの大喜利にもあって、フリップをひっくり返す時に「どうだっ」という快感がある。

つまり、なぜかやりたくなるんです。これは、子供の時からずっとそうなんです。

松本さんがやっていることって、全部やりたくなるんですよね。そのフリップをひっくり返すときの気持ちよさは言語化できないようなものですが、「これ気持ちええやろ」を発明する天才ですよね。

セックスとかめちゃくちゃ上手いんじゃないかな。今度お会いしたときに聞いてみますが、多分セックスむちゃくちゃ上手いと思いますね。

「松本さんはここがすごい」というのは、今しゃべりながらもどんどんどんどん出てきていて、全然10分に収まりきらないですね。

楽しいので、どこかで第二弾をやりたいと思います。今日は時間が来てしまいましたので、ここで終わりたいにします。

というわけで、
「キンコン西野が語るダウンタウン松本人志の凄さ」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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