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キンコン西野が数年前にキッパリと辞めたこと

このnoteは2020年4月28日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: 杉山 友輝さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日はですね、
「キンコン西野が数年前にキッパリと辞めたこと」
というテーマでお話しします。

3年前にプチ炎上したニュース

数年前に炎上したニュースを、今読み返すと、なんだか答え合わせをしているようで、なかなか味わい深いです。

今、僕の手元にあるのは、3年前のニュースで、「キンコン西野『慶応生の人気就職先1位が銀行って正気?』」というタイトルのものです。

これは3年前に、プチ炎上したニュースで、この記事の元となっているのは、僕が早稲田大学で行った講演会の一幕です。

記事を要約すると、講演会の中で、「慶応生の人気就職先の1位が銀行」ということを聞いて、西野がびっくりしたという内容です。

この記事の中でもはっきり言っていますが、僕はこれで就職先に銀行を選ぶ学生を否定しているわけではなく、銀行を選んだ「理由」に驚いたのです。

それは、「安定しているから」というものでした。就職先に驚いたのではなく、この銀行を選んだ「理由」に西野が驚いたという記事です。

これは3年前のことですが、結構カルチャーショックだったので、鮮明に覚えています。

だって、これだけ低金利が続いているのです。そして、銀行の仕事に人が介在しなくてよくなってきています。

会社の融資で銀行が融資する時などは、事業の将来性を見抜く目利き力が必要です。ただ、一部では、融資の審査は法人の財務データをパソコンに打ち込んだら、自動的に貸し出せる限度額みたいなものが出てきて、それに従って融資をしているだけという話もあります。

これが本当かどうか分かりません。でも、もしも本当ならば、いよいよそれは「人が介在しなくてもいい仕事」ではないでしょうか。

財務データをパソコンに打ち込む作業はAI でもできますよね?

そういえば、このニュースが出る前だったか後だったかは忘れたのですが、僕は自分の会社の銀行口座を作ろうと思って銀行に行きました。

そこで、業務内容を聞かれたので、「キンコン西野のオンラインサロンの運営です。」と答えたら、「オンラインサロン?何ですか、それ?」と言われて、結局口座を作ってもらえませんでした。

後日、その銀行さんから、「今回は無理でした」という連絡をいただいた時に、「いやいや絶対作った方がいいですよ!」と言ったのを覚えています。

変な話ですよね。僕が断られてるのに、「絶対作った方がいいですよ!」と電話越しに言ったんです。

キンコン西野の過去のダイレクト課金率を調べて、「オンラインサロンでは、これをサブスクでいくわけだから…」と、かなり説明したのを覚えています。
「絶対作っといた方がいいと思いますけどねー。」と言いましたが、とにかく全然ダメでした。

この数値化されていない「信用」や「期待値」を値踏みする作業というのは、まだまだ人が判断する領域です。

そのように、人が判断する業務をピシャーンと閉じてしまう方針で会社を進めるのであれば、当然、銀行は従業員の削減に向かうでしょう。なぜなら、人が判断する仕事は、もういらないからです。

一番コストがかかるのは、人件費です。なので、まず間違いないのは、銀行は大量採用世代の定年退職を待ち、新卒採用を抑制して、人員削減、コスト削減に向かうということです。

これは、火を見るより明らかでしょう。実際、この数年で、銀行はそのような動きになってきていますよね。

その上で、「銀行の仕組みを学びたいから」、「銀行が好きだから」という理由で就職先に銀行を選ぶのは、すごく分かります。

僕自身も、門を叩いた人間のうち99.9999%が食っていけない「芸能」という世界に飛び込んだ人間なので、そういう気持ちはすごく分かる。

でも、「安定しているから」という理由で選ぶのは、全然分かりません。

僕の勉強不足かもしれないと思い、「すみません。銀行という職業のどの部分が安定してるんですか?」と聞いたら「銀行を馬鹿にしてるのか!」と言われて、当時は話になりませんでした。

僕は銀行をバカにしているわけではなくて、立派な仕事だと思っています。普段利用させていただいていますし、銀行がなかったら困ります。

ただ、シンプルな質問として、「低金利が続く、AI化が進む、おそらく手数料サービスがメインになってくる…という状況下において人が安定して働ける銀行の業務って何ですか?」ということを聞いてみたのです。

ですが、「なんや、自分はクリエイティブな仕事をしてるからロボットに代替されないとでも言いたいのか?俺はそうじゃないぞとでも言いたいのか?」と返ってきて、全然ダメでした。

3年前、なぜかめちゃくちゃ怒られたんです。おそらく彼らは「職業を否定されている」と思い込まれていました。

何度も言うように、僕は職業を否定してはいません。
「安定している部分ってどこなんですか?」と、ただ部位を聞く質問だったのですが、それが全く通用しませんでした。

だって、気になるじゃないですか。
「安定しているからお笑い芸人になるわ!」という友達がいたら、シンプルに気になりませんか?

芸人という仕事が素敵な仕事なのは分かるけれども、「安定してる部分って、どこ?」って聞きますよね?それに対して現役の芸人が「芸人を馬鹿にしてるのか!」とは言ってこないと思います。

とにかく、当時は、同じ日本人なのに、会話が全然通じませんでした。

正論で押し切っても仕方がない

ただ、ここで僕は受け止めなくてはいけないのは、途中の過程がどうであれ、結果として、この銀行員さんは不快な思いをされているということです。これは事実ですよね。

結果的に、僕は何らかの形で傷つけてしまっているということです。

そして僕には、「エンタメで世界を獲る」という目的があります。そうなってくると、当然こういった方々にも応援してもらわなくてはいけません。

すると、もし僕の言い分が100%正論だったとしても、それによって相手を傷つけてしまうのであれば、正論を出すということは、僕の目的に対するアプローチとしては間違っているということになります。

応援してもらわなくてはいけないからです。

その当時は、正論を出すことが正しいと信じていました。でも、結局それって「屈服させる作業」なので、物事が前に進まないんですよ。

今のTwitter村みたいな状態になる。

誰かを屈服させるような人間が、エンターテインメントで世界を獲れるわけがないので、たとえどれだけ自分の言い分が正しかろうが、それによって誰かが苦虫を噛むことになるのであれば、意見を押し通すのではなくて別の道を探ろう。

そう考えるようになりました。

これは、くれぐれも、言いたいことを我慢するということではなくて、別の方法で伝えるということです。場合によっては、言葉ではなく、行動などで伝えることもあります。

それで、そういうやり方にシフトしてから、これまでやっていた正論で押し切るこの楽さ、簡単さを知って、回り道を探す苦労を知りました。

しかし、そのようにシフトしてから、サロンメンバーが爆発的に増えました。

くれぐれも、僕の目的は「エンタメで世界を獲ること」ですから、今はこのやり方がいいのかなと思っております。

「正論のぶつかり合い」というものの行き着く先は、戦争なので、そんなものはもう正義でもなんでもない。これが、まもなく40歳になる自分への結論です。

ちょっと大人になったのかもしれません。まあ、性欲は全然を衰えていないですが。

「キンコン西野が数年前にきっぱりと辞めたこと」というのは、つまり、「正論で押し切ることは、もうやめましたよ」ということでした。

というわけで、
「キンコン西野が数年前にキッパリと辞めたこと」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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