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補助金に頼ったプロジェクトの弱点【キンコン西野】

このnoteは2024年8月5日のvoicyの音源、『CHIMNEY TOWN 公式BLOG』の内容をもとに作成したものです。


 
 

「この公演は補助金で回しているな」と思わされるショーは、公演の覇気がない

 
芸術・芸能の世界には、文化支援という名目で様々な補助金(助成金)があったりするのですが、今日はこの「補助金」について、お話ししていきたいと思います。
 
まず大前提として、今日の話は「補助金」や「助成金」を受けとることを否定するものではない…というところを握らせてください。
 
「使える制度は使った方がイイ」というのが僕の考えで、「ただ、制度を使う時のリスクについても考えましょうや」というのが今日の話です。
 
くれぐれも。
 
僕のVoicyを聴いてくださっている方は御存知だと思いますが、もしかすると僕は忙しぶっているだけで、実はそこそこ暇なのかもしれなくて、そのおかげで国内外、ジャンルを問わず様々なショーを観て回っています。
 
ある日は中国の奥地に飛び、またある日はメキシコに飛び、とにかく「面白そうなショー」があれば、二十数年かけて築きあげてきたコネと権力を駆使し、なんとしてでも観に行くようにしています。
 
そんな感じで、国内外のショーや演劇やミュージカルや伝統芸能を観てまわっていると、「あぁ、これは補助金でまわっているプロジェクトなんだろうな」というのが手にとるように分かります。
 
どこで判断しているかというと、二つあって…、まずは「チケット代と美術セットが釣り合っていない」というところ。
 
「チケット代のワリには美術セットが豪華」というお客さんにとっては嬉しい事態です。
 
これはバレエの公演でよく見られます。
 
僕らみたいに自前でウン億円を作るカンパニーなんて基本どこにもいないので、「チケット代と美術セットが釣り合っていない公演」は補助金で回している(補助金に頼っている)ケースがほとんどです。
 
これは、作り手にとっても、お客さんにとっても嬉しい(メリットしかない)シチュエーションなので、結構イイんじゃないかなぁと思っています。
 
問題は二つ目です。
 
「あぁ、この公演は補助金で回しているな」と思わされるショーは、端的に言うと、公演の覇気がありません。
 
とくに劇場ロビーのスタッフの動きが顕著で、たとえグッズを売れなくても、たとえ中途半端な接客をしても、補助金のおかげで公演自体が続くから、まるで危機感が無い。
 
月並みですが、スタッフの危機感とスタッフのパフォーマンスというのはセットで、危機感を削ってしまうと、パフォーマンスはすべからく落ちてしまう。
 
ただ、今日の話は、このような根性論に終始するつもりはありません。
 
そんなことよりも遥かに大切な、「補助金もろた!これで公演が打てるー!やったー!」とお祭り騒ぎをしているお花畑カンパニーが「落としてしまっている大切な会話」について、最後にお話しします。
 
 

「学び」と「危機感」は、「補助金を受け取ること」とトレードオフ

 
当たり前ですが、最後にモノを言うのはチーム力で、スタッフ一人一人の高いパフォーマンスです。
 
ここを伸ばさないかぎり、遅かれ早かれ、そのカンパニーは終わります。
 
「補助金が打ち切られたので、今年は公演ができません」という判断をしたプロジェクトを皆さんも一度や二度は見てきたと思います。
 
とにかくスタッフ一人一人のパフォーマンスを上げなきゃいけないのですが、その時、リーダー(経営者)はスタッフ一人一人に、説明をしなきゃいけない。
 
その内容は、「そのスタッフの仕事には、リーダーのどんな狙いが含まれていて、そのスタッフの仕事がチームにとってどれだけ大きな意味を持っていて、そのスタッフが任せられたその砦を守りきれなかった時に、チームはどういう形で崩壊していくのか?」といった、この説明が絶対に必要なんですね。
 
この説明無しにスタッフを持ち場に立たせてしまうと、スタッフは「ただただ労働時間が過ぎるのを待つだけのスタッフ」になってしまいます。
 
このスタッフの空気って確実に伝染して、もう会場に入った瞬間にドンヨリしてるんです。
 
お客さんはその空気を浴びて客席に流れるわけですから、客席の覇気もなく、それが出演者に伝染する…という、よろしくない流れになっちゃう。
 
「もらったお金でやるイベント」と「自分達で作ったお金でやるイベント」の現場の空気の差は明らかで、やっぱり後者が強い。
 
だからといって「補助金を受け取ることは良くない」とは思いません。
 
補助金を受け取る時に分かっておかなくちゃいけないのは、まずは「受け取った補助金分の予算を作る勉強(仮説検証実験)の機会を逃した」ということ。
 
そして、もう一つ。
 
「『(主に)物販ロビーの危機感を失った』という大きな大きなリスクを背負ってしまった」ということ。
 
この「学び」と「危機感」は、「補助金を受け取ること」とトレードオフなので、補助金の申請を出して通ったからといって小躍りするのは時期尚早かもしれません。
 
「『戦えないチーム』問題に蓋をして、今回の公演も補助金で乗り切る」という判断をしてしまっているリーダーの皆様は是非、参考にしてみてください。
 
 

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