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【ブランドを作れない日本】by キンコン西野

このnoteは2021年1月21日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:えんとつ町の孤高の焼肉屋 さかいりょうすけ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

本題に入る前に近況報告をさせてください。

現在、渋谷、仙台、博多の3都市のHMVミュージアムで、『映画 えんとつ町のプペル』の制作の裏側にスポットを当てた『えんとつ町のプペルができるまで展』が開催中です。

齟齬があるといけないので、こうして定期的にアナウンスさせていただきますが、今回の個展はあくまでメイキングなんです。

たとえば、作中に「スコップ」というキャラクターが出てくるのですが、このキャラクターの喋り方や動きって、アニメーターさんを集めて、その前で一度、僕がやって見せてるんです。

「こんな感じです」といった感じで。

その時の(スタッフ間で共有する用の)記録映像が残っていて、たとえば、そういったものが展示されているような個展です。なので、完成品は一つも展示されてないです。

モノづくりの裏側に興味がある方に向けた個展となっておりまして、僕個人的には大好きな個展です。

今回を逃すと、もう二度とやることがないので、映画を見終わった後にでも、是非、足をお運びください。

詳しくは「えんとつ町のプペルができるまで展」で検索してみてください。

(※こちら→)https://l-tike.com/event/mevent/?mid=558066


そして、近況報告の二つ目です。

相変わらず「『映画 えんとつ町のプペル』をお客さんと一緒に観る会」の全国行脚が続いております。

日本地図をイメージしていただきたいのですが、大阪から京都に行き、福井に行き、金沢に行き、富山に行き、長野に行き、今日はこれから群馬です。

なんとなく、日本列島の真ん中あたりを時計回りしております。

群馬は平日の朝の10時35分スタートということで、一緒に観てくださる方がどれぐらいいらっしゃるのかが怪しいところだったのですが、ありがたいことにチケットは完売しました。

ぶっちゃけ「お客さんを呼ぶ」だけが目的ならば、都内の映画館をグルグル回っていた方がいいんです。

ただ、こんな機会もなかなかないじゃないですか?


僕、芸歴20年ぐらいになりますが、地方の平日の朝の劇場に立ったことなんて一度もないんですね。

生々しい話ですが、芸人として劇場公演する時は、大阪や東京といった人口の多い場所か、そうじゃなければ、週末か、夜帯か、になるんです。

芸人も、そこで働くスタッフさんも食って行かなくちゃいけないので、採算が取れるような場所や時間を選ぶことになります。

でも、家族を送り出した平日の朝しか時間が取れない方もいらっしゃるわけで、そういう方に劇場のエンタメを届けようと思ったら、こういう機会しかないんです。「映画だからできた」という側面はある。

というわけで今日は朝から群馬で映画を観てきます。

明日(22日)は、東京に戻って、夕方18時5分から「TジョイPRINCE品川」でプペルを見ます。

こちらは、もう席が予約できるようになっていたので、ソッコー予約しました。


そして、明後日は(23日)は「TOHOシネマズなんば」で、13時35分の回と、15時50分の回を2回連続で観ます。

下心としては、「映画を観てもらいたい」の他に、「道頓堀を守りたい」がありますので、映画を観られる前後の時間は、道頓堀に寄っていただけると嬉しいです。

そんなこんなで、今日の本題です。

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よく、皆さんがお怒りになられている出来事って、自分自身が怒りの原因を作り出していることが多いなぁと思うのですが……たとえばテレビなんか分かりやすくそうですね。


タレントの不倫問題を取り上げて、そのご家族をグチャグチャにしている様子を観ては、「最近のテレビは〜」とか「マズゴミだ!」と言う人っていると思うんですけども、そもそも、あなたが他人の不倫にチャンネルを合わせているから、テレビはそのプログラムにしているわけで、テレビ自体にはそれほど意志はありません。

視聴者が求めているものを提供しているだけです。


アンジャッシュ渡部さんの不倫に関して、一言二言呟いたりしたことがある人がいると思うんですけども、テレビのような広告メディアは、そういう人達に支えられて成り立っている。

なので、テレビは自分達の写し鏡だと思った方がいいと思います。


それと似たような話なのですが、よく、コロナで閉店したデパートとかを指して「インバウンドに頼った罰だよ」みたいな意見を耳にするのですが、あの意見って、まったく優しくないし、本質的じゃないなぁと思うんです。


たとえば自分が店を出していて、守らなきゃいけない従業員や家族がいて、日本人があまり商品を買ってくれなくて、一方で、「中国の方がたくさん買ってくれる」……という条件で、商品を買ってくれる中国の方を切り捨てるのって、メチャクチャ難しくないですか?

「店は大変ですし、従業員は解雇するかもしれませんが、インバウンドには頼りません」と言い切れる人なんて、ほとんどいないと思います。

日本人であろうが、中国人であろうが、お客さんには違いないので。

なので、その時は、中国の方の需要に頼らざるをえなかった。


問題は、「どうして、中国の方がたくさんやってきて、中国の方に頼らざるをえなくなったか?」という部分だと思います。
その答えは結構シンプルで、「日本が安い国だから」じゃないですか?

自国で働いて稼いだお金を持って、日本に行けば、自国じゃありえないぐらいの思いができるから、日本に流れたわけで、これって、その昔、日本人が近隣の安い国に旅行に行っては、「安い安い」と買い物したおしてたことの繰り返しだと思うんですね。

「安い」って、けっこう厄介な状況で、たとえば商品を売っても、それほど利益がないので、そのお金で何かを買うことはできない。

そうなると当然、日本には、「商品を安く売って、何も買うことができない日本人」と、「自国で稼いだお金を軍資金に、安く大量に買うことができる外国人」で溢れるわけで、「インバウンドに頼る」も何も、「日本人の前に商品を出しても、日本人はお金を持ってないから買えないじゃん」という状況だと思うんですね。


「インバウンドに頼った罰」という意見って、表層しかさらっていなくて、それより何より「安い国」になってしまったことを取り上げた方がいいと思います。


で、この国が「安い国」になってしまった原因って、いろんなところで語られているし、もちろん、一つじゃないと思うのですが……エンタメを通じてサービスを提供している立場から言わせていただくと、やっぱり日本は「ブランドづくりが下手」というのと、それ以前の問題として、「日本人が日本人のブランド作りを許さない」というのが大きいと思っています。


日本人って、商品の付加価値が目に見えるものになっていないと、「こんなに高いのはおかしい!宗教だ〜!」と騒いじゃう感じあるじゃないですか?

たとえば、A社が販売しているカバンと、同じようなカバンを、山田太郎さんが、それよりも高い値段で販売していて、その山田太郎さんのカバンが売れていた時に、外野が「宗教だ〜!」「山田太郎から搾取されてる〜!」と言っちゃう感じ。

でも、もちろん、まったく同じものが高い値段で売れるわけがなくて、そこには山田太郎さんのストーリーが付加価値として乗っかっていて、それが、「山田太郎さんへの支援」だとか、「山田太郎さんの成果物を持っている俺」に繋がっているわけじゃないですか。

それこそがまさに「ブランド」の正体だと思うのですが……そこを認めない空気感が日本中に漂っていて、その結果、ほぼ原価でしか商品売れない空気になっている。

一方で、顔を知らない外国人のブランドは歓迎していて、「GUCCI」とかに対して「宗教だ〜!」とかは言わない。

そりゃ、日本は安くなるわけで。。

その変なノリをやめない限り、「人口が減り続けている中、薄利多売競争に参加させられる」という地獄絵図が展開されるわけで、これは、コロナとかまったく関係のない問題だと思っています。

で、因果応報ですが、「ストーリー」などの《目に見えない付加価値》を叩いて追い出してしまったら最期、自分が安さ勝負で追い込まれた時に、「目に見えない付加価値」を提供できなくなってしまうので、ここは本当に気をつけた方がいいと思います。



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