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日本人の海外進出が難しい理由3選【キンコン西野】

このnoteは2024年8月8日のvoicyの音源、『CHIMNEY TOWN 公式BLOG』の内容をもとに作成したものです。


 
 

日本人の海外進出が難しい理由3選

 
今日は「日本人の海外進出が難しい理由3選」というテーマで、実際に自分が海外に仕掛けている中で目の当たりにした壁についてお話ししたいと思います。
 
他にもたくさんあると思うのですが、パッと思いつくのは…
 
・スケジュールを空けられない
・生活レベルを下げられない
・預けきれない
 
この3つかなぁと思います。
 
順を追ってご説明します。
 
大前提として「キャリアの一歩目から海外」という人は今日の話には入りません。
 
今日の話は「日本で、ある程度の実績を積んだ人や会社」が対象になります。
 
 

『スケジュールを空けられない』

 
まず『スケジュールを空けられない』という点について、これは主に軸足を日本に置きながら、海外に仕掛けるケースですが、やっぱり最初は「相手の土俵」で、さらには、相手からすると「べつに日本人に頭を下げなくても仕事が回っている」という状態なので、日本人に合わせる理由が一つもない。
 
というわけで、相手の都合でリスケ(スケジュールの組み直し)が結構頻繁にあります。
 
実際に僕は今もこれをよく経験していて、「ごめんなさい。再来週に予定していたミーティング、来月に変更できますか?」とか言われちゃうんですね。
 
これ、日本国内でのリスケなら何の問題もないですが、再来週にミーティングを予定するとなると、飛行機やホテルの予約をとっていることは勿論のこと、再来週に海外に行くためのスケジュール調整を結構やっていたりします。
 
つまり、再来週には日本の仕事は入れず、再来週にやる予定だった日本の仕事は、来月とかに回して、なんとか調整をするわけですが、その調整をした後に、「再来週に予定していたミーティング、来月に変更できますか?」とか言われたりする。
 
こうなると、スケジュールがパンクしちゃうじゃないですか?
 
この突然のリスケに対応するには方法が一つしかなくて、それは「再来週も、来月も、スケジュールを空けておく」なんです。
 
場所を選ばずに仕事ができる人を除いて、これって結構勇気が入りますよね。
 
タレントさんであれば「レギュラー番組を全て降りる」という判断をしなきゃいけないわけで…まずは、この「スケジュールを空ける」ができない人がほとんど。
 
 

『生活レベルを下げられない』

 
次に、『生活レベルを下げられない』という壁。
 
ここでいう生活レベルというのは、単に家賃とか食事代といったものだけじゃなくて、今で言うと、「再生回数」とかもそう。
 
たとえば、日本で実績を残したYouTuberさんとかが「次は海外だ!」と言って、海外向けの発信をした瞬間に、再生回数はダダ下がりします。
 
チャンネル登録者のほとんどは日本人だし、日本人のほとんどは「海外進出」など興味もないし、共感もできないので。
 
海外向けにシフトした瞬間は、再生回数やら、売り上げやらが基本的には一旦落ちるのですが、この凹みを耐えられる人がほとんどいない。
 
「オワコン」と言われる恐怖を耐えられる人がほとんどいない。
 
 

『預けきれない』

 
最後、3つ目です。
 
これはアメリカで数々の有名な賞をとってきた音楽プロデューサーをやっている友人からいただいたアドバイス(日本人評)で、僕自身、ここの葛藤と戦っていたりするのですが…彼は「日本で結果を出してきた人間は、日本の結果の出し方を手放しきれない」と言うんです。
  
これは本当におっしゃる通りで、「任せて、グチャグチャにされるのだけは嫌だ!クオリティーを落とされるのだけは嫌だ!」という気持ちが僕の中にあります。
 
彼はそういう日本人を何回も見てきたみたいで、僕が本音を吐く前に、続けざまに「アメリカ人が日本人よりも優秀だと言い切ることはできない。優秀なアメリカ人もいれば、仕事が雑なアメリカ人もいる。それは日本でも、そうでしょう? 
なので、アメリカ人が日本のコンテンツを活かしきれないこともある。
日本のメジャータイトルを傷つけてしまった過去もある。それは本当に申し訳ない。でも、ここはアメリカで、ここではアメリカ人にとって都合が良いように世界が回っている。なので、プロジェクトのグリップは握りつつも、アメリカ人に任せないと、何も始まらない。アメリカ人に任せた時、おそらく最初はアキ(僕のこと)の満足のいくものは出来ないでしょう。だけど、プロジェクトが走っていさえすれば、改善を続けることはできる。まずは走らせることが大事なので、最初は、クオリティーが落ちたとしても、預けることが大事だ」と言われて、グウの音も出ませんでした。
 
これまで、日本から来たクリエイター達は「それは、違う!」「そんなことをすると、クオリティーが落ちる!」と言って、作品やプロジェクトを現地の人間に預けきれないことがほとんどだったそうです。
 
そうすると現地の人間も「それなら、勝手にやってください」となってしまい、結局、何も始まらないまま終わってしまう。
 
だから、音楽プロデューサーの彼は、「クオリティーが一旦落ちることを受け入れてくれ」と言ったんです。
 
作品やプロジェクトは我が子そのものですから、それってなかなか受け入れられないし、なまじっか日本で成功してしまっていたら尚更受け入れられない。
 
だけど、そのことを受け入れて、現地のパートナーとクオリティーを一旦落としてでもやる覚悟を決めないと、そもそも始まらない。
 
海外進出の際に一番難しいのは、3つ目のコレかなぁと思います。
 
 

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