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東京五輪が失敗しているBBQ型byキンコン西野

このnoteは2020年5月29日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:冨浪真樹 さん

最近、すっかりメディアで見なくなったキングコング西野です。宜しくお願いします。

自分で話すのはすごく気持ちが悪いのですが、「キングコング西野」の功績の一つに、「制作段階からお客さんを巻き込んで、制作過程すら販売してしまう」があると思います。

クラウドファンディングで制作費を集めて、著作権というものを曖昧にして、「お客さんに届けるものをお客さんと作っちゃう」というやつですね。

これを進化させたのが現在の「オンラインサロン」です。

実際問題、国内外で仕掛けている個展はサロンメンバーと作っていますし、各種イベントもそうです。

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最近だとテレビCM(キャリオク)なんかもサロンメンバーと作っていて、自分達が食べたいものを自分達で作っています。

今、いわゆる「プロ」と呼ばれる人達だけで作っているモノって、僕の仕事に関しては、あまりないです。

プロが作って、お客さんに出すスタイルを「レストラン型」と呼ぶのに対して、

自分達がやっているような、お客さんが食べるものをお客さんと作るスタイルを「BBQ型」と呼んだりしています。

で、当時はこのBBQ型のエンタメに対して、批判もありましたし、今でも(一部)年輩の方は、まだ「お客さんに出すものは完成品でなければならない」といったアレルギー反応を起こしちゃうんですが、ただ、ここ最近は、かなり理解が深まってきたなぁという印象です。

「みんなで作る」は結構、いろんなところで見るようになりました。

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東京五輪に見られる「そういうことじゃない感」

ただBBQ型の祖からすると、「BBQが上手く機能していないなぁ(…ちょっと雑だなぁ)」と思うことがあって、えっと…だいたい行政が仕掛けている見よう見まねの「みんなで作る」は失敗しています。

有名なところでは、東京オリンピックです。

「みんなで作ろう」と言っていますが、皆(お客さん)を参加させているのは「宣伝」だけで、「このハッシュタグでツイートしよ〜!」とか何とか言って、実際のところは「お客さんをテイよく宣伝に利用しているだけ」です。

椎名林檎さんか誰かが作ったモノを「拡散」するのがお客さんの役目で、「制作」にはタッチさせていない。

制作会議の場にお客さんがいないし、作品にお客さんが口を出すことはできない。

勿論、お客さんは「上手く利用されようとしている」ことが分かっているから、宣伝に熱がのらない。

そりゃそうですよね。

「東京オリンピック」は他人の作品ですから。

なので、東京オリンピックを盛り上げようとしている人って、(それを生業としている人以外では)皆さんの周りで見当たらないと思います。

「税金をかけてBBQ会場を作ったけど、お客さんが来ない」という状態です。

「お客さん」は高い

ここだけ切り取ると「もっともっと、お客さんを参加させろよ!」という結論になりそうですが、それもチョット難しかったりします。

「お客さんの声を反映する」って、すっごくイイことのようになっていますが、面倒が多いんです。

プロを「プロたらしめている」大きな理由として、「ふるい」にかけられて、勝ち上がってきた…という背景があります。

アイデア一つとっても、プロは打率が高いんです。

お客さんを巻き込むと、まったく使い物にならないアイデアに耳を傾ける時間や、まったく使い物にならない大量のデザインを「ふるい」にかける時間が発生しちゃうんてすね。

そこにスタッフを割かないといけないので、コストがかかります。

打率の高いプロに発注した方が、安く済むんですよ。

多くの方が見落しがちですが、レストラン型の方が安く済むことが多いんです。

意外でしょ?

じゃあ、BBQ型を安く済ませるにはどうすればいいか?

お客さんからアイデアを募集して、最終決定をお客さんによる投票で決めちゃう。

これが一番です。

そうすると、コストも安く済むし、どこからも文句出ないですよね。

だって、お客さんが作って、お客さんが決めたものなのだから、責任者は「お客さん」だもの。

ただ、それでできたのが、オリンピック2020のマスコットキャラクターです。

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デザインを一般公募して、小学生に選考させて、あれに決まったわけですが、(こんなこと言うとメチャクチャ怒られますが)あのキャラクターグッズ、誰も買いませんよね。

誰からもクレームは来ませんが、売上が立たないので、ウン億円レベルで税金が溶けています。

つまり、クリエイティブの現場に民主主義を持ち込みすぎると、それはそれでロクでもないことになる。

お客さんが食べるモノをお客さんと作る「BBQ型」というのは、この問題とのせめぎ合いです。

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「BBQ型=丸投げ」じゃないよ

冒頭で「国内外で展開している個展もサロンメンバーと作っている」と申し上げましたが、それは嘘じゃありません。

エッフェル塔の個展にしてもゼロからサロンメンバーさんに参加していただいています。

ただ…

そこには必ず「伴走者」としてプロを入れています。

プロがやっても、素人さんがやっても、クオリティーに差が出ない部分を、サロンメンバーにお任せしています。

そして、最終決定は「多数決」なんかじゃありません。

最終決定者は「僕」です。

エッフェル塔の個展でいうと、最高責任者を務めた「セトちゃん」というウチのスタッフです。

多数決で決めるのならばリーダーは要りません。

それで面白くないものが出来上がったら、最終決定を出したリーダーの責任ですし、

面白いものが出来上がったら、それを作ってくれた皆の手柄です。

BBQ型は「仕事の丸投げ」ではありません。

お客さんが火傷をしないように、

テントに火が引火しないように、

お客さんがつまづかないように、

お客さんが怪我をしたら秒速で対応できるように、

BBQ会場を設計しなきゃいけない。

そこには、レストラン運営以上のコストがかかります。

昨日、オンラインサロン内で、僕の絵本最新作の編集作業を皆でやったんです。

プロット(ストーリーを箇条書きしたもの)をサロン内に投げて、皆で、文章の言い回しを考えていくんです。

当然、そこには「文章が得意じゃない人」も参加していますし、「ストーリーを作ったことがない人」も参加しています。

その人達が、「こうした方がいいんじゃない?」みたいな提案をしてくださって、僕が、その一つ一つを見ていくわけです。

これ、メチャクチャ時間がかかるんです(笑)

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そりゃね、キングコング西野が一人で書いた方が早いんです。

結構、皆、忘れているかもしれませんが、キングコング西野って、ベストセラー作家で、文章がベラボーに上手いんです。

西野一人がやれば1時間で済む作業を、6万人に手伝ってもらって、24時間以上かかっている(笑)

この時点でのコストパフォーマンスは最悪です。

ただ、西野というプロが伴走しながら、作るところから6万人でやった方がいいんです。

6万人一人一人にとって、「自分が作った作品」になるから、届ける(宣伝をする)時に熱が乗るんです。

BBQ型というのは、「丸投げ」とか「コストをかけない」っていうことじゃないよ、という話でした。

今日のサロンの記事は、昨日の6万人の編集作業で気づいたことを書きまーす。

では、後程。


※毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。興味がある方はコチラ↓


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